2017年03月29日 10:24 弁護士ドットコム
イケメンからされると、キュンとしてしまう女性もいるという「頭ポンポン」。弁護士ドットコムの法律相談コーナーには、部下の女性に「頭ポンポン」をしたことで、セクハラ問題に発展してしまった商社マンからの質問が寄せられました。
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この男性は、仕事に失敗した部下を慰めるため、頭を手でポンポンと撫でたところ、匿名で社内のコンプライアンス部署に訴えがあり、会社から聴取を受けることになってしまったそうです。男性は、その女性部下からプライベートで食事に誘われたこともあり、嫌悪感を持たれていると思わなかったそうです。
「頭ポンポン」をしたことで懲戒処分を受ける可能性はあるのでしょうか。また、上司が部下の肩を叩くなどの行為もよく見受けられますが、どんな場合にセクハラと判断されるのでしょうか。森田梨沙弁護士に聞きました。
「『セクハラ』という言葉は普段耳にすることも多いですが、その概念は多義的で、刑事罰が科されるような違法性の強いものから、モラル違反としてのセクハラまで、様々です。
ご質問にあるような『懲戒処分を受けるかどうか』という観点では、男女雇用機会均等法11条の定めが参考になります。この条文では、事業主が防止措置を講ずべきセクハラとして、以下の2種類を挙げています。
(1)職場において行われる性的な言動に対するその労働者の対応により、当該労働者がその労働条件につき不利益を受ける場合(対価型セクハラ)
(2)性的な言動により当該労働者の就業環境が害される場合(環境型セクハラ)」
今回のケースはどのように考えられるのか。
「ご質問のケースは、『環境型セクハラ』に該当する可能性があります。一般的には、意に反する身体的接触によって、労働者が強い精神的苦痛を被る場合には、身体接触が1回だけであっても、就業環境が害されていると判断される可能性があります。
他方、行為の継続性または繰り返しが判断の要件となる場合でも、『明確に抗議しているにもかかわらず放置された状態』または『心身に重大な影響を受けていることが明らかな場合』には、就業環境が害されていると判断されるでしょう。
なお、性的な言動や行為に対してどう感じるかは男女間で差異があるため、被害を受けた労働者が女性である場合には『平均的な女性労働者の感じ方』を基準とすることが適切だと考えられています」
女性部下への「頭ポンポン」は、就業環境を害する行為と言えるのか。
「女性部下の頭をポンポンしたことについて、『平均的な女性労働者の感じ方』を基準に判断した場合、1回で強い精神的苦痛を被るほどの身体的接触であるとまでは言い難いと思われます。
ただ、女性部下から明確に抗議されたにもかかわらず繰り返したような場合には、懲戒処分を受ける可能性が出てくると言えるでしょう。
なお、質問者は以前、女性部下から食事に誘われたことがあるとのことですが、その事実をもって女性部下が『頭ポンポン』に合意していたとは評価できません。また、就業環境を害するかどうかは、あくまで『平均的な女性労働者の感じ方』を基準に判断するため、男性上司の主観で『この程度なら大丈夫だ』と判断することは誤りです。
上司が部下の肩をたたく行為についても判断基準は同様です。
いずれにしろ、職場における不必要な身体への接触はトラブルの元です。セクハラは男女の認識の違いにより発生している面があることを十分理解した上で、気を付けて対応する必要があります」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
森田 梨沙(もりた・りさ)弁護士
中小企業法務、労働案件、一般民事(交通事故、不動産、離婚事件他)など幅広く手掛ける。事案の早期解決及び予防法務の観点から、依頼者と密なコミュニケーションをとることを常に心がけている。趣味はゴルフと漫画。
事務所名:共進総合法律事務所
事務所URL:http://www.kyoshin-law.com/index.html