2017年04月09日 10:13 弁護士ドットコム
文部科学省の省令交付によって、4月1日から、中学校や高校で部活指導にあたる「部活動指導員」が学校教育法に基づく学校職員と位置付けられるようになった。土日の大会引率は原則教員に限ると規定されているため、教員の負担軽減につなげるのが狙いだ。
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教員の「ブラック労働」が最近、指摘されることが多いが、中でも課題なのが、部活顧問だ。スポーツ庁の調査では、教員全員が原則、部活顧問になる中学校が87.5%にのぼるという。東京新聞の報道では、顧問就任の選択制導入を訴える声が紹介されていた。
部活顧問は、教員の労働において、どのような位置づけになっているのか。また、負担軽減のためには何が必要になってくるのか。岩井羊一弁護士に聞いた。
教員は、「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」(特措法)によって、一律の教職調整額(給料月額の4%)が支給されるかわりに、時間外勤務手当を支給されないことになっています。
教員の職務はその勤務の特殊性から、勤務時間の内外を切り分けることが適当ではなく、そのため、勤務時間の内外を問わず包括的に評価した処遇として、このような調整額が支払われることになっていると説明されることがあります。
部活動は、早朝、放課後、土日に行われており、教員の多くは、正規の勤務時間を大幅に超える時間をその指導に費やしています。また、事実上、教員は部活動の顧問を断ることもできない実態にあります。
これは、特措法の本来想定している教員の勤務の特殊性の範囲を超えています。それでも特措法があるので、教員には残業代も支払われないとされているのです。また、無償で長時間労働を強制する実態にあるのに違法とならないと解されているのです。
部活動指導員の導入は、教員の負担軽減になる可能性はありますが、これだけでは部活指導員との連絡調整の仕事が増えて教員の業務が増加する可能性すらあります。
愛知県の設置した「教員の多忙化解消プロジェクトチーム」は平成28年1月に提言を発表しています。その中で、部活動について、長期的には学校教育活動から部活動の切り離しを検討すべきと提言しています。長期的といわずに早期に検討を始めてほしいと思います。教員の無償残業の上に成り立っている部活動は抜本的に見直すべきです。
(2017年12月3日、一部表現を修正しました)
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
岩井 羊一(いわい・よういち)弁護士
過労死弁護団全国連絡会議幹事、日弁連刑事弁護センター副委員長 愛知県弁護士会刑事弁護委員会 副委員長
事務所名:岩井羊一法律事務所
事務所URL:http://www.iwai-law.jp/