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タクシー強盗犯、運転手から説教+食事おごられて改心、自首…刑罰は軽くなる?

2017年03月30日 10:23  弁護士ドットコム

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乗車したタクシーで金を奪おうとしたものの、運転手に説教されて、その後に自首した20代男性が3月20日、強盗未遂の疑いで兵庫県警に逮捕された。


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報道によると、男性は3月19日、兵庫県姫路市の路上に停車したタクシー内で、60代の男性運転手の髪の毛をつかみ、鋭利な金属を突きつけて「金を出せ」と脅迫し、金を奪おうとした疑いが持たれている。


だが、男性は運転手から「若いんやから、こんなことしたらあかん」と戒められたうえ、近くのファミレスで食事をおごってもらった。男性は改心して、姫路市内の交番に自首したという。今回のような自首は、刑罰にどんな影響をあたえるのだろうか。坂野真一弁護士に聞いた。


●「刑を軽くしてもよい」という効果を持つ

「ひどい目に遭いながらも、強盗犯を説得し、自首にまで導いたタクシードライバーの方は、きっと真剣に若者を思いやってあげたのでしょう。だからこそ、若者も、その気持ちに応えて改心し、自首する気持ちになったのだと思います。


仮に、この若者が起訴されて、刑罰を受けたとしても、もう二度と同じことはしないだろうと私は思います。若者は、タクシードライバーの方に未来を救ってもらったのだと思います」


坂野弁護士はこう切り出した。自首には、どんな影響があるのだろうか。


「まず、自首とは、捜査機関に犯罪が発覚する前に、罪を犯した人が、自発的に犯罪事実を申告して、訴追を含む処分を求めることをいいます。


自首の効果については、特に刑の免除が定められている刑法80条(内乱予備・陰謀、幇助等)、刑法93条但書(私戦予備・陰謀)などを除いて、『任意的な刑の減軽事由』とされています(刑法42条1項)。なお、刑事訴訟法上の定めでは、自首は、捜査のきっかけに過ぎません(刑事訴訟法245条)。


『任意的な刑の減軽事由』とは、簡単にいえば、裁判官が自首した人に刑罰を科すとき、その刑を軽くしてもよいという効果を持つことです。もちろん軽くしなくてはならない、というわけではないので、裁判官が判決で刑を軽くしなくてもまったく構いません」


●自首した場合のほうが起訴猶予を受ける可能性が高い

自首をすれば、なぜ刑を軽くしてもよいのだろうか。


「(1)犯人が反省して強く非難する必要性が減少すること、(2)犯罪捜査がやりやすくなることなどの政策的な理由が挙げられますが、現行法上、自首の要件として犯人の悔悟・反省が規定されていないことから、主な理由は(2)であると考えられています。


とはいえ、自分で犯した犯罪がばれていないのに、警察に自ら処罰してほしいと出頭するわけですから、自首は、犯人の情状面の評価にはもちろん影響を与えうる行為です。


そして、検察官には、起訴するかどうかの裁量権があります。犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重および情状ならびに犯罪後の情況によって、訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができます(刑事訴訟法248条)。


まだ犯罪が発覚しておらず、逃げ切れるかもしれないのに自ら犯罪をしたことを認めて処罰してほしいと出頭してくるわけですから、自首は、少なくとも、性格面、情状面、犯罪後の情況には当然影響を与えうる行為です。


したがって、ほかの条件が同じ場合、自首した場合と自首せずに捕まった場合を比較すれば、自首した場合のほうが当然、起訴猶予を受ける可能性が高くなると思われます。


●裁判結果(量刑)にも有利になる可能性

また、裁判官から見ても、処断すべき刑の範囲内で、具体的に宣告刑を決定する際には、犯人の年齢、性格、経歴および環境、犯罪の動機、方法、結果および社会的影響、犯罪後における犯人の態度その他の事情を考慮するとされています。自首の事実は、前述の通り法定減軽の任意的減軽事由であるほか、少なくとも、犯人の性格、犯罪後における犯人の態度その他の事情にも、影響する事実と考えてよいでしょう。


したがって、自首は、法文上、任意的減免と規定されているのですが、ほかの条件が同じ場合、自首した場合のほうが当然、量刑面で有利である(軽くなる可能性が高い)と考えられます」


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
坂野 真一(さかの・しんいち)弁護士
ウィン綜合法律事務所 代表弁護士。京都大学法学部卒。関西学院大学、同大学院法学研究科非常勤講師。著書(共著)「判例法理・経営判断原則(中央経済社)」。近時は火災保険金未払事件にも注力。
事務所名:ウィン綜合法律事務所
事務所URL:http://www.win-law.jp/