やはり、レースは何が起こるかわからない。クルマのパフォーマンスでライバル2メーカーをしのいでいたレクサス陣営に不運が重なり、雨を願っていたホンダ陣営はドライでまさかのポールポジション獲得。テストで低迷のニッサン陣営は、予想以上に厳しい状況にあることが開幕戦の予選で明らかになった。
3メーカーの新車両のパフォーマンスがようやく見える開幕戦の予選Q1、いきなりふたつのサプライズが起きた。ディフェンディングチャンピオンのDENSO KOBELCO SARD LC500のQ1敗退と、ニッサンGT-R陣営の全車Q1敗退だ。
DENSO LC500のヘイキ・コバライネンはアタックで他車に引っかかってしまい、翌周、翌々周とアタックを繰り返すもタイム更新はならずに9番手止まり。クルマは「合同テストの時と同じでまったく変えていない」と田中耕太郎エンジニアが話すように、セットアップがまとまっていただけに、もったいない予選となってしまった。
岡山国際サーキットは1周の距離が短く、トラフィックが置きやすいサーキットだが、コバライネンだけでなくカルソニック IMPUL GT-Rの安田裕信も前を走る他車に引っかかる形となり、タイムを伸ばすことができなかった。ただ、「そのトラフィックがなかったとしてもQ1突破は難しい状況だった」と安田が話すように、GT-R陣営は戦前に予想されたよりも、さらに厳しい予選結果になってしまった。
事前テストではGT-Rの不振が伝えられていたが、過去の実績とニスモのパフォーマンスを考えれば、テストから開幕戦の間にGT-Rのパフォーマンスは修正されるはず、と予想されたが、いざふたを開けて見れば4車すべてがQ1落ち。
これまではエンジンのパワー不足やタイヤとのマッチングが課題と言われていたGT-R。だが、開幕戦のノーウエイトの予選ではタイヤメーカーに関わらず4車がすべてQ2に進めず、どのセクターもライバルに遅れをとっている状況で、エンジンを含めたクルマ側に共通して問題があることが明らかになった。ニスモの鈴木豊監督の「原因がわからない。それが一番の問題」との言葉からも、その状況が深刻なことが想像される。
■盤石のレクサス陣営だったが、まさかのアクシデント
Q1に続いてのQ2では、2度の赤旗提示で波乱の展開となった。最初の赤旗はau TOM'S LC500の中嶋一貴が最終コーナーの前のマイクナイトコーナーの出口で膨らんで飛び出してしまい、タイヤバリアに接触してストップしたため。
「雨はポツポツ降っていたんですけど、そんなに強くはなかったですし、アタックラップに入るところだったので全開ではないですけど、9割くらいの速度でコーナーに入っていったら最初からアンダーステアで滑って、そのまま止まらず芝生まで行ってしまいました」と一貴。
レクサス陣営にとって不運だったのが、一貴の直後に同じレクサス勢のZENT CERUMO LC500、KeePer TOM'S LC500、そしてWAKO'S 4CR LC500がアタック中で赤旗の影響をダイレクトに受けてしまったこと。実際、ZENT LC500は1分19秒台のタイムがタイムシートのトップに表示されたが、その最速タイムは赤旗中のタイムとなり無効となってしまった。
ZENT LC500はQ1では石浦宏明がトップタイムで、このQ2でも立川祐路が自身の持つ歴代ポールポジション(PP)記録の更新も見えていた。立川も「がっかりしています。手応えもありましたし、(PP)行ける気がしていましたから。雨が降ったら厳しいですね。レクサス祭りもここで終了です」と肩を落とす。
レクサス陣営としてはWAKO'S LC500が2番手になったことが救いとなったが、WAKO'S LC500の脇阪寿一監督に笑顔はない。
「残念でした。ポールを獲れるポテンシャルはあったし、天候を含めて不確定要素が多いなかでいろいろ新しいトライをしていて、チームレクサスとしてのプランを考えていたところだったので。ポールを獲れなかったのは残念」と寿一監督。
それでも、「その時の状況でベストを尽くすことしかできないですが、それはできた。レースのペースではレクサスは速いと思うので、決勝は自信を持っています」と、翌日への抱負を語った。
ニッサン、そしてレクサスが不振や不運に見舞われる中、幸運が訪れる形となったのがホンダ陣営。PPを獲得したARTA NSX-GTはもちろんだが、結果的に7番手となったMOTUL MUGEN NSX-GTも、見方を変えればラッキーな面があった。
■日曜フリー走行のない今季のスケジュール
MOTUL NSXはQ2のau LC500の赤旗再開後のインラップでトラブルのためコース上に止まってしまい、2度目の赤旗の原因を作ってしまったため3番手からセッションタイム抹消で7番手になってしまった。トラブルの原因はエンジンに付属するセンサーのトラブルだというが、このセンサーを交換するには軽く1時間以上は必要になってしまう。
「もしこのトラブルが明日のウォームアップ走行で起きていたら、決勝出走は間に合わなかった。今日トラブルが出て、ある意味良かった」とはMOTUL NSXの手塚長孝監督。今シーズンのスーパーGTは日曜朝の走行がなくなったため、日曜日の車両の確認がレース直前の20分間の走行のみになる。
もし、その20分でトラブルが見つかれば、決勝までの修復は難しくなる。その意味ではたしかに、修復時間のある土曜のタイミングのトラブルはラッキーと言えるかもしれない。低気温となり、若干雨の降る岡山のコンディションはNSXとヨコハマタイヤの組み合わせがマッチしており、明日の決勝では伏兵のような存在になるかもしれない。
”レクサスぶっちぎり”の戦前の予想がまさかの形で裏切られる結果となり、3メーカーとも、それぞれ悲喜こもごもの内容となったGT500の予選。レースは何が起きるかわからない。その言葉が重くのしかかる2017年最初の予選セッションとなった。