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トヨタ、初日最速も可夢偉は慎重コメント。「もっと良くなる」【WECプロローグ現地情報3】

2017年04月02日 15:11  AUTOSPORT web

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2017WECプロローグ 小林可夢偉
昨日までの暖かい陽気から一転、空には雲が広がり、少し冷んやりとした朝を迎えたイタリア・ミラノ近郊に位置するモンツァ・サーキット。WEC世界耐久選手権の開幕前テスト“プロローグ”の走行初日は、午前3時間、午後3時間、そして2時間のナイトセッションと、計8時間の走行が行われた。

 昨日のローンチでは、スパとル・マンに参戦する3台/9名のドライバーが勢ぞろいしたトヨタ陣営だが、フォーミュラE参戦のためセバスチャン・ブエミ、ステファン・サラザン、そしてホセ・マリア・ロペスがすでにモンツァを後にしており、2日間のテストは7・8号車の2台を残り6名のドライバーでドライブすることになる。

 午前9時、気温13.9度/路面温度15度というコンディションのなか、セッションがスタート。ポルシェ1号車はニック・タンディ、2号車にはアール・バンバーがまずはテストを担当。トヨタは7号車にマイク・コンウェイ、8号車には中嶋一貴が乗り込み、順調に周回を重ねていった。その後はポルシェとトヨタがベストタイムを塗り替えながら、セッション序盤が進んでいく。開始30分頃から、サーキットには日差しが戻ってきた。

 このセッションでのトヨタの2台は、7号車がコンウェイでロングラン、8号車が一貴とアンソニー・デイビッドソンでドライバーチェンジをしながらのセットアップ作業に多くの時間を費やした。その他のドライバーが乗り込んだのは、いずれもセッション終盤、残り30分を切ってから。7号車では国本雄資が数周、続いて小林可夢偉が数周し、セッションは終了。ポルシェ1号車のアンドレ・ロッテラーも、セッション残り10分というところでようやくステアリングを握った。

 12時にセッション終了。終わってみればLMP1の4台はポルシェ1号車を首位に、ベストタイムが0.5秒以内という超僅差である。LMP2クラスはバイヨン・レベリオンの31号車がトップ。LMP1のトップからは4秒差と、今季からレギュレーションが変更され、4つのシャシーとワンメイクのエンジンで戦うことになったLMP2は、同じく規定変更によってダウンフォースが削られたLMP1クラスに対し、ラップタイム差を詰めてきている印象だ。

 最高速でもトップ5台がLMP2のマシンという“逆転現象”が起きている。LMGTEプロでは92号車ポルシェが、LMGTEアマでは86号車ポルシェが、それぞれクラストップをマークした。

■WEC“ルーキー”国本も走行。フルコースイエロー体験

 午前の途中から日差しが降り注ぎ、気温20度、路温は38度まで上昇して迎えた14時、セッション2が始まった。トヨタの2台はコンウェイとニコラス・ラピエールが乗り込み、セッション開始と同時に走行開始。コンウェイはいきなり1分31秒台に入れ午前中のベストタイムを上回ると、その後すぐに可夢偉へとバトンを渡した。ポルシェ1号車は、ロッテラーがまずはステアリングを握る。2号車は遅れて、開始30分を過ぎた頃からティモ・ベルンハルトでコースに入っていった。

 GTEアマクラスでは、クリアウォーター・レーシングから今季フル参戦を果たす澤圭太が順調に周回を重ねていく。

 15時28分、7号車のステアリングは可夢偉から国本へと託された。その直後にGTEプロクラスでトップに立っていたポルシェ92号車がコースオフしてグラベルにつかまったことでフルコースイエロー(FCY)導入となるが、国本はピットインせずに周回を継続。

 LMP1ルーキーの国本にとっては、レース本番でのFCY運用に備えるいい機会となったことだろう。車両回収がスムーズに進まなかったため、その後セッションは赤旗中断となった。

