4月7日、金曜日、午後5時45分。ドライバーズミーティングを終えたチーム代表とチームマネージャーたちが、会場となっていた記者会見場となっていたピットビルから続々と出てきた。ドライバーたちは引き続き別の議題についての話し合いのために記者会見場に残ったままだった。
話し合いの結果は、4月7日の「F1 Topic」でも触れたように、「土曜レース案」は却下され、中国GPは土曜日も日曜日も、現時点では予定どおりのスケジュールで行われることになっている。
パドックの中には、F1史上初となる「土曜レース案」を支持する声が少なくなかったが、チーム関係者にとっては今回のような状況での土曜レースはかなりありがた迷惑な話だった。
というのも、走行データがまったくない中で、予選とレースを行わなければならないため、セッティングの確認もできていなければ、パワーユニットのエネルギーマネージメントも煮詰め切れていない。長谷川祐介ホンダF1総責任者も「この状況で土曜レースとなったら、かなり混乱するでしょう」と語っていた。
したがって、「土曜レース案」が却下され、ミーティングを終えて会見場から出てきたチーム関係者の表情は一様に明るかった。そんな中で、ふたり表情が冴えない人がいた。それはメルセデスAMGのスポーティングディレクターのロウ・メドウとウイリアムズのチームマネージャーのスティーブ・ニールセンだ。その理由は、日曜日のレースが再びウエットコンディションになることが必至だからだ。
しかし、ウエットコンディションはこの2チームだけでなく、ほかのチームも同じである。どうしてメルセデスAMGとウイリアムズのチーム関係者は渋い表情なのか。それは、この2チームがウエットコンディションでの走行がほかのチームに比べて少ないからである。
ウイリアムズはバルセロナ・テストの1回目最終日の3月2日に行われた人工的なウエットコンディションでテストを、前日にランス・ストロールが犯したクラッシュによって見送っていた。したがって、中国GPのフリー走行1回目ではフェリペ・マッサもストロールも2番目に多い7周を走行していた。
メルセデスAMGの状況は少し複雑だ。メルセデスAMGはチームとしてはバルセロナでのウエットテストに参加していたが、午前中に走行を予定していたルイス・ハミルトンだけが、電気系のトラブルで走行できなかった。
さらにハミルトンはトップ3チームだけが行っていたピレリの先行開発テストにも参加していないため、そのときのウエットコンディションテストも行っていない。
つまり、ハミルトンが新しいピレリのウエットを履いて走行したのは、この中国GPが初めてで、金曜日のフリー走行1回目の2周がすべてだった。
金曜日のフリー走行2回目が中止になった後、ハミルトンが「「土曜日にフリー走行3回目、予選、レースをやるというアイディアに賛成の人は?」とツイートしたのは、単なる冗談ではなく、日曜日のウエットレースを回避して、晴天が予報されている土曜日にレースをやってしまいたいという本音が隠されていたのかもしれない。
そのことはメルセデスAMGのスポーティングディレクターも認めている。
「日曜日のレースが雨になれば、ウエットでの走行データがほとんどないルイスは不利になるだろう。唯一の救いは、バルセロナのテスト後、ピレリがウエットタイヤのコンパウンドを変えてきていること。バルセロナのときよりも、少し軟らかくなっている」
日曜日の降水確率は98%。メルセデスAMGにとって、中国GPも厳しい戦いが予想される。