松野博一文部科学相は31日付けの官報で新しい学習指導要領を告示し、武道の種目として新しく銃剣道が明記されたことが明らかになった。朝日新聞などが3月31日に報道した。
銃剣道は、これまで指導要領の解説には記載されていたものの、本文には明記されていなかった。こうした動きを受け、「戦前への回帰ではないか」という懸念の声が高まっているが、そもそも銃剣道とはどのような競技なのか。
銃剣道連盟「『突き』が主体なので瞬発力と判断力が養われる」
全日本銃剣道連盟の担当者によると「銃剣道は、樫の木で作られた長さ166センチの木銃を用い、突き技を中心に競い合う競技」だという。現在の競技人口は3万人ほどだ。
「戦前は軍隊による戦闘のために用いられていましたが、1956年に全日本銃剣道連盟が結成されてからは近代的なスポーツとして発展を遂げてきました。しかし戦後も自衛隊の中で盛んに訓練されていたことは確かです」
2008年改訂された指導要領では、中学1~2年の保健体育で武道が必修となった。武道の時間にどの種目に取り組むかは、学校に委ねられている。
「武道の時間に柔道や剣道に取り組む学校は多かったのですが、銃剣道を実施する学校は残念ながらほとんどありませんでした。唯一、神奈川県にある中学校が昨年から銃剣道に取り組んでいます。
確かに銃剣道は『突き』が主体の競技ですが、中学の1~2年のうちは対戦相手を突くというよりも型の習得に重きおいたものになると思います。また銃剣道は、突き技が多いため、単に運動能力がアップするだけではなく、瞬発力や判断力が養われます。
銃剣道を教えることができる教員は全国に10人ほどしかいません。今後増員が望まれます」
教員が不足しているという点について、スポーツ庁の担当者は、「銃剣道に限らず、どの種目でも指導員を充実させていく必要があります」と語った。
「いまでは近代的なスポーツとなっています」
剣柔道が学習指導要領に明記されたことを受け、ツイッターでは戦前への回帰ではないかと危惧する声が相次いでいる。
従軍経験のある父から銃剣道のことをよく聞かされていたという人は
「三八式歩兵銃の先端に短剣を取り付け、一撃で急所を狙う『殺人術』です。それを『銃剣道』などと偽装し、学習指導要領に入れようと画策するとは、狂気の沙汰」
と訴えている。
他にも「銃剣道とは(中略)人殺しの武術」ととらえる人は少なくない。「教えられるのなんて、自衛官しか思い浮かばない(中略)それ、なんていう軍事教練」と自衛官が武道の授業を担当するのではないかという声もあった。
こうした警戒の声が多数上がるなか、全日本銃剣道連盟の担当者はそれを否定する。
「現在の銃剣道の目的はあくまでも人間形成です。戦前に戦闘に用いられていたものとは異なり、いまでは近代的なスポーツとなっています。指導要領に明記されたことをきっかけに、武道の種目として普及していけばよいと思います」