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「捨てたい妻VS集めたい夫」夫のコレクションを勝手に処分する妻…法的問題は?

2017年03月25日 08:33  弁護士ドットコム

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「捨てたい妻VS集めたい夫」ーー。情報番組「とくダネ!」(フジテレビ系)で2月下旬、そんなテーマが取り上げられ、話題となった。


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番組では、ブリキのおもちゃ、記念硬貨、鉄道模型、切手といった、夫が長年かけて集めたコレクションを、妻がリサイクルショップなどで処分してしまう様子を紹介。ツイッター上では、「おそろしい」「ひどすぎる」といった同情の声が多くあがっていた。


夫婦とはいえ、夫のコレクションを勝手に妻が捨てることについて、法的問題はないのか。たとえば、正当な離婚理由になる可能性はあるのか。能登豊和弁護士に聞いた。


●「夫の個性の否定」

「夫のコレクションを妻が勝手に捨てる行為は、一般的には法的問題があるといわざるを得ません」


能登弁護士はこのように指摘する。どのような問題があるのか。


「まず、離婚理由ですが、民法770条5号の『その他婚姻を継続し難い重大な事由』に該当する可能性が高いといえます。


すなわち、コレクションを無断で捨てる行為は、そのような行為をしないであろうという夫の信頼を裏切る行為であり、夫婦共同生活の基礎となる信頼関係を破壊することになります。


また、コレクションに熱中するという側面も、夫の個性の不可欠の一部ですから、コレクションを捨てる行為は、夫の個性の否定として、強い性格の不一致の現れとみなされます」


●「夫側も、妻がコレクションを受け入れやすくする配慮を」

金銭的な賠償義務が生じる可能性はあるのか。


「妻に賠償義務が生じる可能性は高いでしょう。


すなわち、コレクションは夫の財産ですので、これを無断で捨てることは財産権の侵害に他ならず、妻は夫が被った損害を賠償する義務を負います。


また、大切なコレクションが失われることで夫が強い精神的苦痛を被ったならば、妻は慰謝料を支払うべき義務を負います。


なお、窃盗や横領などの犯罪ではないかと考える人もいるかもしれませんが、配偶者の窃盗や横領は免除の対象です(刑法244条1項、255条)。


妻側としては、自分から見て価値のないものでも、夫が大事にしているならばこれを尊重し、どうしても捨てる必要がある場合は、夫と話し合い、了解を得てから捨てるようにしましょう。


他方、夫側も、妻が嫌がるような形でのコレクションの収集等を慎む等、妻がコレクションを受け入れやすくする配慮を行うべきでしょう」



(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
能登 豊和(のと・とよかず)弁護士
2010年12月弁護士登録。勤務弁護士を経て2013年7月に地元南千住で開業。トラブル解決は初動で決まるとの考えの下、休日夜間も対応の無料相談を行いつつ、家事事件・債務整理を中心とした活動をしている。
事務所名:南千住法律事務所
事務所URL:http://www.minamisenju-law.jp/