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ライバルたちも熱視線。アレックス・パロウは今季の全日本F3の台風の目に!?

2017年03月23日 14:21  AUTOSPORT web

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全日本F3テストに参加したアレックス・パロウ(THREEBOND)。初走行とは思えぬ順応性をみせた
3月7~8日に鈴鹿サーキットで、3月15日に富士スピードウェイで合同テストが行われた全日本F3選手権。今季の顔ぶれもほぼ出揃った2回のテストだが、この走行で大きな驚きをもたらしたのが、ThreeBond Racing with DRAGO CORSEと、スペイン人ドライバーのアレックス・パロウだ。

■ダラーラが推してきた男
「パワーがあるGP3から、ダウンフォースがあるF3に合わせるのは大変だったけど、いいフィーリングだったよ。すべてが新しい感触だったね。鈴鹿の第1セクターは最高だった」。

 鈴鹿サーキットで2日間の走行を終えた後、話をはじめたパロウの立ち振る舞いは、驚くほど落ちついている。まだ弱冠19歳だが、いい意味でとてもそうは見えない。

 パロウは1997年スペイン生まれ。カートを経て2014年にユーロフォーミュラ・オープンに参戦し、同年にはフォーテックからマカオGPに挑戦。ここで初めてF3を体験している。2015~16年はGP3に参戦し、15年には1勝を挙げた。2年ともカンポスからの参戦だったが、チームを率いるエイドリアン・カンポスは「フェルナンド・アロンソの能力をもつ男」だとパロウを高く評価していた。

 ただ、2年ともランキングではシングルフィニッシュを果たせず、2017年はテストドライバーを務める予定だったという。しかし、全日本F3復帰を決めたスリーボンドがヨーロッパでドライバーを探していた際、ダラーラから推薦されたのがパロウだ。

「今年はテストドライバーをするはずだったんだけど、ダラーラのヨス・クラウスというエンジニアが僕を推薦してくれたんだ」とパロウは語る。

■道上スーパーバイザーも高く評価
 これまでヨーロッパでTスポーツとともに戦っていたスリーボンドは、今季TB14F3エンジンとともに全日本F3に復帰するにあたり、2016年まででスーパーGT/スーパーフォーミュラの活動を休止したDRAGO CORSEと組み、ThreeBond Racing with DRAGO CORSEとして参戦することになった。

「今回は縁だと思いますが、スリーボンドさんが復帰されるということで、DRAGO CORSEとして一緒にやらせて欲しいと頼みました。いきなり日本のレースシーンからDRAGO CORSEの名前をなくしてしまうのも寂しかった」とチームでスーパーバイザーという役柄を務める道上は語る。

 そんな道上も、WTCC開幕に向けたテストの合間を縫って、鈴鹿でパロウの走りを見守った。「ドライバーとしては非常にいい。まわりに対しても刺激になると思いますね。初めて来てこれだけ速いのは、やっぱりすごい。(スーパーフォーミュラの)ピエール・ガスリーもそうですけど、こういうヤツがヨーロッパにはいっぱいいるんでしょう」と道上もパロウの速さに目を見張った。

「今回、スリーボンドさんとドライバーについていろいろ話をしてきたなかで、日本人の候補もいましたが、今までスリーボンドさんはヨーロッパで戦ってきたので、最終的に彼に絞り込みました。ウチの弟がレーシングカートの仕事をしているので、ジュニア時代の彼がカートで速かったという情報も聞いていましたし、(GP3でパロウと戦った)福住仁嶺からも速いといわれました」

■ライバルたちもその速さを警戒
 鈴鹿でパロウは走行1日目でコースを習熟し、2日目はアタックのタイミングもあったにせよ、最終的に午前、午後ともトップタイム。さらに3月15日の富士でも、14日のスポーツ走行枠でコースを覚え、午前の走行1回目ではトップタイムをマークした。どちらも初体験のコースでのタイムアップの速さは、道上の指摘どおり驚異的だ。

 道上によれば、昨年までヨーロッパでTスポーツが使い、マカオで山下健太がドライブしていたそのもののシャシーは「モノコックのクラックにはじまり、ミッションケースもひどい状態だった」という。そのシャシーをチームがしっかりと修復し、マカオでもパフォーマンスを発揮したスリーボンド東名エンジンが組み合わされ、マシンは非常に良好な状態だという。そしてそこにパロウのパフォーマンスが加わり、侮れぬ速さを発揮しているのだ。

 このパロウの存在は、さっそく2回のテストでライバルたちにも鮮烈な影響を与えた様子。多くの日本人ドライバーたちから「あの選手はどんなドライバーなんですか?」と“逆取材”を受けたほどだ。今季タイトルが至上命題となっているドライバーたちにとっては、パロウはまさに突然出てきた“目の上のたんこぶ”。ThreeBond Racing with DRAGO CORSEの狙いどおり、日本の若手にとっていい刺激になるだろう。

「全日本F3はレベルも高く、いいシリーズだ。それにここで活躍できれば、スーパーフォーミュラやスーパーGTといったシリーズに繋げることができるからね」

 さっそく日本になじみ、「お寿司が大好物」だというパロウ。驚くべき順応性をみせる19歳は、今季の全日本F3の台風の目になるのは間違いなさそうだ。