2020年の東京オリンピックに向け、町では様々な変化が起きている。案内用図記号(ピクトグラム)もその1つだ。外国人向けに分かりやすい表記にするため、一部のマークを国際規格に合わせるか否かが議論されていたが、3月22日、経産省は最終案を発表した。
温泉マーク発祥の地、磯部温泉組合長は「とりあえずは肯定的に受け止める」
案内用図記号とは、視覚的に場所の用途が分かるよう表した記号のことで、公共機関などで使用されている。現在使用されている案内用図記号は日本独自の規格「JIS規格」に則っているが、オリンピックでの外国人観光客増加に合わせ、国際規格の「ISO規格」への変更が話し合われていた。
特に議論になっていたのが温泉マークの変更だ。従来の図は、湯船から湯気が立ち上がる様を、1本の曲線と3本の波線で表しており、350年以上前から使用されてきた。しかし、NHKの行った調査で、外国人の視認性の低さが判明する。「焼肉」「コーヒーか紅茶のお店」などに誤解されやすく、温泉とは認識してもらえなかったのだ。
ISO規格の図案は、湯船に3人が浸かっている様子をデフォルメしたものだが、別府温泉や湯布院温泉などの観光地から反対意見が相次いでいた。昨年10月には「日本最古の温泉記号発祥の地」を主張する磯部温泉(群馬県安中市)が、マークの変更を中止する要望書を提出している。
今回は、経産省の実施したアンケートで、温泉マークに限り日本人と外国人で認識に差が生まれると判明したため、JIS規格とISO規格、どちらを表記するか、表示者が選択できることになった。
要望書提出の中心となっていた磯部温泉組合長の高野幸雄さんはこの決定に対し、
「とりあえずは落ち着いたということで安心しています。ただ、併用とはいえ経産省は新しいほうを使って欲しいでしょうし、新図案のほうが増えていくのではないかと気がかりです。場面ごとに、従来の図案と新しい図案を使い分ける線引きをしてくれたほうが嬉しいのですが」
と、心境を語る。
「マークが存続することには肯定的ですが、今後の動向次第では、再度要望書を提出することも視野に入れています」
駐車場やベビールームのマークは2年かけて変更に
他に議論の対象となったのは、駐車場、救護所、乳幼児用設備(ベビールーム)など合計6種。経産省は温泉マークも含めたこれらについて、2月1日から3月3日までの約1か月、パブリックコメントを募っていた。
その結果、「案内所及び情報コーナー」を除く5種で改正原案が採択された。これまでのJIS表記は、今後2年間の移行期間を経て廃止される見通しだ。