WTCC世界ツーリングカー選手権は、今季から導入予定のラリークロススタイルの“ジョーカーラップ”を、開幕戦マラケシュでは導入しないことを決定した。サーキット上の制約と、政情の不安定さが要因とされている。
■「不満足な内容でジョーカーラップを導入したくない」
WTCCに導入予定のジョーカーラップは、WorldRX世界ラリークロス選手権やGRCグローバル・ラリークロスなどで導入されているもの。コースにショートカット、あるいは遠回り区間を設けて、順位の入れ替わりを促す。
公道イベントでのジョーカーラップ導入案は、昨年11月、WMSC世界モータースポーツ評議会で初めて討議され、適切な導入に向けて調査が進行中であるとされていた。
また、WTCCのレギュレーションにもジョーカーラップ仕様に関する記載がなされるようになっている。
しかし、WTCCをプロモートするユーロスポーツ・イベントの代表フランソワ・リベイロは、マラケシュのムーレイ・エル・ハッサン・サーキットにある制約と、昨年10月から先週まで無政府状態だったモロッコ政府の不安定性から、マラケシュではジョーカーラップを導入しないと発言した。
「我々はFIAに2つないし3つのジョーカーラップ導入案を提案した」とリベイロは述べた。
「マラケシュのサーキットは非常に狭く、我々は最終的にFIAとサーキット委員会とともにジョーカーラップを導入しない決定を下した」
「最初にジョーカーラップを導入するタイミングで、クラッシュが起きるようなリスクを冒したくないためだ」
「モロッコは事実上、最後の議会選挙から無政府状態にあった」
「ジョーカーラップを導入するには、500平方メートルに渡るコースの再舗装など多くの工事が必要になる」
「こうした工事をするには公開入札を行う必要があるが、入札を進め契約をする行政機関がなければならない。大臣がいないのにどうやって契約を結べばいいんだい?」
「最終的に、我々はもっと現実的にならなければならないとFIAに伝えた。不満足な内容でジョーカーラップを取り入れることは望んでいない」
こう語ったリベイロは、ジョーカーラップの初導入は6月のポルトガル・ヴィラ・レアルラウンドで初めて導入されるだろうと語った。
■ジョーカーを公道限定にする理由。「レースには“本物”のオーバーテイクが必要」
また、リベイロはジョーカーラップについて、既存の施設では常設コースのいくつかに導入できるかもしれないが、あくまでも公道コースに限定するべきだと語っている。
「我々はヴィラ・レアルでジョーカーラップを実施するにあたって、とても素晴らしいアイデアがある。ただし、初回は非常に安全なものにしなくてはならない」
「今年一回の実施になったとしても、どのようなレースになるか、新しい動きをレースにもたらすかを見てみたい。公道コースではそうなると確信している」
「(従来の)サーキットでもジョーカーラップを設けることができるところはある。たとえば(アルゼンチンの)テルマス(・デ・リオ・オンド)がそうだ」
「だが私は公道コースのみに限定するべきだと考えている」
「私はDRSやプッシュ・トゥ・パス・システムのようなものはあまり好まない。オーバーテイクは少ない方がいい。ただし“本物”のオーバーテイクが必要なんだ。それには重要な意味がある」
「もし常設サーキットでジョーカーラップを設けたら、ドライバーはリスクを減らすためにオーバーテイクを控え、ジョーカーラップを待って追い抜きを仕掛けるようになる気がするんだ」
「FIAが常設サーキットでジョーカーラップを実施したいかと聞いてきた。レギュレーション上はOKしたのだが、私の答えはノーだと伝えた。公道コースだけにするべきだとね」