僕が新卒で入社を希望した企業では、集団面接をやっていた。受かっても落とされてもどっちでも良かった僕は、面接でもずっとへらへらしていたんだけど、中にはこっちが恥ずかしくなるほどにやる気満々の自己PRをやる者もいた。
「はい、私は友人が多く、みんなに頼りにされ、大学ではサッカーをして~」みたいな具合に。よく自分でそういうこと言えるなぁ~と笑いそうになったものだ。
そもそも、面接の自己PRにどこまで意味があるのかは疑問だ。これまでやってきたこととやりたいことを簡単に確認するぐらいでもいい。もしくは、いっそ馬鹿みたいな質問をされる方がいい。(文:松本ミゾレ)
低性能機体を挙げても卑屈みたいだし、エース機だと自信過剰に思われそう
2ちゃんねるには、「面接官『自分をモビルスーツに例えると何ですか??』」といったスレッドが過去に何回か立ったことがあった。これが結構面白かったので紹介したい。
モビルスーツは、作業用もあれば、量産型もあり、高コストな一品モノまである。面接で聞かれたと仮定すると、性能の悪い機体を挙げるのは、マイナスになってしまう。しかしかといって、ものすごく上質なエース機体に自分をたとえるのは、逆に滑稽だ。
こんな馬鹿げた質問をする面接官なんかいないんだけど、どう回答するか、案外悩むところではある。
さて、ではこのスレッドに書き込みをしたネットユーザーは、どういう回答をしていたのか。ちょっと見ていきたい。
「ボールです。ただいるだけです」
「百式です。御社で百年戦えます」
「ジェガンです。長く現役に立ち、何よりジム(事務)より優秀です」
「バクゥです。御社の飼いイヌになります」
「ジムスナイパーです。しっかりと物事を見据えます」
このように、大喜利っぽい進行になっている。この、つまらないおじさんが書いた記事を読んでしまっている可哀想な方の中には「ガンダムとか知らねえし」という方も当然いらっしゃるはずなので、それぞれの回答に登場したモビルスーツについて、簡単に紹介しておく。
まずボールとは「機動戦士ガンダム」に登場する戦闘用ポッドで、厳密にはモビルスーツですらない。戦闘能力の低いポッドにキャノンを乗っけただけの、支援用機。別名「棺桶」。
面接で自分をボールだと自称する人は、能ある鷹か、或いは自分に自信がない人ということになってしまう。
百式は「機動戦士Zガンダム」に登場した、金ぴかのモビルスーツ。アムロ・レイのライバル、シャア・アズナブル(クワトロ・バジーナ)が乗っている。肩には「百」という漢字があしらわれているが、これは開発者の「百年もつ機体になってね」という願いが込められている。企業にとっては、途中で退職をしない、長期的な戦力になれますよという前向きなメッセージになるわけだ。
そしてジェガンは、「逆襲のシャア」から度々登場するようになる量産型モビルスーツだ。
作品世界では、それ以降の時系列作品にも登場しており、少なくとも30年以上は現役のまま運用されている。しかも、初代ガンダムに登場した量産型モビルスーツ、ジムの発展機のようなポジションにいるので、ジムと事務をかけてアピールすることも可能だ。
最後はバクゥ。犬のような見た目のモビルスーツで、「機動戦士ガンダムSEED」に登場する。会社の犬になって尽くしますよ、というアピールにはうってつけだろう。
他に2ちゃんねるには、
「ドムです。頑丈さと見かけによらないフットワークの良さがセールスポイントです」
「ジムスナイパーです。しっかりと物事を見据え。的確に攻めに行けるからです」
なんて書き込みもあり、結構感心した。
実はこれらのスレッドを読む前は、「どうせみんな、一番有名な量産型のザクですね~とかしか言わないんだろうな」と思っていた。だけど読み起こしてみると、ザクというコメントはほとんどなかった。
一番のメジャーどころをあえて外して、なにか掛け言葉で面接官の心を打とうとするような、そんな意見が多かったのが印象的だ。こういう洒落が咄嗟に出る人って、何もこんなテーマに絞らなくても、面接ではきっといい感じの返しが出来るんじゃないかと思った次第だ。