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「正解するカド」ナレーション・上川隆也インタビュー 見る者を引きつけ離さない骨太な物語が魅力

2017年04月07日 18:54  アニメ!アニメ!

アニメ!アニメ!

「正解するカド」ナレーション・上川隆也インタビュー 見る者を引きつけ離さない骨太な物語が魅力
羽田空港に突然現れ、乗員乗客252人ごと旅客機を飲み込んでしまった謎の存在「カド」。その「カド」から姿を現した謎の存在・ヤハクィザシュニナは人類にコンタクトをとろうと試みる。偶然にも旅客機に乗っていた外務省の交渉官(ネゴシエーター)である真道幸路朗は、ヤハクィザシュニナと人類の仲介役を務めることになるが──。

スタジオジブリ出身で『翠星のガルガンティア』でも知られる村田和也が総監督を、『know』『独創短編シリーズ』『2』など数々の小説を生み出してきた野﨑まどが脚本を担当。『コードギアス 亡国のアキト』で演出を務めた渡辺正樹がシリーズディレクターを担う、東映アニメーション渾身のアニメーションだ。

冒頭ナレーションを担当するのは、『天元突破グレンラガン』アンチ=スパイラル役、『かぐや姫の物語』石作皇子役など、俳優として活躍するだけでなく、アニメでも個性的な役の声に挑戦してきた俳優・上川隆也。
上川から見た『正解するカド』とは一体どんなアニメーションなのだろうか。
[取材・構成:川俣綾加]

『正解するカド』
http://seikaisuru-kado.com/
2017年4月7日より放送

──謎の存在「カド」など未知な部分も多くどういったストーリーが展開されるのか、気になっている人も多いかと思います。まずシナリオを読んだご感想はいかがでしたか?

上川隆也(以下、上川)
とても骨太な物語ですね。SFでもあり、ミステリーでもあり、謎をちりばめて見ている人を引きつけて離さない構成になっていると思います。フィクションだからといってその世界における社会性を失っていない。そうした骨太さが根底にしっかりとあって、その上に紡がれた物語、というのが僕の感想です。


──社会性の上に物語を構築している、というのはどういった部分に感じましたか?

上川
何か大きな出来事が起きた時、グローバルに視点を据えて展開されているんですよ。日本以外の世界は壊滅していて日本人だけで何とかしていくとか、ふと気づくとそういう展開になっていることを自然に受け入れている時ってありますよね。もちろんそこに色々な理屈はあると思うんですけど。簡単にいえば、そういうことじゃない、きちんとワールドワイドな世界があって、お話が進んでいく。謎の存在である「カド」がなぜ日本にやってきたのか、という理由もしっかり描かれていてそのあたりもグッときました。

──「そこにきちんと世界がある、人々が生きている」と感じられるような構成になっているんですね。

上川
『翠星のガルガンティア』の時もそうでしたが、村田(和也)監督って意志を持ち生きる者同士の関係や思いを描くのがとても巧みで。『ガルガンティア』は異星間のボーイミーツガールでした。今作では異種間コンタクトがどう描かれているかも楽しめると思います。プレスコで収録したのでまだ完成映像は拝見していませんが、僕自身も本編がどうなっているのか、とても楽しみにしています。

──上川さんは各話冒頭のナレーションを担当されていますが、どのように取り組んでいきましたか?

上川
収録直前に音響監督から説明もいただきまして、1曲だけ劇伴も流していただき、なんとも壮大なフルシンフォニックで聴き入ってしまいました。まずはそれがひとつの手がかり。
もうひとつは、『宇宙戦艦ヤマト』や『銀河鉄道999』でのナレーションのテイストを盛り込みたい、と説明いただいて。そのこともあってか、僕の頭の中には城達也さん(※劇場版『銀河鉄道999』のナレーションを担当)の声しか流れていませんでした。そのうえで、この作品にマッチしたナレーションになるよう考えつつマイクに向かいました。

──シナリオを読んで、気になったキャラクターは?

上川
実はそれが言えなくて……。ネタバレになっちゃうんです。心苦しい(笑)。


(次ページ:上川さんが子どもの頃に見た作品は…)

──放送が始まってからのお楽しみですね(笑)。『正解するカド』は東映アニメーション初のセルルック3DCGでのTVシリーズでもあります。

上川
これまで『シドニアの騎士』や『亜人』など3DCGで描かれたTVアニメを見てきましたが、セル画時代のアニメをリアルタイムで見ていた者からすると、3DCGでここまで緻密な表現ができるのかと、驚きを隠せないです。3DCGアニメは技術の高みがどこにあるのかが青天井で、色々な進化を感じながら見続けていきたいジャンルのひとつです。

──東映アニメーションは創立60周年を迎えました。上川さんが子供の頃に見た作品や、思い出に残っている作品があれば教えてください。

上川
僕が劇場ではじめて見たアニメ映画は『空飛ぶゆうれい船』で、ドクロ船長の笑い声がとてつもなく恐ろしかった記憶があります。確か幼稚園に入った頃、もしくはその直前くらいの年齢でした。大人になってから見返してもなかなかハードなSFなんです。それを1969年に作っていたことに驚きで。ほかにも『どうぶつ宝島』などたくさん見てきました。


──「怖い」と感じたけれど、その後もたくさん見続けて、今もアニメを好きでいるのが興味深いです。

上川
怖かったけれど、まだ小さかったのでストーリー全体を把握するとかはできなくて、ある断片が怖かったんです。それが拒絶すべきトラウマだったらアニメを見なくなっていたと思うんですけど(笑)、きっとどこか楽しんでいたのだと思います。アニメは楽しいと芽吹かせてくれたのがきっと『空飛ぶゆうれい船』なんでしょう。

──大人になってから、今はアニメをどのような視点で見ていますか? テーマ性などを重視されている感じでしょうか。

上川
そうでもないです。ご質問をいただいて初めて考えていることが殆どです、それは自分の中で再確認しているだけ。本来僕の中では、アニメーションの面白さってやっぱり絵が動くこと。人が絵を動かしていることへの驚きが大きい。初見の作品は物語がどうなっていくかは最初に見ただけではわからないですが、オープニングのアニメーションが見事に動いていたら嬉しくなる。そういうきっかけで「あ、これ面白そう」と見続けることも多いです。

──ちなみにですが、アニメって毎クールたくさん作られているので、どれを見るかどんな風にチェックしているのかも、ぜひ知りたいです。

上川
定期購読しているアニメ誌があるので、クールの終わりには次のクールのラインナップ紹介をチェックして、放送が始まったら第1話を見て……という感じで、きっとアニメファンのみなさんとやっていることは同じです。

──ありがとうございます。では、最後にあらためて本作の注目ポイントをお願いします。

上川
緻密にして、壮大なストーリーが展開されていきます。その中で、二転三転していくストーリーに引き込まれていくことは間違いありません。 村田総監督をはじめ本作が用意する、優しいながらも驚きのある展開や演出にご期待のうえ、ぜひ御覧ください。