2017年04月03日 11:03 弁護士ドットコム
2018年卒業予定の学生を対象とした企業の採用活動が3月1日に解禁され、本格的な就職活動のシーズンが始まった。学生の中には、希望の企業から内定を得るために、エピソードをでっち上げたり、経歴やアルバイト先などでの実績を「盛って」アピールする人が少なくないようだ。
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AERA2017年3月20日号によると、就活での「嘘」や「盛り」のパターンは3つあるという。1つは、順位や売り上げなどを実際より良く言ったり、役職などを偽る「実績盛り」。2つ目は、面接官にウケそうなキャラクターを演じるパターンで、3つ目は他社の選考状況についての嘘だという。
就職活動の面接で、経歴を盛ったり、嘘のエピソードを語ることについて、法的な問題はないのだろうか。黒栁武史弁護士に聞いた。
「厳しい就活を勝ち抜くために、『経歴を盛る』などして、見栄を張りたくなるのも人情だと思います。
しかし、面接や履歴書などから得られる情報は、企業が採否を判断する上で貴重な資料となります。そこに嘘があれば、企業が採否の判断を誤ることにつながります。経歴を偽って入社されると、企業運営に問題が生じかねませんし、経歴詐称自体が企業と従業員間の信頼関係を喪失させる要因にもなります。
以上のことから、多くの企業では、就業規則において、経歴詐称を懲戒事由としています。
また、(経歴詐称が判明した段階に応じ)採用内定の取消、本採用拒否、解雇などの処分の対象になる可能性もあります」
黒栁弁護士はこのように述べる。
「裁判例においても、重要な経歴の詐称(その経歴について真実が告知されていれば、企業は雇用契約を締結しなかったと客観的に認められるような場合)に対する懲戒解雇処分や解雇処分を有効とするものが見られます(東京地裁平成22年11月10日判決、東京地裁平成27年6月2日判決など)。
重要な経歴の例としては、学歴や職歴の他、退職歴や犯罪歴などが挙げられます。また、企業が採用に当たり重視している能力や性格なども、重要な経歴に該当する場合があると考えられます」
冒頭の例については、どう考えられるのか。
「本文で挙げられている3つのパターンについてみますと、1つ目の『実績盛り』は、その内容次第では、職歴や能力についての詐称に当たる可能性があると思われます。2つ目や3つ目については、重大な経歴の詐称といえるかは微妙ですが、企業側が重視する採用方針との兼ね合いや、詐称の程度及び詐称による企業への影響次第では、問題とされるリスクもあり得ます。
ある程度のセールストークは企業側も折り込み済みかもしれませんが、行き過ぎた嘘は、採用拒否や懲戒解雇などの重大な処分につながりかねません。注意していただく必要があるでしょう」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
黒柳 武史(くろやなぎ・たけし)弁護士
2006年関西学院大学大学院司法研究科修了。2007年弁護士登録(大阪弁護士会)。取扱い分野は、民事・家事事件、労働事件、刑事事件など。
事務所名:中本総合法律事務所
事務所URL:http://nakamotopartners.com/