 再開後、ポルシェはタンディとバンバーにドライバーチェンジ。国本はおよそ1時間のドライブを終えると、コンウェイへとバトンタッチした。一方、8号車にはセッション終了間際の最後の10分で一貴が乗り込み、自己ベストタイムを立て続けに更新。これでトヨタはこのセッションをワン・ツーで終えることになった。LMP2では36号車シグナテック・アルピーヌ・マットミュートがトップタイムをマーク。GTEプロでは途中コースアウトもあった92号車ポルシェが、GTEアマでも午前と同じく86号車のポルシェがトップに立っている。

■トヨタ勢、開発は順調に推移か

 午後のセッション後半からサーキット上空にはやや暗い雲が広がり始めるなか、19時のナイトセッション開始を迎えた。気温は17度、路面温度は20度まで下がってきている。本日のミラノの日没時刻は19時51分。したがって、前半1時間は空が明るい状態での走行となる。

 開始と同時にコースに飛び込んでいったのは、LMP1-Hの4台のみ。ポルシェ1号車はジャニ、2号車バンバー、トヨタ7号車が可夢偉、8号車が一貴というラインアップだ。トラフィックのいない環境も幸いしてか、計測1周目で早くも1、2、8号車が31秒台をたたき出す。開始5分を過ぎたあたりから、他クラスもパラパラとコースインしていった。

 しかし開始15分が過ぎたところで、大粒の雨が降り出し、雷まで鳴り始めてしまう。トヨタの村田久武ハイブリッドプロジェクトリーダーは、これまでのテストにおいてロードラッグ仕様での雨のマイレージを稼げていないことから、「ウエットも走りたい」とコメントしていたが、その言葉どおり8号車のデイビッドソンがコースイン、7号車のコンウェイがそれに続き、周回を重ねていく。

 一方のポルシェは、2号車のハートレー、1号車のタンディを相次いでウエットトラックに送り込んだ。時折雨量が変化するなか、LMP1-H勢は1分45~50秒ほどのペースを刻んでいく。他にもGTクラスを中心に数台のマシンが雨のなかで積極的な走り込みを見せたが、大半のマシンはピット内での待機を選んだ。

 20時前、7号車は国本がステアリングを握り、暗い雨の中へとコースイン。気温は13度まで下がってきた。8号車は一貴もドライブを担当し、その後ラピエールに引き継いでいる。20時25分には、この日初めてニッサンエンジンを積むLMP1の4号車バイコレスがコースイン。ゆっくりとしたペースでアウト/インしたのち、オリバー・ウェッブが連続周回に入っていった。この日はロバート・クビカの出番はなかった。

 セッション残り15分を切ったところで、7号車には再び可夢偉が乗り込む。1号車も中盤にステアリングを握っていたロッテラーから、ジャニへとバトンタッチ。2号車はこれよりも早いタイミングで、ベルンハルトへとスイッチしている。セッション終了10分前、急に雨脚が強くなったところで各車ピットへと戻ってきたが、ここでバイコレスのマシンに異変が。ピットに帰ってきたマシンは、なんとリヤウイングが真っ二つに折れていたのだ。

 ナイトセッションは雷鳴が轟くなかで終了。トヨタは7号車が43周、8号車が41周と、もっとも多くの周回数をマークした。上位陣は序盤のドライコンディション下でマークしたタイムがセッションベストとして残る形。一方で、およそ半数のマシンがタイム計測を行なわなかった。

 セッション2終盤の段階でトヨタ7号車の可夢偉は「まだクルマ作っているところなのでなんとも言えないですけど、もうちょっと(マシン)バランスはやりたい。もっと良くはなると思います。いまのところは大きい問題もないですし、クルマをうまく作って、テストアイテムももう少しいろいろと試して、最終的にパッケージをどこまで持っていけるかというところをやっています。もちろんポルシェもそんなに本気を出しているとは思わないし、いまの状態で満足するのはおかしいと思う」と語っていた。

 ここモンツァに合わせ込んだ仕様ではないことや、ポルシェ・トヨタともに独自のメニューをこなしていることなどから、簡単に勢力図について言及はできないが、ドライバーや首脳陣への取材を通して総合的にみると、トヨタに関して言えば概ね順調に開発が進んでいると考えてよさそうだ。

 テストは明日2日も午前と午後、3時間ずつのセッションが予定されている。