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「服にモデルを合わせるのではなく、モデルに服を合わせる」ショーの新潮流は個性を尊重

2017年03月28日 15:14  Fashionsnap.com

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「ダブレット」2017-18年秋冬コレクション Image by: FASHIONSNAP
かつてのファッションショーは、スーパーモデルを筆頭に美形で長身のモデルたちがランウェイを飾っていたが、近年ではモデルの個性を重視する傾向が強まっている。ストリートキャスティングで一般人を起用したりアマチュアモデルの起用も珍しくなくなり、服にモデルを合わせるのではなくモデルに服を合わせる方法で、様々なスタイリングを提案している。東京のファッションウィークでも、「ダブレット(doublet)」「ターク(TAAKK)」「サルバム(sulvam)」といったブランドが、多様性のあるショーを繰り広げた。

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 初のショーを開催した「ダブレット」は、「未成年」をキーワードに2017-18年秋冬コレクションを制作。90年代のレイブの雰囲気を再現した演出で、一晩中踊り明かして朝を迎えたようなウェットなメイクが施されたモデルが、個性をそのままにランウェイを歩いた。年齢や国籍、性別、体型もバラバラの男女27人中15人はストリート等でキャスティングした素人モデルで、中にはボディビルダーやドラァグクイーン、ストリートフォトグラファーなどの姿も。「各モデルのリアルさ、アイデンティティを表現して、ダサさの中に美しさが共存している」(井野)というイメージで、モデルの性格や趣味などのパーソナリティーを尊重しスタイリングされた。短丈のTシャツからオーバーサイズのスラックスを吊るしたスタイルや、片足がないパンツなど、パンチの効いたデザインとモデルの個性が調和。90年代の有名企業ロゴと3大ファッションウィーク都市の地名を掛け合わせてアレンジしたロゴや、「KNIT」「UNDERWEAR」「XXL SIZE which has shrunk by tumble dry」等のメッセージ、崩れかけた文字など、ウィットに富んだモチーフが目を引きつつ勢いのあるショーとなった。
 「ボーダーレス」をテーマに、渋谷ヒカリエ9階のホールをつなぐ通路をストリートのような立ち見のランウェイにした「ターク」も、多種多様のモデルを起用。「ルックブックではブランドの世界観を表現するが、ショーでは色々な垣根を越えてモデルの世界観に服を合わせた」(デザイナー森川)。また、イタリアのピッティ・イマージネ・ウオモ(Pitti Imagine Uomo)で2017-18年秋冬コレクションを発表した「サルバム」は、「服は個性を生かす。自由に着てもらいたい」(デザイナー藤田)という思いからプロ・アマチュアを問わずモデルを起用し、異なるスタイリングで見せた。
 モデルの多様化は東京だけではなく、世界的にメインストリームになりつつある。トレンドを牽引する一人、デムナ・ヴァザリア(Demna Gvasalia)が手掛ける「ヴェトモン(VETEMENTS)」が1月にパリで発表した2017-18年秋冬コレクションでは、様々な国籍や年齢、体型のモデルが起用され、MILANESA(ミラノ風)、TOURIST(観光客)、PENSIONER(年金生活者)といったステレオタイプを敢えて強調するようなコレクションが発表された。クリステル・コーシェ(Christelle Kocher)が手掛ける「コーシェ(KOCHÉ)」や「ドルチェ&ガッバーナ(Dolce&Gabbana)」などのショーでも、個性が際立っている。
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