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BiSH人気拡大の背景は? “パンクバンドそのもの”で勝負するグループの本気度

2017年04月02日 10:03  リアルサウンド

リアルサウンド

BiSH『プロミスザスター』(DVD付)(-LIVE盤-)

【参考:2017年3月20日~2017年3月26日のCDシングル週間ランキング(2017年4月3日付)(ORICON STYLE)】(http://www.oricon.co.jp/rank/js/w/2017-04-03/)


 2017年4月3日付の週間CDシングルランキングで目を引いたのは、4位となったBiSH『プロミスザスター』だ。


(関連:乃木坂46、夢アド、寺嶋由芙、BiSH、放プリ……アイドルソングの新作にみるシーンの“成熟”


 BiSHについて、筆者は昨年にシングル『DEADMAN』でメジャーデビューを果たしてから当サイト上でたびたびグループについて記してきた。昨年10月にリリースされたメジャーデビューアルバム『KiLLER BiSH』リリース時には「グループの“本気”がより広く伝わっていくことになるのではないだろうか」と予測し、その鍵がグループを支える作曲家・松隈ケンタの作家性にあると分析していた。


 今回のシングルの初週セールス枚数は2.4万枚。1位となった乃木坂46『インフルエンサー』の87.4万枚という数字と比べると桁が違うが、着実に支持を増やしている状況がみてとれる。ちなみにグループは年末にはメンバー、アイナ・ジ・エンドの声帯結節の治療のため活動を休止していたが、年明けから全国ツアー『BiSH NEVERMiND TOUR』で復活。ツアーファイナル公演となったZepp Tokyo公演で、今度は7月22日に自身最大規模の会場である幕張メッセイベントホールでワンマン公演を行うことを発表した。動員規模は右肩上がりで駆け上がっている状況だ。


 そのZepp Tokyo公演のアンコールで披露されたのが、「プロミスザスター」だった。その時の模様がYouTubeでも公開されている。


 筆者もこの日のZepp Tokyoに訪れていたが、何より印象的だったのは松隈ケンタ率いる「鬼バンド」がステージに登場し、バンド編成でのパフォーマンスが実現していたこと。「楽器を持たないパンクバンド」をキャッチコピーに活動してきたBiSHだが、この日に聴かせてくれたのは比喩でも韜晦でもなんでもなく、パンクバンドそのもののライブだった。


 特筆すべきなのは、BiSHにおける「鬼バンド」の存在が決して「バックバンド」という枠組みにおさまっていないということ。BABYMETALにおける「神バンド」やでんぱ組.incの「でんでんバンド」など、生バンド×ダンス&ボーカルというスタイルでライブを行うグループは他にもいる。が、それらのグループではバンドメンバーがあくまで職人としての演奏に徹しているのに対し、「鬼バンド」は松隈ケンタがグループのサウンドプロデューサーをつとめているがゆえに“もう一人のフロントマン”としての存在感を放つ。楠瀬タクヤ(Dr)、小原just begun(Ba)も目立っている。松隈ケンタがステージの最後にメンバー全員と笑顔でハイタッチしていたのがとても印象的だった。


 ちなみに。BiSH は、2012年よりピロスエの主催によってウェブ上で行われている企画「アイドル楽曲大賞」でも高評価を集めている。「第5回アイドル楽曲大賞2016」のメジャーアイドル部門では、BiSH「オーケストラ」が2位。1位が欅坂46「サイレントマジョリティ」、3位は同じく欅坂46「二人セゾン」となっている。


 実は今週のチャート結果をこれに重ね合わせると、とても興味深い。乃木坂46「インフルエンサー」は、アコースティック・ギターを配したスパニッシュなテイストで、まさに欅坂46「サイレントマジョリティ」の向こうを張った曲調になっている。そしてBiSH「プロミスザスター」も、「オーケストラ」の延長線上にあるストレートで切ないナンバーだ。


 こうして見ていくと、BiSHの人気拡大は2016年から2017年にかけてのシーンの趨勢を象徴する動きでもあると思う。(柴 那典)