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星野源の“声”はなぜ人を魅了する? “柔らかさ”と“普通さ”がもたらす個性

2017年04月09日 10:03  リアルサウンド

リアルサウンド

星野源『恋』

 星野源が、先日公開されたアニメーション映画『夜は短し歩けよ乙女』で“黒髪の乙女”に夢中になる先輩役の声を演じている。


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 星野が演じる先輩は、口は達者だが好きな女の子に真正面からぶつかることができないダメな男という役柄。星野が公開前から語っていたとおり、劇中では「絶叫しっぱなし」。ふだんの語り口調はゆったりとした印象のある星野が、早口の長台詞にも挑戦。SNS上では「最初は滑舌に不安を感じたが、最後にはそれが先輩のキャラに合っていると感心した」という肯定的な感想も出ており、星野源が持つ“声”の新たな魅力が引き出された作品となっている。


 星野は、過去にアニメ『聖☆おにいさん』で、人間界にイエスと共に降り立ったブッダの声を担当している。ふわっとした優しい雰囲気を持つブッタというキャラは、星野の声質ともマッチしていた。そんな星野源の“声”が、彼の魅力として挙げられることは少なくない。歌声を評価されるのは歌手として当然だと思うが、星野の場合はラジオ等で披露している素の声も、多くのファンの心をつかむ一つの要素なのだ。


 まず、星野の声に「癒される」という意見をよく耳にする。爽やかなビジュアルとは裏腹な低いトーンの声や、ぬくもりを感じる柔らかな声質で、飾り気のないトークを展開するのが好意的に受け止められているようだ。近年では、「恋」や「SUN」といったグルーヴを基調とした“躍らせる音楽”が目立つが、初期の楽曲はバラード調のゆったりとした作品も多く、星野が聴き手に寄り添うように歌い上げる「ばらばら」「くせのうた」「くだらないの中に」といった楽曲も根強い人気を誇っている。


 星野の声は、いわゆる声優のようなイケメンボイスというわけではない。しかし、情感溢れるバラード曲を歌っていた声色が、そのままファンの胸に“癒し”として届くのも頷ける。星野のライブ映像作品には、特典としてオーディオコメンタリー(副音声)が収録されることがおなじみとなっており、星野の“声”人気の高さが伺える。そんなファンの間では好評な星野ボイスだが、当の本人は自分の声を「バウムクーヘンを食べたあとの、口の中の水分が消えたようなモサモサした声」と星野らしいユーモアを交えて表現している。


 ラジオやエッセイから伝わる星野は、一種の変態性を感じさせる個性的なキャラクターだ。しかし、それを感じさせない普通っぽさがビジュアルや声に備わっており、その両面性がマルチな活動に活かされている。そして、そういった星野に“ギャップ萌え”を感じているファンは少なくないようだ。歌声はもちろん、その“声”がもたらす星野の魅力にも注目してほしい。(泉夏音)