先週開幕したアルゼンチンのツーリングカー選手権『スーパーTC2000』と並び、南米で絶大な人気を集めるツーリングカー選手権シリーズがもうひとつ存在する。それがブラジルを中心に開催されている『ストックカー・ブラジル』だ。その開幕戦が今週末、ブラジル中南部ゴイアニア、アウトドローモ・インターナショナル・アイルトン・セナのトラックで幕を明ける。
今季で39年目を迎えるシーズンは、総勢30台のマシンがエントリー。このカテゴリーで使用されるマシンはワンメイクの鋼管スペースフレームをベースにカーボン補強材を組み合わせた高剛性シャシーを安価な価格で製造する代わり、制御系はロガー類を含め電子制御デバイスを一部容認するなど独自のもの。
約500馬力を発生するダッジ製の5.7リッターV8エンジンにXトラック製の6速ギヤボックスを組み合わせている。
FRPで架装されるボディは、昨年までプジョー407、シボレー・マリブの2車種が参戦していたが、今季からシボレーの単一車種に。ドアは上方跳ね上げ式のシザーズドアを採用する。
さらに新機軸として、オーバーライド・ボタン使用時にはコースサイドやTV視聴者など、ファンに作動を知らせるLEDランプをルーフ上に設置する『LEDプッシュ』システムを導入。サーキットにより、使用上限回数も変更して運用される。
また、レースは2ヒート制となりレース2はリバースグリッドを採用。予選も3ヒートに変更されるなど、LEDプッシュの効能をより高めるシステムに変更されている。
■バリチェロにリカルド・ゾンタ。名手が続々参戦
カレンダーは全12戦となり、そのほとんどをブラジル国内で開催するが、今季は10年ぶりにアルゼンチン・ブエノスアイレス戦が復活。
舞台はスーパーTC2000が開幕戦を行ったオスカー・ファン・ガルベスのトラックで、10月のストックカー・ブラジル開催時には同シリーズとの併催が予定されている。
そして注目のドライバーには南米ブラジルのスタードライバーが揃う。
F1ではミハエル・シューマッハーのチームメイトとして長年フェラーリなどをドライブし、当時の最多出走記録なども打ち立てたルーベンス・バリチェロが、今季もフルタイム・レーシングから参戦。
F1引退後にインディカーを経て参戦し、シリーズ2年目となる14年にはドライバーズタイトルも獲得。16年シーズンもランキング2位を記録するなど、華やかな戦績を残している。
同チームのサテライトには、今季からシリーズ唯一の女性ドライバーであるビア・フィゲレイドが加入。参戦4年目となる彼女は「ルーベンスから多くのことを学びたい」と意欲をみせる。
また、そのほかのF1経験者として、1年ぶりにシリーズに復帰したプラティ・ドナドッツィ・チームにアントニオ・ピッツォニアが加入。「このチームはシリーズ運営側とも密接な関係を築いており、技術的な分野でも組織運営の分野でも、強力なチームとして機能するだろう」と、期待のコメントを寄せる。
そしてもうひとり、シリーズのトップチームであるシェル・レーシングのワークスカーをドライブするのが、BARなどで活躍したリカルド・ゾンタ。昨年に引き続き、名手アティラ・アブレウとともにシェルVパワー・カラーのマシンを走らせる。
そのほか、昨年王者のフェリペ・フラーガ、15年王者のマルコス・ゴメスが所属するシムド・レーシングも体制を継続。昨年までレッドブル・サポートを受けていたダニエル・セラや、同じくレッドブル支援を受け、2000年代には5度のドライバーズ・タイトルを獲得しているレジェンド、カカ・ブエノなど強力なドライバー陣が勝負を繰り広げる。