映画『Alone in Berlin(英題)』が『ヒトラーへの285枚の葉書』の邦題で、7月8日から東京・ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国で順次公開される。
『ヒトラーへの285枚の葉書』は、ハンス・ファラダによる実話をもとにした小説『ベルリンに一人死す』が原作。フランスがドイツに降伏した1940年6月に、ひとり息子のハンスが戦死したという1通の封書が届いたことをきっかけにして、ベルリンに暮らすクヴァンゲル夫妻がヒトラーへの怒りを記したポストカードを街中に置き始めるというあらすじだ。
監督を務めたのは、ガス室で殺された叔父やファシスト政権と戦って処刑された祖父を持つ、スイス出身の俳優ヴァンサン・ペレーズ。出演者にはエマ・トンプソン、『未来を花束にして』に出演したブレンダン・グリーソン、『グッバイ・レーニン!』で主演を務めたダニエル・ブリュールらがキャスティングされている。
■ヴァンサン・ペレーズ監督のコメント
父親はスペインの出身だ。祖父は共和国軍のためにスペイン内戦でフランコ将軍のファシスト政権と戦い処刑された。母親の家族はドイツ系だが、ナチスから逃れて国外へ脱出した。母は1939年に生まれた。そして他の多くの人たちのように国外へ脱出し、5年間あちこちを転々と歩き回り、戦後にドイツに戻ってきた。ドイツ人の血が流れている人間なら、たくさんの疑問を抱えているはず。僕はそれらの答えを見つける必要があった。僕にはおじが3人いて、ひとりはロシアの戦線で殺された。精神科病院に入っていた大おじは、試験的なガス室で殺された。こうした精神科病院やガス室を僕は訪ねた。ドイツ人は過去の記憶を残しておくのが上手だ。何が起こったのかを誰も忘れるべきではないと考えているんだ。旅の間に、家族の中でナチス党員だった人は誰もいないという事も知った。これは重大な事実だ。当時ナチス党員でなかったという事で、家族はかなり辛い思いをしたはずだ。あらゆる場所に住む人たちにこの話を伝えることが大切だ。そして、誰でも闘うことができる、そして闘うには勇気が必要になると示すことが大切だった。