スーパーGTは4月8日、岡山国際サーキットで第1戦の決勝レースが行われ、スーパーGT500クラスはパレードラップからホンダNSX-GTがトラブルで次々と脱落。予選で下位に低迷したニッサンGT-Rも勝負権がないまま、KeePer TOM'S LC500が優勝を飾り、レクサスLC500が1~6位を独占する圧勝の結果となった。
日曜午前のフリー走行がなくなり、これまで8分間だったウォームアップ走行が20分間に拡大された2017年のスーパーGT。午後のウォームアップ走行からすぐにスタート進行が行われるため、スタート前のグリッド上では各チーム、セットアップの微調整などの作業が見られた。
特にZENT CERUMO LC500は大がかりな作業を行っており、若干のトラブルが見られた模様。ドライバーシート後方を中心に作業していたことから、燃圧系に何かアクシデントがあったと推測される。また、NSX勢は全車リヤハッチを開けて作業する姿が見られ、各チーム、土曜日から日曜日にかけて進行が変わった今年のスーパーGTへの対応が求められた。
開幕戦の岡山恒例となっている岡山県警の白バイ(2台)による先導の元、4分遅れの14時34分からパレードランが開始。すると、このパレードランでKEIHIN NSX-GTが動き出せない。GT300クラスの隊列が過ぎ去ったあとになんとか動き出した。
フォーメーションラップは通常1周ながらKEIHIN NSXが隊列に戻るのを待つために、1周追加。しかし、隊列に戻る途中のKEIHIN NSXはピットロード入り口周辺で再度ストップしてしまう。
その直後、ポールポジションのARTA MSX-GTもスローダウンしてストップ。NSXが続けざまに2台、アクシデントに見舞われてしまう。そこでレースがスタートする前から赤旗が掲示された。
赤旗中断となり、両クラスのマシンはホームストレート上で隊列を形成するが、このタイミングでEpson Modulo NSX-GTもスローダウンしてストップ。これにはサーキットを訪れたファンのみならず、プレスルームでも驚きの声が上がった。
ホンダ陣営としては前日の予選Q2でMOTUL MUGEN NSX-GTがコース上に止まっているが、その時はエンジンのセンサーのトラブルだった。決勝での3台の症状も似ていることから、同じようなトラブルだった可能性がある。いずれにしても、スタートのグリーンシグナルを受ける前にNSX3台が消え、赤旗の混乱とともに第1戦が始まることになった。
NSX3台の離脱による赤旗でGT500とGT300がそれぞれ一列となってストレート上に並んだ後、1周減算の81周レースとなって、パレードラン開始から約15分後に、ようやくマシンが動き出す。
セーフティカー先導による2周の走行後、セーフティカーのランプが消え、3周目にレーススタート。その実質レース1周目のバックストレートエンドでは2番手KeePer TOM'S LC500のニック・キャシディがタイヤスモークを上げながらトップのWAKO'S 4CR LC500のインに飛び込み、トップを奪取。
5周目にはGT300の埼玉トヨペットGreenBraveマークX MCがダブルヘアピン2個目の出口でスピンを喫してコンクリートウォールにクラッシュ。車両回収のために、ここで2度目のセーフティカーが導入される。するとそこで、山本尚貴がステアリングを握るRAYBRIG NSX-GTがスロー走行する映像が飛び込む。
RAYBRIG NSXはコース上にクルマを止め、サインガードでは伊沢拓也が頭を抱えて天を仰ぐ。RAYBRIG NSXほその後、動き出してコースに戻るも、ペースを上げられずにふたたびスロー走行してコース上にストップ。これで、4台のNSXが戦線から姿を消すことになった。
レースは12周目から再開。トップはKeePer TOM'S LC500で、5番手まで順位を挙げていたMOTUL MUGEN NSX-GTが7番手に順位を下げ、早くも上位6台をレクサスLC500が独占。予選での屈辱を果たすべくテストの好調ぶりを発揮し、レクサス陣営内の戦いの模様を呈していく。
■レース中盤、レクサスLC500同士の争い過熱
その後、バックストレートエンドでau TOM'S LC500のジェームス・ロシターが関口雄飛のWedsSport ADVAN LC500のインを奪い、4番手にアップ。そこから順位変動はなく、19周目あたりからGT500のトップ集団は周回遅れとなるGT300の隊列の後ろに。
そこで2番手のWAKO'S 4CR LC500の大嶋和也と3番手ZENT CERUMO LC500の立川祐路が接近し、テール・トゥ・ノーズの状態へ突入。22周目のバックストレートでアウトからWAKO'S大嶋に並んだZENT立川は2台併走する形でヘアピンコーナーを回り、その後のリボルバーの進入でZENTがWAKO'Sの前に出て2番手を奪った。
