2017年03月26日 10:53 弁護士ドットコム
恋人に合鍵を渡しても、勝手に侵入されるのは嫌だという人も多いのではないでしょうか。インターネット上のQ&Aサイトにも、合鍵で彼氏の自宅に入り、ご飯を作ったり、家事をしてあげたりしたら、彼氏が怒ってしまった、というエピソードがありました。
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夜になって彼氏が帰宅すると、投稿者は自慢げに、ご飯を作り、掃除と洗濯をしたことを報告しました。きっと褒めてもらえる、という期待とは裏腹に、彼氏はご立腹。「勝手に人ん家入って何してんの?」と怒られてしまったそうです。
投稿者は彼氏に合鍵を渡された際、「来る時は言ってね」と言われていました。気心の知れた間柄とはいえ、恋人の家に無断で入ることは、法的に問題があるのでしょうか。渡邊幹仁弁護士に聞きました。
本件では、「住居侵入罪」(刑法130条前段)が成立するかが問題になります。結論から言えば、本件では、「住居侵入罪」が成立するとされる可能性は低いと考えられます。
住居侵入罪が成立するためには、「侵入」すなわち管理権者の意思に反した立入りがあることが必要です。管理権者とはこの場合は彼氏です。彼氏の意思に反しているかは、彼氏がその場にいない本件では、「全体の事情から『彼氏は彼女が自宅に入ることを許諾していた』とみることができるか」がポイントです。
確かに本件では、事前に彼氏から明確に許可をとったわけではありません。しかし、2人は恋人関係にあり、彼氏はもともと彼女に合鍵を渡しています。合鍵は通常、自分が不在の場合にも鍵を開けて家に入ることができるようにする目的で渡すものです。
したがって、彼氏は彼女に対して、自分が不在の際にも自宅に入ることを許諾していたと見ることができます。(少なくとも、恋人が行うことが通常予想されるような「ご飯を作り、掃除と洗濯をする」という目的のために自宅に入ることは許諾されていたと見ることができます。)
確かに彼氏は「来る時は言ってね」と言っていた事情はありますが、これのみによって「その都度、事前に明確な許諾を得なければ、家に入ることが禁止されていた」とまで見ることは難しいでしょう。
また今回のケースとは異なりますが、合鍵を勝手に作られていた場合に、罪に問われる可能性があるのかどうかも検討します。
合鍵を作ること自体は、倫理的にはともかく、基本的には該当する犯罪がないため罪に問われることはないと考えられます(ただし、目的によっては犯罪が成立する場合もあります。例えば、その合鍵で他人の家に侵入し強盗するためであったとすれば「強盗予備罪」が成立する可能性があります)。
しかし、当然ですが、その合鍵を使って、勝手に彼氏の家に入れば、仮にご飯を作り、掃除・洗濯をするという目的であったとしても、彼氏の許諾なく侵入したものとして「住居侵入罪」が成立する可能性があると言えるでしょう。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
渡邊 幹仁(わたなべ・みきひと)弁護士
刑事事件や犯罪被害のほか、離婚・親子関係などの家事事件、男女問題、不法行為に関する事件を数多く取り扱っている。
事務所名:新潟菜の花法律事務所
事務所URL:http://niigata-nanohana.com/index.html