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今年も濃密度100%!? スーパーGT岡山公式テストで見えてきたGT300開幕戦力図

2017年03月23日 23:01  AUTOSPORT web

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今季も豊富な車種バラエティと濃密なバトルが展開されそうなGT300。GT500にはない楽しみがそこにはあある。
いよいよ開幕が近づいてきた2017年のスーパーGT。毎年激しい戦いが展開されているGT300クラスは、今季も新たな顔ぶれを迎えつつ、非常に濃密な戦いが繰り広げられそうだ。3月18~19日に行われた岡山国際サーキットでの公式テストでは、開幕戦の片鱗が見えた。

■メニューはバラバラ。タイムは接近
3/18 セッション1=12台
3/18 セッション2=11台
3/19 セッション3=9台
3/19 セッション4=15台

 この数字は、3月18~19日に行われたスーパーGT岡山公式テストの各セッションでの、GT300クラスのトップから1秒以内に入ったマシンの台数。上位はかなりの僅差なのだ。

 各チームとも、2日間4セッションのなかで試していたことはバラバラだが、その割にタイム差はかなり近い。いったい今シーズンのGT300はどうなるのか。岡山テスト後、有力チームのエンジニアたちに今季の予想を聞いた。

■「みんなまだ実力を見せていないはず」
 この2日間のタイムを見ると、上位陣はやはり2016年同様GT300マザーシャシー勢が速い様子だ。特に16年チャンピオンのVivaC 86 MCは、走り出しのセッション1こそミッショントラブルに見舞われたが、それ以外はすべてトップ2につけている。

 一方、JAF-GT勢のスバルBRZ GT300やTOYOTA PRIUS apr GT勢も上位にはつけていたが、そこまで圧倒的かというとそれほどではなかった。GT3勢ではB-MAX NDDP GT-Rが2セッションでトップタイムをマークしているが、これは「ちゃんとアタックシミュレーションしたからだと思う」という分析がある。逆に、アタックしていないチームもあるだろう……という見方だ。

 では多くのチーム、車種はどんな状況でテストをしていたのか。今回の岡山公式テストは「たぶんこのまま採用されるだろう、暫定の性能調整」で各チーム走っていたが、各チーム牽制をしあいながら走っていたのではないか……と見るエンジニアも多い。今後の最終的な性能調整を見据えてのものか。

「みんなまだ実力を見せてないと思う。燃料も積んでると思うしね。去年のコースレコードが1分25秒5なのに、路面改修された今回のベストタイムが1分25秒8なワケはないと思う。本番は1分24秒台はいくでしょう」という声も。

 では、差し当たって岡山での開幕戦で速そうなのはどの車種なのか。多くのエンジニアが挙げていたのは、GT300マザーシャシー勢を含むJAF-GT。「もてぎと岡山は軽いクルマが有利」「JAF-GTが有利なのか、GT3とどっこいなのかな。でもJAF-GTは軽い分、戦い方に幅がある」という意見が多かった。

 GT3勢では、注目されていたのがアウディR8 LMS、そしてポルシェ911 GT3 R、メルセデスベンツAMG GT3。特にポルシェはD'station Porscheが非常にユーズドでのペースが非常に良く、GULF NAC PORSCHE 911もタイムが出ていた。予選上位に入った場合決勝では好位置に来そう。RRレイアウトにより、コース2箇所にあるギャップも影響が少なそうという声も。逆に、今季ニューマシンとなったレクサスRC F GT3勢は、タイムの面ではまだその実力が見えづらく、多くのライバルが警戒している。

■精度を高めたチャンピオン
 今回、速さをみせた2016年チャンピオンのVivaC 86 MCは、今シーズンもやはり速さを発揮しそう。少なくとも得意とする岡山では、優勝候補の筆頭にあげられるだろう。ちなみに、今回第3ドライバーに登録されていた土屋武士だが、最終的には一切クルマには乗らず、エンジニアリングに徹した。

 そんなVivaC 86 MCだが、今シーズンに向けた改良はサイドステップの部分程度(ちなみに、つちやエンジニアリングらしくアルミ製)。しかし、土屋によれば「去年から何が違うのかというと、『精度を上げた』」という。

「ほとんど変わってはないけど、ダンパーやバンプラバーひとつ、取りつけのブラケットのカラーひとつだったりと、ビシッと出るように測定した。やり始めたら凝り過ぎちゃって(笑)。クルマのことを勉強しながら、自分でやってる」と土屋。

「やればやるほどいろんなものが見えてくる。クルマはもうできあがっていると思っていたけど、このベースにもっと先があると思って見ていった。ちょっとずつやるとすべて数字でも反応してくれたので、すごく面白い」

 その精度向上がさっそくテストでは発揮されたかたちだが、今季は新たに土屋に代わってステアリングを握る山下健太のパフォーマンスが結果に直結しそうだ。土屋も信頼を置くドライバーで、今季はスーパーフォーミュラ参戦も決まるなど実力は折り紙付き。「500の抜かせ方にはけっこう自信があります」というが、実際のレースではどうなるだろうか?

■最終的に問われるのは、“総合力”
 差し当たって岡山でのGT300クラスの“現況”はこれまで述べたとおりだが、3月25~26日に富士スピードウェイで行われる公式テストでは、また違ったコースのキャラクターでの戦力差も見えはじめるだろう。

 では今シーズン、GT300はいったいどんなシーズンになるのか。「読みづらい。今年はまさにカオスじゃないでしょうか」という声もある。昨年は多くのGT3カーが1年目で、車種によってはそのキャラクターを把握するのにシーズン途中までかかった部分もあるが、今季はほとんどが2年目。性能調整がうまくいけば、誰が勝つか分からない大混戦の可能性もある。

「最終的にはチーム力でしょう。レースでチェッカーを受けるときに何番だったのかは、作戦だったり何かズレたときの修正力だったりが大きく左右すると思います」とはGT3使用チームの監督だ。

 GT300は、ドライバーの“腕”やエンジニアリング力、タイヤをいかに使うかといった基本的なことを、高いレベルで着実に遂行したチームが勝利を得る。言うは易く、行うは難し。今シーズンはそれが際立つ年になるのかもしれない。