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東京パフォーマンスドールの“集大成”と“可能性” 中野サンプラザ公演が見せたもの

2017年04月07日 16:33  リアルサウンド

リアルサウンド

『ダンスサミット“DREAM CRUSADERS”~最高の奇跡を、最強のファミリーとともに!~』の様子。

 東京パフォーマンスドールが3月26日、昨年9月から行なってきたライブシリーズ『DREAM CRUSADERS』の最終公演、『ダンスサミット“DREAM CRUSADERS”~最高の奇跡を、最強のファミリーとともに!~』を東京・中野サンプラザで開催した。昨年9月にこの公演スケジュールが発表されて以降、中野サンプラザという目標は、ダンスサミット新章のファイナル公演以上の意味を持ってきた。『DREAM CRUSADERS』シリーズには、『PLAY×LIVE「1×0」(プレイライブ「ワンバイゼロ」)』や『ネイキッド』といった、過去のダンスサミットの蓄積を経たからこその洗練と引き出しの多さ、そしてグループのここまでのキャリアが宿っている。そして同シリーズ開催時期には、東名阪ツアーや1stアルバム『WE ARE TPD』リリースなど、グループの歴史に大きな厚みを加えるトピックも生まれてきた。だからこそ、現時点までの東京パフォーマンスドールの、ひとつの集大成として中野サンプラザ公演はあった。


 『DREAM CRUSADERS』シリーズのライブで冒頭を飾ってきた「Stay Gold」「La La Flags!」でスタートを切ったのちに、たて続けに披露されたのは「BRAND NEW STORY」や「DREAM TRIGGER」といったシングル表題曲だ。これまでさまざまな場所でパフォーマンスし続けてきたからこそ、これらの曲にはもはや盤石の安定感がある。代表曲と呼べる作品が磨かれていくことは、このようなワンマンライブだけでなく、この先の対外的なイベントでも武器になる。メンバーそれぞれがたくましさを備えてきたことも相まって、パフォーマンスグループとしてまた一段と強くなったことがうかがえる。


 また、この日のライブで目新しいアクセントとなったのが、メンバーたちによるパーカッションのパフォーマンス(「predawn」)や、ウィンドウ型のLEDを用いてのダンス(「WINDOW」)といったチャレンジだった。もちろん、メンバーにとってこの挑戦は、決してハードルの低いものではなかっただろう。けれど、そうした試みをことさらに企画として強調するのではなく、あくまでダンスサミットの一パートとして自然に流れに組み込んでゆくのが東京パフォーマンスドールの特徴であり、その姿勢にこのグループの矜持が感じられる。


 「predawn」や「WINDOW」を、あくまで他の楽曲と同じくセットリストに溶け込ませていくスタイルにうかがえるように、東京パフォーマンスドールのダンスサミットは、セットリストを切れ目のない一本の流れ、もしくはストーリーとして形作ることに重きが置かれている。それは、単にMCを排したノンストップライブというだけのことではない。躍動し続けるメンバーたちを軸にして、本来ならばパフォーマンスの性質が相当に違うはずの多くの要素を、統一感をもって繋いでいく。


 セットリストの中には、彼女たちのシングル表題曲として世に問うた楽曲や、先代グループの持ち曲のリアレンジバージョン、活動初期の舞台『PLAY×LIVE「1×0」』公演での代表曲など、それぞれに独立した意味を持った曲たちが並ぶ。あるいはライブ中盤、バーのセットを用いた「Linger」で見せた、演劇的な要素を織り込んだ演出も、特に『1×0』の期間を通じて育んできた彼女たちの引き出しである。それらをコーナーとして切り分けてしまうのでなく、連続性を持った流れとして構成することで、特有のエンターテインメントを作っていく。メンバーたちがひとつの成熟を迎えつつあるからこそ、その面白みがあらためて感じられた。


 そのメンバーたちの成長を見守り、ここまでの道程を支えてきた象徴的な楽曲が、アンコールで披露された「DREAMIN’」だ。神宮沙紀のピアノとメンバーのコーラスでスタートし、そののちいつものようにオーディエンスと空気を共有するパフォーマンスへと展開していったこの日の同曲に、これまで以上の意味がこもっていたことは間違いない。「DREAMIN’」は披露のたびに、東京パフォーマンスドールと聴き手との歴史を、立ち会った人々がそれぞれの形で思い返すことのできる楽曲である。思い返すべき歴史は、グループのキャリアにつれて厚みを増していく。メディアアートとしての表現でインパクトを見せた『1×0』、対照的にフィジカルの強さで勝負をかけた『ネイキッド』といった、過去のダンスサミットの経験を昇華し、統一的な流れに落とし込んでみせた『DREAM CRUSADERS』を締めくくったことで、その歴史はひとつの区切りを迎え、新たなレベルに向かうスタートに立った。


 その蓄積の最前線には、パフォーマーとして格段に力強さをアップさせた9人がいる。この日、幾分狭く感じた中野サンプラザは、すでに目標ではなく通過点になった。より大きな目標を目指す準備は、すでに整っている。(香月孝史)