長い伝統を誇るBTCCイギリス・ツーリングカー選手権史上最多となる、32台のエントリーを集める2017年シーズンが3月31日~4月2日にブランズハッチで開幕。その栄えあるオープニングレースを制したのは、今季から新型モデルを投入したスピードワークス・モータースポーツのトヨタ・アベンシス、トム・イングラムとなった。
16人の優勝経験者が集う激戦のシーズンを予感させるように、荒れた天候で迎えた予選は多くの強豪を退けて、ホンダのサテライトチームであるユーロテック・レーシング、ジェフ・スミスのシビック・タイプRがポールポジションを獲得。この時点でパドックには「レースは相当に僅差の混戦になる」との観測が広まった。
全3ラウンドで争われる決勝、迎えた日曜レース1はスタートから波乱の展開に。今季から名門ウエスト・サリー・レーシング(WSR)のワークスBMWをドライブするコリン・ターキントンがチーム・ダイナミクスの2台のシビックの間をすり抜けようとして接触。マット・ニールを道連れにコースオフを喫し、いきなりセーフティカーが出動する事態となる。
この間、ポールシッターのジェフ・スミスをかわしていた予選2番手のイングラムは、5周目のレース再開から後続のユーロテック・ホンダを引き離しにかかり、余裕の展開へ。
その後、スミスもポジションを守るべく奮闘したがペース及ばず。もう1台のワークス・ホンダをドライブする2年連続王者のゴードン・シェドンと、アダム・モーガンがステアリングを握るシシリー・レーシングのメルセデス・ベンツAクラスが先行。直後にスミスのシビックをメカニカルトラブルが襲い、残念ながらピットでレースを終えることとなった。
中盤にはシェドンとモーガンの2台がイングラムを追うが、首位のマージンは盤石。最終周までにはモーガンの猛追をしのぐ方針に切り替えたシェドンが、開幕2位表彰台を死守し、アベンシス、シビック、Aクラスの順で17年最初のチェッカーをくぐった。
その10秒後方、4位に入ったのはポールシッターの無念を晴らしたユーロテックのチームメイト、ジャック・ゴフ。5位に旧型アベンシスのロブ・オースティンが続き、6位、7位にはWSRのアンドリュー・ジョーダン、ロブ・コラードのBMW125i Mスポーツ2台が入った。
■レース2は序盤から波乱。スバル・レヴォーグが大破
続くレース2のスタートも、BTCCの醍醐味とも言うべきツーリングカーらしい激しいバトルをみせる。シリーズの“悪童”ことチームBMRのジェイソン・プラトが、マット・シンプソンのシビックと接触しピットウォールに激突。このアクシデントでスバル・レヴォーグは大破し、赤旗が提示。オープニングラップ早々にレース中断となった。
この判断で、ジャンプスタートを切っていたBMWのジョーダンや、マシン修復でペナルティ消化の必要があったイングラム、2コーナーヘアピンでスピンを喫しポジションを落としていたジャック・ゴフのシビックなどが仕切り直しで九死に一生を得る。
リスタートでは好調イングラムがリードを維持して1コーナーへ。ユアサ・レーシング(チーム・ダイナミクス)ホンダのシェドンが、トヨタの後を追う展開となった。
しかし、ここではイングラムの天下は長く続かず、2周目にはシェドンがオーバーテイクを決め、そのままゴールまでトップを快走。イングラムはまだマシンバランスが完全に改善しておらず、WSRのロブ・コラードにも先行を許し3位表彰台確保がやっと。4位にオースティン、5位にモーガンと、レース1で好調を発揮した顔ぶれが続いた。
■最終レース3はBMWら復帰ワークスチームが活躍
そして夕刻の開催となった最終レース3は、WSR移籍初年度のアンドリュー・ジョーダンが、僚友ターキントンを従え勝利。BMWワークス復帰初年度を祝うワン・ツーを達成した。
レース2の中盤、エイデン・モファットのレーザーツール・メルセデスAクラスとスバル・レヴォーグ、アシュリー・サットンのクラッシュで黄旗が提示されていた区間で、ロブ・オースティンのアベンシスに追突されていたジョーダンは7位に沈んだが、結果的にこれがレース3の3番手グリッド獲得に繋がり、勝機となった。
ポールからスタートしたのは、こちらも今季からワークス復帰を果たしたボクスホール・アストラのトム・チルトン。しかしFRのBMWのダッシュにはかなわず、スタートでジョーダンにリードを許すと、新規参戦のアストラはハードタイヤを履くWSRのマシンに必死で喰らいついていく好パフォーマンスをみせる。
しかしレースのハイライトは、後方10番グリッドから怒涛の追い上げを見せたもう1台のWSR、ターキントン。中盤には6番手までポジションを上げると、17周目にはついにアストラの背後に迫り、ターン4の“サーティース”でチルトンをオーバーテイク。
ラスト2周はジョーダンとテール・トゥ・ノーズの態勢となり、コンマ3秒の僅差でチェッカー。3位チルトンと合わせてワークス復帰のBMW、ボクスホールが表彰台独占を果たした。
これで選手権ランキングは王者シェドンがリードし、イングラムのトヨタ、ジョーダンのBMWと続く結果となった。次戦ラウンド2のドニントンパーク戦は、4月15~16日に開催される。