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今宮純によるF1オーストラリアGPドライバー採点:アロンソのブロックは名人芸の極致

2017年03月31日 11:41  AUTOSPORT web

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F1オーストラリアGP フェルナンド・アロンソとエステバン・オコンのバトル
F1ジャーナリストの今宮純氏が独自の視点でドライバーを採点。週末を通して、20人のドライバーから「ベスト・イレブン」を選出。予選やレースの結果だけにとらわれず、3日間のパドックでの振る舞い、そしてコース上での走りを重視して評価する。 

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☆ ストフェル・バンドーン
 レースというよりも実戦テストだった。2周遅れの55周、マクラーレンが初めて300km走りきれた。予選セクター速度すべて最下位、昨年のスーパーフォーミュラとの違いをどう感じたか。第2スティントをソフトで最長46周、その43周目に自己ベストタイム。タイヤを含め様々なデータを収集、ショート・シフトしながらいたわる彼の走りをOBのジェンソン・バトンはどこでどう見ただろう。

☆☆ ロマン・グロージャン
 フェラーリのパワーユニットユーザー・チーム、堂々の予選トップ6。グロージャン自身のスピードと、フェラーリ供給コンポーネンツ(サスペンション他)の完成度にあらためて驚く。このポテンシャルを維持しつつ信頼性を高めること、それが2年目ハースのテーマ。中間チーム・バトルを熱くするグロージャン、ぎりぎりブレーキングが光る。

☆☆ アントニオ・ジョヴィナッツィ
 土曜朝、目覚めたらデビュー戦。心の準備もなくパスカル・ウェーレインのシートに乗り込むことに。ザウバーはこんな事態もあろうかと合同テスト1回目に彼を2日間起用、約700km走らせていた。FP3に18周しただけで予選Q1、マーカス・エリクソンに0.183秒差の16位、そして決勝12位、ルーキー勢では“2位”。久々に登場したイタリアのホープ、フェラーリの国に必要な若いタレントに成長するか。

☆☆ エステバン・オコン
 昨年マノー9戦すべて完走、ミスが少ない新人をフォース・インディアがスカウトしたのはよく分かる。初陣2日目には初コースのドライビング・リズムをつかみ、セルジオ・ペレスのタイムに接近。無難なスタート後、30周以上「アロンソ・レーシングスクール」に身を置き、終盤1コーナーでパスして卒業。合格点の1ポイント、移籍初戦をしっかり決めた。


☆☆☆ バルテリ・ボッタス
 バルセロナテストではウルトラソフトより硬めのスーパーソフトでベストタイム。W08のアンダーステア傾向を感じとり初戦で少しずつセットアップ、ルイス・ハミルトンとのタイム差を削っていった。後輪タイヤを十分にケア、1.275秒差に迫る3位、56周目にハミルトンを上回る自己ベストタイム、この収穫はとても大きい。

☆☆☆ ルイス・ハミルトン
 アルバートパーク・セクター1は彼のセクターだ。4年連続6回PPの秘訣は1&3コーナーのブレーキングにあり(!)。だがそれゆえにレース序盤から後輪が過熱、明らかにスライド・リアクションが起きていた。首位走行クリーンエアなのに17周しかウルトラソフトが持たなかった事実、予選重視思考を担当エンジニアとともに修正する必要がある。


☆☆☆ ダニール・クビアト
 ナイーブなロシア人の反射神経は抜群、それがセクター2&3で見てとれた。ウルトラソフトで34周、ハミルトンの2倍をカバー。ピットストップのたびにルノーPUにニューマチックエア補充、そのロスがなければ7位は確実、ウイリアムズのフェリペ・マッサを脅かしただろう(彼は過去2年スタートできず、3年ぶりの開幕レース)。

☆☆☆☆ フェリペ・マッサ
 新規定マシンにフィットしたベテランのマッサ。プッシュできるタイヤに変わり、イケイケ走法が再び可能に。49日間の引退を撤回後、バルセロナテストからよみがえった。標的を直近グリッドのグロージャンに絞り、たちまち抜き孤独な6位レースをまっとう。お坊ちゃまのランス・ストロールには今のところ得点能力は見込めず、かつてのミハエル・シューマッハーのようにエースとしてチームに頼られている。それに応えた251戦目――。




☆☆☆☆ マックス・フェルスタッペン
 金曜FP2に12コーナー出口で激しくコースオフ。高速シケインのエントリーで瞬間アンダーステアが出、それでもプッシュしたままダートへ(危機回避力がMAXレベル)。今年のレッドブルRB13は極めてナーバス、テストでダニエル・リカルドがスピン、予選でもまた。2強の間には明らかなタイム差があるが、シビアなハンドリング挙動を対策するのが急務。4位でまとめたレース展開、ハミルトンを抑えてセバスチャン・ベッテル勝利をアシスト、「ゲームメーカー」に☆四つ。

☆☆☆☆ フェルナンド・アロンソ
 耐えがたきを耐えて忍びがたきを忍ぶ、その表情は哲学者のよう。終盤まで10位を堅持したレースは緻密で精確、オコンに後方乱流を浴びせながら絶妙なブロックラインを取り、名人芸の極致を見させてもらった。だがオコンとヒュルケンベルグに並ばれると1コーナーで譲った。切られたら身を引く――「武士の覚悟」を感じた。

☆☆☆☆☆ セバスチャン・ベッテル
 スタートから100%以上の集中力。首位ハミルトンからの乱流によってヘルメットがグラグラ揺れても背後で追走。彼ら二人のバトルは今まであまりなかっただけに、新時代シーズンを告げるシーンとなった。セクター1はハミルトン、セクター3はベッテル(予選も決勝も最速)、『銀VS真紅』の対決がここから始まった。