3月31日に富士スピードウェイで始まったスーパーフォーミュラ第2回公式テスト。初日の午前セッションでトップに立ったのはJーP・デ・オリベイラだが、この初日でもっとも衝撃的だったが、初めての富士の最初のセッションで2番手タイムをマークした新人ピエール・ガスリー(TEAM無限)である。
昨季GP2(現F2)王者にしてレッドブルF1の育成ドライバーということで、前回の鈴鹿に続いて富士でも人気沸騰中のガスリーだが、実力の方でも確実にアピールしてきている。
初コースでも、晴れでも雨でも(初めてのヨコハマタイヤでのウエットでも)、どんな状況でも安定的に上位につけてくる即応性の高さには舌を巻くところがあり、しかも鈴鹿テストから3日連続でホンダ勢首位、全体でも4位、3位、2位という好位置をキープ中だ。それをコースレコード水準のなかでやってのけているのだから大したもの。
「初めての富士だったけど、いい一日だった。鈴鹿とはマシンのダウンフォースレベルが違うからマシンはまったく別ものといってもいいくらいの状態で、それをドライとウエットでいろいろと試すことができたからね。とても面白く、興味深かった」
前日には富士のコースをエンジニアと一緒に歩いて下見。これは以前からの彼のルーティンらしく、鈴鹿でも実行していたことだが、「縁石の状態とかを把握しておくのは大切なんだ。富士は(事前の印象よりも)アップダウンが大きいコースだということもよく分かった」と今回も効果があったことを強調する。
ドライの時間帯には2度ほどストップ、赤旗中断の原因にもなったが、「1回目は僕がプッシュし過ぎた結果のスピンで、うまく再走できなかった。2回目はエンジンの方に問題があってストップしてしまったんだ」と状況を振り返る冷静さも持ち合わせている。
ドライでのベストタイム1分22秒253は「鈴鹿から持ち越した、スクラブだけしたフレッシュタイヤ」でマーク。それも、「最初にそのタイヤでコースに入った時に赤旗が出たので、再度のコースインをしてタイムを出した」ということで、タイヤ的に万全な状況ではないなかでの好タイムだった。
■ロッテラー、中嶋一貴へのライバル心も
「タイヤを作動温度に入れることが(低温条件もあって)難しかった」。ちなみにニュータイヤでのアタックも試みたが、その時には残念ながら「雨が落ちてきてしまったんだ」。
「午後の雨はかなりトリッキーではあったけど、初めてウエットタイヤとのコミュニケーションもできたし、有意義なテストになったね。今日もホンダ勢トップだったのはもちろんいいことだけど、まだ僕は毎ラップ、何かを学んでいるところなんだ。もっとマシンをインプルーブさせていく必要があると思う。今日も僕の上にはトムスがいるわけだしね」
順位はあまり気にしていないようでいて、早くもトムスに狙いをつけている不敵さも感じさせるガスリー。SF14というマシンについても、「こういうマシンは好きだよ。素晴らしい。パワーがあって、ダウンフォースもある。タイヤもグリップするし、富士の100Rのような高速コーナーはドライブしていて本当に楽しい」と、自身のドライビングとの相性の良さを感じている様子。
翌日の富士テスト2日目を終えれば、いよいよ次は開幕戦鈴鹿を迎える。「まだこのマシンに乗って3日目だけど、着実に学べていると思う。もちろんチームと一緒にさらに仕事を進めていく必要があり、コンペティティブな状態で開幕戦を戦えるように準備しなければならないが、そうできるとも感じている。このカテゴリーの経験が豊富なアンドレ(ロッテラー)やカズキ(中嶋一貴)、JP(デ・オリベイラ)たちが抱く自信とは種類が違うと思うけどね。その状況、状況のなかで常にトップを狙っていきたい」
鈴鹿テストでロッテラーが「もしかしたら(ストフェル)バンドーンより上かもしれない」と評した逸材は、富士でさらに輝きを強めつつある。初めてづくしの日本でのスーパーフォーミュラ参戦ながら、すでにホンダ陣営のエースとなりつつある。テスト2日目、そして開幕戦でのガスリーのパフォーマンスへの期待がさらに高まってきている。