WRC世界ラリー選手権のなかでも、屈指の高速イベントとして知られる第9戦フィンランドは、2017年型WRカーで上昇した平均スピードに対処するべく、策を講じると明かした。
2017年のWRCでは、最上位クラスでエンジン出力が引き上げられたほか、空力パーツの追加などにより、昨年より平均時速が上昇。“史上最速”のWRカーとも呼ばれている。
その影響で、2月に行われた第2戦スウェーデンのSS9では、2017年型WRカーが平均時速85.65マイル(約137キロ)を記録。安全上の理由から、その後の一部ステージがキャンセルされる事態も起きていた。
グラベル(未舗装路)イベントながら、路面がフラットで、WRCのなかでも高速イベントとして知られるラリー・フィンランドでは、昨年6つのステージで平均時速80マイル(約128キロ)を記録しており、今年は、もっとも有名な高速ステージ“オウニンポウヤ”で平均時速87マイル(約140キロ)を超えるのではという声も挙がっている。
加えて、今年のオウニンポウヤはテレビでの生中継を優先して距離を短縮。テクニカルなセクターが排除されたため、これも平均速度を押し上げる要因とされている。
地元フィンランド出身のヤリ-マティ・ラトバラ(トヨタ・ヤリスWRC)は「オウニンポウヤのテクニカルセクションは、平均速度を低下させる要素だった」と述べている。
「FIAはラリー・スウェーデンでの1件で慌てている。ラリー・フィンランドのデイ2はオウニンポウヤなど、超高速ステージばかりだからね」
「そういったステージでは平均速度が140キロを超えると考えている」
ラトバラはステージキャンセルを避けるためにも、大胆な対策を講じる必要があると続けた。
「おそらく、主催者側は人工的にシケインを作り出して、平均速度を引き下げようとするだろう。しかし、そういったやり方はラリー・フィンランドにふさわしくない」
「(人工的にシケインを作り出すのは)アスファルト舗装で争うターマックイベントでは一般的な手法だけど、グラベルイベントでは違和感がある」
「はっきり言えば、ドライバーとしては不満しか感じないやり方だ」
■主催者側も対策の必要性を認識。「自然なやり方を望んでいる」
ラリーフィンランドの競技長を務めるカイ・タルキアイネンは平均速度を押し下げるために確実な対策を行う必要性を認めている。
「FIA(セーフティ・デレゲートを務める)のミシェル(・ムートン)とラリー・ディレクターのヤルモ(・マホネン)とは議論を交わしている」とタルキアイネン。
「彼らはシケインと同様のものを、より自然なやり方で取り込むことを望んでいる。例えば道幅の狭い区間を設けたり、わざと交差点を大回りさせたりといったやり方だ」
「我々としても、コンクリートブロックやわら山を使って、シケインを作り出すことだけは避けたいと思っている」
「交差点を使う方法は、レッキがより簡単になる。競技時間外では、SSは一般道となり、そこに人工シケインがあるとややこしいことになるからだ」
なお、ラリー・フィンランドでは昨年、大型トラクターを障害物に使った“トラクター・シケイン”が登場。ドライバーからは安全性を無視した「無責任な行動」との声が上がり、物議を醸した。