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久々ドライブの立川祐路に聞くSF14&ヨコハマの手応え。そしてスーパーGT開幕戦の展望

2017年04月03日 14:31  AUTOSPORT web

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久々ながら初日41周、2日目も37周を走り、ユーズドタイヤながら共に16番手タイムをマークした立川
スーパーフォーミュラの富士合同テストでチャンピオンナンバーの1号車を、国本雄資の代役としてドライブしたP.MU/CERUMO・INGINGの監督、立川祐路。その立川に、久々となったトップフォーミュラの感触、そして今週末のスーパーGT開幕戦への抱負を聞いた。

 トヨタTS050の3台目のドライバーに抜擢された国本がWEC世界耐久選手権の事前合同テストに参加するため、1号車のステアリングを握ることになった立川。以前に乗ったのはSF14が導入された際のトヨタの開発車両というから、3年ほど前になる。初日の走行を終えた立川に聞いた。

「今日はタイヤ1セットしか使わない予定だったので、あのベストタイムも34ラップ走ったユーズドでのものです。(ニュータイヤを入れたら?)それなりには上がったと思います。もっと上に……行けた……かもしれない?(苦笑)」と話す立川。

 初日は34周を走行したタイヤでアタックを行い、タイムは1分23秒532で16番手。新品タイヤだと1秒程度のタイムアップが臨める。チームメイトの石浦宏明は1分22秒595で3番手ということを考えれば、石浦と同等のタイムを残せた可能性が考えられる。セルモの浜島裕英総監督も「さすがです」と話すように、まだまだ速さは健在なところをアピールした。

 石浦も、その立川の速さを素直に認める。その後のふたりのやりとりが、面白い。まずは石浦の立川の走りの印象から。

石浦:ニュータイヤを履かなくてよかったなと(苦笑)。ニュータイヤを履いていたら、かなり僕と近いところだったと思いますよ。

 その言葉を聞いて、照れる立川。

立川:そんなことないよ。

石浦:いや、かなり近いですよ。

立川:ニュータイヤでちゃんと(アタックに)行けたらね。ニュータイヤ、履いたことないから。

石浦:40ラップ走ったタイヤで、1分23秒5ですよ。ニュータイヤを普通に使えたら1分22秒の真ん中じゃないですか。

立川:だいたい、新人はニュータイヤを使いこなせないから。

石浦:新人じゃないじゃないですか。

立川:新人みたいなもんですよ。

石浦:でも、2セット使ったら走れますよ。今日のタイムシートのトップ5には入れてましたよ。

 ふたりの話は尽きないが、久々に乗ったからこそ分かるものがある。立川にヨコハマタイヤを装着したSF14はどう感じたか。

「これまでヨコハマタイヤを履いて走ったことはないですけど、思っていたより乗りやすかったです。SF14もすんなり乗れましたね。3年前に乗った時も思ったんですけど、このダラーラはやっぱり乗りやすいですよね。今まで乗ったフォーミュラで一番素直で乗りやすい。ヨコハマタイヤの印象も、フォーミュラが久々すぎてこれまでのタイヤと比較してどうこうとか言えるほど前の感覚も残っていなので(苦笑)、わらかないですけど違和感はなかったです」

 体力的にはどうだったか?

「前に自分が乗っていた時はパワステがなくて、その時と比べればステアリングは楽ですけど、それでも今もダウンフォースが大きくてタイムが速いのでパワステが付いていてもそれなりに重いし、体にはしんどいですね。正直、このパッケージでレースはしたくない(笑)。予選までならいいです。予選やって帰っていいならいいですけど、レースはやりたくない。今日は久々に乗ったということもあって、無駄な力も入っていたと思うんですけど、やっぱり疲れますね」

■スーパーGT開幕戦に向けての立川の手応え


 今回の走行は国本の代役とはいえ、立川監督が乗ることになった目的は何か。どのようなメニューで走行していたのだろう。

「タイヤの皮むきがメインだったので(苦笑)。ここで皮むきしないと開幕戦にタイヤを持って行けないという話だったので、皮むき要員で来ました」と、冗談とも本当ともわからない言葉を残す立川。

「チャンピオンの国本様の下準備です。セット出しまでは行ってないですね。僕がそんなに細かく変えてもドライビングスタイルが違うので。空力のデータ取りは少しはできました。まあ、料理で言ったら下ごしらえです。野菜とかを切っておいて、あとは国本さんどうぞと」

 下ごしらえにしては、セッション開始直後の走り始めから上位タイムを残し、徐々にタイムアップしてく姿は普通にレースに向けての詰めを行う作業と同じ。そのセッションの進め方に立川の本気度、そして意地を感じる。

「意地というよりも、あまりに遅かったらみんなの笑い者というか、全体の笑いものになると思っていたので(苦笑)」

 今回のスーパーフォーミュラのテスト参加は、もともとは立川自身が乗りたいと要求したわけではなく、チームからの要求に立川は仕方なく応じたというのが真相のようだ。それでも、限られた機会と条件の中できっちりとタイムを残した。

「あとあと、石浦と国本にバカにされたら嫌ですからね。馬鹿にされないよう恥ずかしくないタイムを出さないと、監督として何を言っても相手にされてもらえなくなりますからね。今後の監督業に影響する。だから、疲れました(笑)」

「疲れた」「レースは無理」との言葉を繰り返し、今のスーパーフォーミュラの厳しさを身をもって伝える立川。今週末はいよいよ自身が選手として迎えるスーパーGT開幕戦だが、今回のスーパーフォーミュラの経験はどう活かすことができるのか。

「ドライバーとしてはこういう速いクルマに乗ると、次にスピードが遅いクルマに乗ったときに余裕ができるので、メリットはあります。そういう意味ではGTにも活きるし、監督としてもクルマのことを知っているのと知っていないのでは違うし、石浦と国本、そしてエンジニアとの話にも入りやすいので、両方にそれなりにメリットがあると思います」

 スーパーGTではレクサス陣営の好調が明らかで、レクサス陣営内の同門対決になりそうな気配だ。

「GTはテストの好調のまま、レクサス陣営が上位を奪えればいいですね。レクサス全車が揃って速いというのは、レクサス陣営としてそれまでの開発がうまく進んでいた証拠ではあるんですけど、レクサス内での戦いはそれなりに大変です。でもどの道、毎年同じクルマで戦っていますからね」

 ただ、もちろん不安もある。

「不安と言えば、調子が良く見えているだけに、本当にレースでも同じならいいなと。いざ始まってみたら、ライバル陣営が速くて『あれっ!?』ってならないように。ここまでのテストで調子が良すぎるだけに、逆に不安ですね。本当にこんなに差があるのかなって思っています」

 今年からGT500は3メーカー揃って新車両が導入されるが、レクサスLC500は立川が中心となり、石浦、平手晃平、大嶋和也たちと開発を務めてきた。事前の合同テストではレクサス>ホンダ>ニッサンという勢力図が見えたが、すでに開幕戦の本命とも言われるLC500のパフォーマンスは果たして事前の予想どおりとなるのか。今週末にその結果が見える。