今季のWorldRX世界ラリークロス選手権の開幕戦が3月31~4月2日にスペイン・バルセロナで開催され、昨季王者のマティアス・エクストロームがワークスカーのアウディS1 EKS RXクワトロに初勝利をプレゼント。タイトル防衛に向け幸先のいいスタートを切った。
F1も開催されるカタロニアのトラックに合計21台のエントリーを集めたスーパーカークラスは、今季も4セッションのクオリファイ、6台×2ヒートのセミファイナルを経て決勝に進出する6台を確定するシステムを採用。
その予選ヒートで不運に見舞われたのは、元WRC世界ラリー選手権王者のセバスチャン・ローブで、Q3のアタック中にプジョー208WRXのドライブシャフトが破損しスピン。セミファイナルへの進出を逃す事態となった。
そのクオリファイで躍進を見せたのが、今季からWorldRXにフル参戦することを決めた元DTMドイツ・ツーリングカー選手権王者のティモ・シャイダー(フォード・フィエスタST)。Q2、Q3で全体2番手のタイムをマークすると、準決勝ヒート1でも2位に入り早々に決勝進出を確定させた。
また、こちらも今季からフォルクスワーゲン・スウェーデンの公式サポートを得てワークス・チームへと昇格したペター・ソルベルグ・ラリークロス・チーム(PSRX)のペター・ソルベルグ(フォルクスワーゲン・ポロGTi RX)とヨハン・クリストファーソン(フォルクスワーゲン・ポロGTi RX)も、準決勝1でそれぞれ3位、1位通過を決め、順調に決勝へと駒を進めた。
アウディS1のエクストローム、フォルクスワーゲン・ポロのPSRX2台、ローブのチームメイトであるティミー・ハンセン、そしてフーニガン・レーシング・ディヴィジョンの“3Dカラー”フォード・フォーカスRS RXスーパーカーをドライブするアンドレアス・バッケルドの6台で争われた決勝は、スタートから波乱の幕開け。
セミファイナル1で勝利を挙げていたクリストファーソンのポロRXが、まさかのストールを喫し後退。結局クリストファーソンは最後まで遅れを挽回することができず6位に。
一方、チームメイトのソルベルグも3番手でレースを進めていたが、4周目の1コーナーでバッケルドにオーバーテイクを許し、4位フィニッシュ。
■ファイナルは“DTMチャンピオンズ”が制圧
そうした後方での順位変動を尻目に、スタートからポジションを守ったエクストローム、シャイダーの“DTM王者経験者”ペアが完全にレースをコントロールしたままチェッカーとなった。
「正直に言って、ここまでのラリークロス・キャリアのなかで、もっともチャレンジングな週末だった」と語るのは、ディフェンディング・チャンピオンであり、開幕戦勝者となったエクストローム。
「Q3とQ4でクリーンなラップを記録し、準決勝に向けポールポジションを得ることが重要だった」
「僕は自分のチームを立ち上げてプライベーターから這い上がり、今ではアウディスポーツの支援を得られるようになれたけど、この週末のティモ(・シャイダー)にはとてつもなく感銘を受けたと言わざるをえない。今季は本当に僅差のコンペティションになるだろうね」
一方、予選ヒートやセミファイナルに続き、決勝でも2位に入り表彰台を獲得したシャイダーは、予選ポイントで集計される『インターミディエイト・ポイント』に於いて首位を維持。大成功のシーズンインとなった。
「バルセロナに来るまでほとんどテスト機会がないままだったので、この結果にはとても驚いたよ。何も期待せずに臨んだけど、MJPレーシング・チーム・オーストリアのメンバーに感謝しなくてはならないね」とシャイダー。
「フォード・フィエスタRXSスーパーカーはとても強烈なマシンだった。僕はまだたくさんのことを学んでいる最中だけど、DTMでの16年間以上に刺激的で、このラリークロス・ライフを心底楽しんでいるよ」
F1と同じ表彰台にふたりの元DTM王者が上がり、5つのマニュファクチャラーが争う激しいコンペティションを予感させるスタートとなったWorldRXの17年シーズン。開幕戦後のチーム・スタンディングでは、決勝に2台を送り込んだPSRXが、勝利を挙げたチームEKSに並び首位に立っている。