FIA会長のジャン・トッドはF1マシンをもっとシンプルなものにし、開発コストを抑える必要があると語った。また、今のマシンの信頼性は高すぎるとの考えも示している。
FIAは2021年以降のF1エンジンレギュレーションについて話し合うため、3月31日に会合を開催、現在F1に参戦しているマニュファクチャラーとともにそれ以外の自動車会社も招いた。
現在F1に参戦していないにもかかわらず今回会合に出席したメーカーについては具体的に明らかになっていないが、フォルクスワーゲングループの代表として、ランボルギーニのCEOステファノ・ドメニカリが出席したといわれている。同グループのアウディは、以前からエンジン規則に関する会合について情報収集を続けている。
F1が現在の1.6リッターV6ターボ・ハイブリッドのパワーユニットを継続すべきか、よりシンプルで音の大きなエンジンに立ち戻るべきかについては意見が分かれるものと考えられていたが、FIAは会合の後に声明を発表、将来「パワフルでありつつ、よりシンプルで、開発および製造コストがより低い」パワーユニットを導入、サウンドの改善も目指すことで、大筋で合意したことを明らかにした。新規則の詳細については今後検討されていくことになる。
以前からV10やV12エンジンに戻ることには否定的なトッドだが、今のF1テクノロジーは高度すぎると考えている。
「F1マシンは洗練されすぎているし、おそらくはハイテクすぎると思う。このスポーツには必要ないレベルだ」とトッドは、エンジン会合を前に語った。
「これは非常に微妙なポイントだ。かたや自動車は進化しているというのに、モータースポーツの最高峰がその進化について行かないとはとても言い難い」
「F1に自動運転車やコネクテッドカーを取り入れることは考えていないが、社会が直面しているのはそうした車であり、メーカーが直面しているのはそうした車のエレクトロニクスやパワートレインであって、F1の世界とは完全に違うのだ」
「だから我々はそうした変化をモータースポーツにどう変換するか、そして当然のことながらF1にどう取り入れるかを考えなければならない」
かつてフェラーリのチーム代表を務めていたトッドは、合同テストの様子が現代のF1マシンの問題を浮かび上がらせたと考えている。
「いまのマシンは費用がかかりすぎるし、複雑すぎる。そしてある意味では信頼性が高すぎる」
「バルセロナでの合同テストの初日を見て私はショックを受けた」
「私の時代には、(初日に)5周走れば『素晴らしい、5周走ったぞ!』という感じだった。それなのにいまのマシンは70周や80周走った」
「彼らはファクトリーの中に他に誰もアクセスできない研究所を建てているのだ」
■「F1には電気自動車は導入しない」
今後、マニュファクチャラーが決断をしなければならないひとつの課題は、将来F1マシンにおいて電力をどの程度活用すべきかということだ。
自動車メーカーは電力の領域拡大を推し進めているが、トッドは完全な電気自動車の導入はF1にとって正しいことだとは考えておらず、それはフォーミュラEに委ねたいとしている。
「都市における電気自動車には非常に明るい未来があると私は考えているし、それが我々が市街地においてシングルシーターの電気自動車によるチャンピオンシップを開催している理由だ」とトッド。
「多くの車はいまもディーゼルかハイブリッドもしくは、ダウンサイジングエンジンおよびターボとエネルギー回生システムを使っている。私は燃料電池が将来有望だと考えている」
「将来的にモータースポーツのいくつかのカテゴリーに(燃料電池を)導入することを検討してもいいと思う」
「しかしF1に関しては、より従来型のエンジンをしばらく使うことになるだろう」
「だからといって我々は10年前に走らせていたものに戻ろうとしているわけではない。それは起こり得ない」