シリーズの“全体傾向”が見えてくる開幕2戦目
フェラーリが7年ぶりに連勝を果たせるか?
フェラーリのセバスチャン・ベッテルが逆転を決めた開幕戦オーストラリアGP、絶対王者を誇ってきたメルセデスを退ける待望の勝利だった。この先制攻撃後、第2戦中国GPで連勝できるか。フェラーリ2連勝は、2010年イタリア~シンガポールGPのフェルナンド・アロンソまでさかのぼる。彼らの戦力査定の意味を持つ2戦目、まずこれが大きなポイント。
アルバートパークの勝因として、「タイヤに優しい」フェラーリSF70Hが指摘される。ベッテルが見せた本番の安定ペースは、バルセロナテストでのロングランを上まわるものだった。逆にメルセデスはペース維持に苦しみ、レース序盤のウルトラソフト対決でSF70Hのマッチング度が優っているのがはっきりした。
レギュラー勢が昨年のピレリタイヤの試作テストに積極参加、ピレリの開発方向性に少なからず関与できた(はずだ)。それがSF70Hの基本コンセプトにプラスに作用したと考えられる。大半を若いドライバーであるパスカル・ウェーレインに任せたメルセデスだが、果たして限られた試作タイヤ情報を十分にすくい取れたか。いっぽう、各メーカー製のタイヤ経験があり、その技術面に人一倍興味を示していたベッテル。ピレリがフェラーリに合うタイヤを作ったわけではなく、フェラーリがピレリに合うSF70Hを作りこんだと言えるのではないか。
また、昨年まで長くピレリの現場リーダーを務めた人物が去り、技術専門者が率いる人事異動が開幕直前に発表された。これも気になる動きではある……。
■今宮純が厳選するF1第2戦中国GP 6つの見どころ
●キャッチポイント1:最近のフェラーリ勝利は、路面温度が35度以上のホットコンディションになった時だけだ。15年シンガポールGPは37度、ハンガリーGPは40度、マレーシアGPは61度、13年スペインGPは37度、中国GPは35度。今年の開幕戦は気温24度、路面温度35度、冬のバルセロナテストより高めの温度差があった。メルセデス勢はオーバーヒート症状に陥り、スライド傾向になっていったが、フェラーリ勢はそうはならなかった。
●キャッチポイント2:09年から中国GPは、秋から春の時期に移された。4月の上海の平均気温は最高19.5度、月間降雨日数は11日、南半球3月の晩夏メルボルンより涼しい。長期天気予報によれば金曜と土曜は雨がらみ、日曜は曇りで気温20度前後。これらを参考にすると、第2戦がフェラーリ向きのホットコンディションになるか微妙だ。ちなみに、フェラーリが上海で勝った13年は春とは思えない気温26度、うす曇りで路面温度は35度以上だった。
●キャッチポイント3:ルイス・ハミルトンがアイルトン・セナの持つポールポジション記録65回に迫り、いよいよカウントダウン。現在62回であと3つ、上海で獲ればあとふたつ。可能性としてセナの命日5月1日の前、4月30日第4戦ロシアGPで並ぶかも。中国GPで彼は過去5回ポールポジションを決めている。
●キャッチポイント4:昨年、最もオーバーテイクが多かったのはここ上海。上位メンバーが下位に沈む混乱模様になり、彼らがポジションアップ。メインストレート600m、バックストレート1175mのブレーキングが抜きどころに。さらにターン6、ターン11も左フロントタイヤが厳しくなってきた相手を刺せる。開幕戦の舞台アルバートパークは昔から「抜きにくい」定評があり、今年オーバーテイクが激減したのは確かだが、ここ2戦目でどうか見極めたい。
●キャッチポイント5:雨がらみレースやセーフティカー導入など、過去に荒れた印象があるものの、上海戦は決してサバイバルゲームではない。昨年、全車完走22台、15年17台、14年20台、13年18台、12年23台と高い完走率。コース幅は広くエスケープゾーンもあり、小接触が起きても致命的な多重クラッシュ事故になりにくい。また、左フロントタイヤには厳しいレイアウトでもマシンとパワーユニット(PU)にかかるストレス度合は低く、14年ハイブリッドPU導入初年度の序盤戦でリタイアが最も少なかった。こうしたレース傾向は中間チームの入賞チャンスを減らし、10位1点・攻防がより熱くなるのは必至だ。
●キャッチポイント6:過去13回で、ウイナーの“1ストップ作戦”はない。今年は昨年と同じミディアム、ソフト、スーパーソフトが全車に同数供給される。性能劣化が少ない今年のスペックだけに、予選Q2をソフトで臨みスタートタイヤとし、ロングスティントから1回ストップも考えられよう。
新シーズンのチーム力、ニューマシン戦力など、“全体傾向”が見えてくる開幕2戦目。繰り返すが、フェラーリが7年ぶりに連勝を果たし、シリーズを引っ張っていけるか。最大のポイントだ──。