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「働き方改革」残業規制、建設、運輸、医師などは「適用除外」…今後どうなる?

2017年04月05日 11:23  弁護士ドットコム

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3月28日にまとめられた「働き方改革実行計画」。柱である年720時間、繁忙期は月100時間未満の罰則付きの残業時間規制は、労働基準法の改正を経て、2019年4月1日に施行される見通しだ。しかし、規制が当てはまらない職業もある。いわゆる「適用除外」に該当する仕事だ。


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該当する業種は「限度基準告示」で、(1)建設業、(2)自動車運転業務、(3)研究開発、(4)厚労省の指定業務と定められている。


これに加えて、労基法41条でも、(a)林業以外の農林水産業、(b)管理監督者・機密事務取扱者、(c)監視・宿日直業務(労基署の許可が必要)が適用除外とされている。具体的には、どんな職業が働き方改革の「恩恵」を受けないのか、今回の実行計画と合わせて紹介したい。


●「建設・運輸・医師」は2024年から、「研究開発」は適用なし

まずは今回の実行計画で言及があった業種を見ていこう。


<建設業>


受注量が変動しやすく、天候にも左右されやすいことなどから、現行法では労働時間の適用除外。実行計画では、2024年(施行5年後)から罰則付きの上限規制を適用するとされた。ただし、災害などからの復旧や復興にかかわる場合は、月単位の上限はなくなる。


<自動車運転業務>


トラックやバス、タクシーのドライバーなど。待機時間が長く、適用除外とされている。ただし、現行法でも「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(改善基準告示)」で上限がある。たとえば、トラックの場合は拘束時間(休憩含む)が月320時間、年3516時間。タクシーは月320時間など。連続運転できる時間や、運転間のインターバルなども決められている。


実行計画では、2024年に年960時間(月平均80時間)以内の残業規制を適用。将来的には720時間を目指すとされた。


<研究開発>


新技術や新商品などの研究開発に限られる。今回の実行計画では、適用除外のままとされた。ただし、対象範囲を明確化することや、医師による健康確保措置を課すという。


<医師>


医師にも労基法が適用されるが、実際は長時間労働が横行している。理由の1つは、労基署の許可があれば、日宿直が残業時間としてカウントされなくなるから(労基法41条)。本来、適用除外となる当直業務は、「ほとんど労働をする必要のない勤務」に限定されているが、医療関係者の場合、事実上拡大解釈されている。


実行計画では、2019年ごろに上限規制について検討。2024年を「メド」に適用するとのこと。その際、診療治療の求めを拒んではならない(応召義務)とする医師法の規定に配慮する必要があるとされた。


●実行計画にない業種にはどんなものがある?

実行計画の中では、特に長時間労働が問題となっている業種が言及の対象になっていた。そのほか、残業時間の適用除外になる業種には、どんなものがあるのか。いくつか紹介したい。


・管理監督者


職業ではないが、いわゆる管理職。ただし、肩書きだけではなく、自由裁量や給与の高さなどの実態が必要だ。年720時間の上限規制ができたことで、肩書きだけの「見なし管理職」の増加が懸念されている。


・林業を除く農林水産業


自然条件によって労働時間などが左右されるため。


・機密事務取扱者


秘書など、経営者や管理監督者と行動を分け難い職種が想定されている。ただし、実態によって判断される。


・監視、宿日直業務


いずれも、労基署の許可が必要。身体の疲労や精神的緊張の少ないことが条件。


・厚労省労働基準局長の指定業務


郵政事業の年末年始における業務などが該当。


・国家公務員


原則として、労基法ではなく、国家公務員法や人事院規則が適用される。人事院の指針(2009年)では、残業時間は年720時間を超えないよう「努める」とされている。


一方、地方公務員には労基法の多くが適用される。ただし、「臨時の必要がある場合」は労働時間を延長できる(33条)。また、教員は、授業準備や部活動指導が残業可能な業務として規定されておらず、上限のない時間外労働が横行している。過労死弁護団は今回の実行計画について、「公務員の長時間労働規制の視点がない」と批判している。


・その他


労基法116条では、船員は労働時間規制などの適用除外。また、「同居の親族のみを使用する事業」と「家事使用人」は労基法そのものの適用除外とされている。たとえば、家族でやっている商店の仕事や、本来の意味での「メイド」は労基法の定めを受けない。


(弁護士ドットコムニュース)