2017年04月05日 10:24 弁護士ドットコム
家族旅行を計画しても「方角が悪い、2年後であれば方角が良いので行く」と夫を振り回す妻ーー。弁護士ドットコムの法律相談コーナーには、そのような妻に苦悩する男性から、離婚が可能かどうか、質問が投稿されました。
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男性は妻と子どもとの3人暮らし。妻は風水や占いへの執着が強く、突然「幽霊がいる」と言い出して霊媒師に会いに行ったり、夜中にお経を唱えたりするそうです。男性は「笑い話のようですが非常に深刻です」「子供にも影響があると思います」と悩んでいます。
風水や占いにこだわり、夫を振り回す妻と離婚することはできるのでしょうか。小田紗織弁護士に聞きました。
ご相談者のケースが、一般的日常家事が困難なほどの「強度の精神病」(民法770条1項4号)であれば、裁判上の離婚原因となりますが、どうもそういうわけではなさそうです。とはいえ、「その他婚姻関係を継続し難い重大な事由」(民法770条1項5号)にあたれば、裁判上の離婚原因とはなります。
占いや風水とは異なりますが、妻が新興宗教の信者で、宗教活動に没頭して家庭生活が疎かになり、子どもへの教育にも実際に影響しているような事例では離婚が認められています。これに対して、週に1回、夫や子どもらが仕事や学校に出掛けている間に集会に出る程度であれば、いくら夫がその新興宗教を理解できなくても、離婚は否定されています。
「宗教」はまさに信仰の自由として憲法上保障されたものですので、少し判断基準が違ってくるのかもしれませんが、風水や占いであっても、それに没頭することが家庭生活を破綻させるほどのものかが、離婚が認められるかどうかのポイントになると思われます。
現在の夫婦関係が、夫の「風水」「占い」「霊媒師」に対する嫌悪感に基づく価値観や意見の相違の延長線上にとどまるのであれば、離婚原因とは直ちに認められないでしょう。妻が占い・風水・霊媒師のために家計をつぎ込んだり、霊媒師の元へ頻繁に通うなどして家庭のことが疎かになっているのであれば、離婚原因と認められる可能性が高まるでしょう。
仮に、妻の占いなどへの傾倒が著しく、婚姻関係が破綻すると認められたとしても、妻が子どもの親権者として適格かどうかは別の問題です。お子様がそういった母親の考えを受け入れているのであれば、妻が親権者として認められる可能性もあります。子どもへの影響を懸念されているのであれば、離婚をしない方が良い場合もあるでしょう。
女性が新興宗教や占い、風水などにはまる原因としては、日常生活や家族関係における悩みや不安をきっかけとすることが多いようです。いざ、離婚を求めて調停、訴訟などをしてみると、妻から、夫本人が自覚していない、夫に対する不満や不安が大量に主張されることもありえます。
占いや風水を頭ごなしに否定するのではなく、まずは妻が何に不安を感じているのか、悩んでいるのか、分かり合う努力をしてみてはどうでしょうか。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
小田 紗織(おだ・さおり)弁護士
法科大学院1期生。「こんな弁護士がいてもいい」というスローガンのもと、気さくで身近な弁護士を目指し活躍中。
事務所名:神戸マリン綜合法律事務所
事務所URL:http://www.kobemarin.com/