25周目には中団で9番手を走行してたカルソニック IMPUL GT-Rのヤン・マーデンボローが同じGT-R勢のフォーラムエンジニアリング ADVAN GT-Rのジョアオ・パオロ・デ・オリベイラとバトル。マーデンボローはGT500のデビュー戦で見事なオーバーテイクを見せて8番手にアップを果たす。
27周目には8周近く接近戦を演じていたDENSO KOBELCO SARD LC500のヘイキ・コバライネンとWedsSport ADVAN LC500関口雄飛の5番手争いが過熱。バックストレートでサイド・バイ・サイドになると、ヘアピンのブレーキングで2台は接触。アウト側にいたWedsSport LC500が挙動を乱し、そのままオーバーラン。
サンドトラップを経てコースに復帰したが、5番手を奪われてしまう。
30周を過ぎて、トップ6はレクサスが占め、KeePer、ZENT、WAKO'S、au、DENSO、WedsSportの順に。このタイミングでフォーラムエンジニアリング ADVAN GT-RがGT500の先陣を切ってピットへ向かう。
32周目にはヤン・マーデンボローがMOTUL MUGEN NSX-GTを捉え、GT300のバックマーカーを利用してMOTUL MUGEN NSX-GTの武藤英紀をバックストレートでオーバーテイク。直後には、MOTUL MUGEN NSX-GTもピットインしており、ヨコハマユーザーはこのあたりが交換タイミングとなったようだ。
34周目、7番手を走行していたS Road CRAFTSPORTS GT-Rの千代勝正がコースオフしてバックストレートでストップ。アトウッドの立ち上がりで姿勢を乱し、そのままイン側のウォールにヒットしてしまい、レースを終えることとなった。
37周の周回を終えたところでトップのKeePerがピットイン。画面表示で44.1秒のストップでタイヤ交換、給油を終えてコースへ。すると翌38周目にはその時点でトップのZENTと3番手のWAKO'Sが同時ピットイン。
レクサス同士のピット作業バトルとなり、画面表示でZENTの44.8秒に対し、WAKO'Sが41.0秒で作業を終えてアンドレア・カルダレッリに乗り変わったWAKO'SがZENTからポジションを奪ってみせる。
そこからは先にピットを終えていたKeePerとアウトラップのレクサス勢との順位争いが5台で行われ、auとWAKO'Sが2番手バトル、DENSOとZENTが4番手を争うバトルが同時展開した。
42周目にはバックストレートでWAKO'Sがauのインを奪うと、ヘアピン進入のブレーキングでauの中嶋一貴がタイヤをロックさせてしまい、スモークを上げてオーバーラン。すぐにコースに戻るも、3台のLC500に抜かれることになり、2番手から5番手に後退してしまう。
アウトラップ絡みの戦いを終えて、43周目からはトップの順位も落ち着き、KeePer、WAKO'S、DENSO、ZENT、au、WedsSportのレクサス6台がトップ6を形成する。
■GT300フェラーリ大クラッシュで3度目のセーフティカー導入
レース終盤に差し掛かった53周目、2コーナーでFerrari 488 GT3とスタート前のトラブルを修復し、レースに復帰していたEPSON NSX-GTが接触。コントロールを失ったフェラーリGT3はフロントから2コーナーアウトのコンクリートウォールにクラッシュ。フロントを大破してストップしたため、レース3度目のセーフティカー導入となる。
62周目からレースが再開し、ここぞとばかりにローリングスタートでトップ6台のレクサスがそれぞれ順位を争うが、ここでは順位変動はならず。63周目のバックエンド、ヘアピンの進入でKeePerの平川亮がタイヤをロックさせてスモークを上げ、そこにWAKO'Sのカルダレッリが並び掛かるが、平川はブロック。トップを死守する。
トップのKeePer平川は終盤、危なげなく2番手との間隔をキープして、過去2年連続PPを獲得した得意の岡山で今季のGT500最初のトップチェッカー。レクサス陣営は参戦する6台が目標だった開幕戦で1~6位を独占。新時代のGT500で、ライバルを圧倒していることを証明した。
レクサスLC500の速さと強さが際だった一方、心配なのがホンダとニッサンの2メーカー。ニッサンは最上位にMOTUL AUTECH GT-Rが7位に入ったものの、上位争いにはまったく絡めずモニターにもほとんど映らない結果に。ホンダはスタート直後のコース上で4台が次々とストップし、レースの進行を妨げるようなトラブルを起こしてしまった。
スーパーGTは国内最高峰だけでなく、DTMドイツツーリングカー選手権とのコラボレーションを含め、これから世界のGTレースを牽引するカテゴリーへと飛躍を期待されているカテゴリー。開幕戦ではレクサス陣営内の素晴らしいバトルが行われたものの、日本を代表するGT500、3メーカーの戦いがトラブルやアクシデントで決まってしまうのは悲しい。
GT500はやはり、3メーカーのクルマがコース上で争ってこそ。新規定で新時代を迎えたGT500はクルマ、レース内容、そしてドライバーともに、世界にそのクオリティの高さを証明するカテゴリーであってほしいと願うばかりだ。