マシンの空力に関するレギュレーションが大きく変更された2017年は、ピレリが独占供給するタイヤに関するレギュレーションも変更された。
ピレリは「フロント、リヤともに幅が広くなり、コンストラクション、コンパウンドとも変更された。新コンパウンドには新しいマテリアルを使用、デザイン哲学を一新した」と説明している。
では、そのタイヤを使用しているチーム側は、新しいタイヤに関してどのような印象を持っているのだろうか。
フォース・インディアでタイヤ&ビークルサイエンス部門シニアエンジニアを務めている松崎淳は、ビレリの2017年タイヤについて、次のように語っている。
「コンパウンドに関して、われわれはピレリから一番軟らかいウルトラソフトは同じ系統の配合だと聞いています」
「ただし、タイヤのサイズが異なれば、ゴムを加硫する条件も違ってくるので、最終的な特性が違うはずです。そのあたりをいかに見極めるかが重要だと思います」
加硫とは、ゴムの原材料を加工する際に、弾性限界を大きくするために、硫黄などを加える行程のことである(硫黄を加えない工程もある)。ゴムが伸び縮みするのは、ゴムの内部の分子同士が結びついているからだが、その分子同士を結びつける工程を加硫と呼ぶ。
ただし、ピレリがどのような工程で加硫しているのかはチームに情報を出していないためわからない。
「加硫の工程は、時間、圧力、温度など、与える条件を変えると、ゴムの配合が同じでも生成されるタイヤの特性が異なります。したがって、ウルトラソフトのコンパウンドは基本的に昨年と同じでも、特性はまったく同じではないので、そのへんをテストからチェックしているところです」
ちなみにビレリによれば、「ウルトラソフト以外のコンパウンドは、ウルトラソフトのゴムの配合をベースにして作られている」という。したがって、ウルトラソフトのタイヤの特性をきちんと理解することが、それ以外のコンパウンドの見極めるうえで重要だと松崎エンジニアは語る。
タイヤの変更はコンパウンドだけではない。タイヤの変更は、セットアップにも大きな影響を与えている。
「タイヤのサイズが変わると、重さも変わるし、スリップ角に対してどのような力を発揮するかも変わって、特性がいろいろと違ってくる」
「ピレリから届いている情報を自分なりに解釈して、自分が持っている経験からくる推定値によって、ジオメトリーもいろいろと変えています」
開幕戦では、スタート直後の第1スティントでのウルトラソフトの使い方で、優勝争いの明暗が分かれた。2戦目の中国GPにはウルトラソフトは持ち込まれていないが、それ以外のコンパウンドの理解度はウルトラソフトの理解度がペースとなるだけに、その点にも注目したい。