今季ザウバーに移籍したメルセデスドライバーのパスカル・ウェーレインが、F1開幕戦に続いて第2戦中国GPも欠場することになった。公式の理由は、「トレーニング不足のため、レースで本来の実力を発揮できる体力に欠ける」というものだ。しかし、それを額面通りに信用する関係者はあまりいない。
ウェーレインは今年始めにマイアミで行われた「レース・オブ・チャンピオンズ」に出場し、レース中に派手に横転。その際に背中を痛め、冬のバルセロナテスト第1週の参加を取り止めた。
それでも翌週のテストはしっかり走り、開幕戦も初日フリー走行には出場した。それが二日目になって、突然の欠場発表である。そのためメルボルンでは、「背中痛が完治していないからではないか」という憶測が飛び、ウェーレインに対してもその質問が出たが、本人は完全否定だった。
「しかし」と、某F1チームのスポーティング・ディレクターは言う。「あくまで一般論として聴いてほしいが、レーシングドライバーが『体力がない』という理由でレース出場をあきらめるとは考えにくい。しかもテストでは、レース距離以上の周回をこなしていた。その上、開幕戦のアルバートパークは、カタルーニャサーキットほど体力的にきつくない。背中痛がぶり返したと見るのが、妥当なんじゃないかな」
一方ではアントニオ・ジョビナッツィを推すフェラーリが、パワーユニット代金をさらにディスカウントすることで、メルセデスからシートを奪ったという説もある。
なかなかうがった見方だが、ザウバーの内部事情に詳しい関係者の話では、「契約上、それはむずかしい」とのことだ。その人物は、「パスカルの性格からしても、自分から『体力がないから』と欠場を申し入れるのはありえない」と言っていた。
ウェーレインのように事故に遭わなくても、ドライバーにとって背中痛、腰痛は職業病であり、特に近年のフォーミュラカーのドライビングスタイルはその症状を悪化させやすい。
決して口には出さないが、しつこい痛みに悩むドライバーは少なくない。ウェーレインはバーレーンも欠場が濃厚で、代役のジョビナッツィが開幕戦に続いて好走するようだと、その立場はいっそう微妙なものになりそうだ。