変革のシーズン、957戦目オーストラリアGPから新・戦闘開始だ。なにもかもがこれほど新しくなった年も珍しく、『F1/2017』=新時代の起点として記憶されることになるだろう。
11から精鋭10チームへ、ディフェンディング・チャンピオンはもういない(94年以来だ)。旧王が4人、優勝経験者は7人、14カ国から20人。まったくのルーキーが1人、初フル参戦は2人、興味深いのは7チームがペアを変えたことだ。電撃移籍や急きょ復活がオフの話題になり、真新しいチームメイト関係ができあがった。昨年からそのまま同じなのはレッドブル、フェラーリ、トロロッソだけ、2冠王メルセデスが5年ぶりにラインアップを変えて臨む。
わかりやすいビジュアルの変化もある。ニューカラーになったピンクのフォース・インディア、オレンジのマクラーレン、ブルーのトロロッソ、ダークグレイのハース、ブルー・ゴールドのザウバー。半数の中間5チームがそろって変色したのも稀なこと、お気に入りはどこですか? ちょっとがっかりのカラーリングはどこでしょう……?
マッチョで厳めしいスーパーF1的ルックス(外観)が戻ってきた。92年までは車幅215cm、93年から200cmに、98年から昨年まで180cmに。それが20余年を経て2メートルのワイド・マシンに戻り、空力デザイン寸法規制なども緩和された。ダウンフォース25~30%アップ、同時にピレリタイヤも前輪6cm、後輪8cm幅広くされてグリップがアップ。「ラップタイム4~5秒短縮」コンセプトは8日間合同テストで確かに実証された。
昨年テスト・ベストタイム対比で1分22秒765→1分18秒634(いずれもキミ・ライコネン)、実に-4.131秒速くなった。直線スピードは下がったもののコーナー旋回速度が目に見えて速く、ドライバーには5G以上がかかる。アスレティックなスポーツ性がF1に甦ったのだ。
付け加えると車体重量は702Kgから722Kg+タイヤに変更され、近年F1マシンでもっとも重い。この規定重量増加によって、ドライバーはボクサーのような減量を強いられることなく、むしろフィジカル強化策(筋力アップ)に冬の間励んできた。つまり17年レギュレーション大変更はメカニカルだけでなく、ドライバー力を問うフィジカルやメンタルの改革の意味もあるわけだ。全力でプッシュ、コース上で競い合うレーシング・シーンこそ、グランプリの醍醐味だから。
4年目を迎えるパワーユニット(PU)に関して基本レギュレーションの大きな変更はない。トークン制による開発抑制措置が見直され、シーズン中のアップデート自由度は担保された。しかし20戦日程なので年間4基PU制限に1基減らされ、そのアップデート使用投入チャンスが限定されてマイレッジなど信頼性はよりシビアに。
■今宮純が厳選するF1開幕戦の見どころ5点
すでに昨年時点で最大推定値1000馬力に近づいたPUが今季はさらに高まり、4社メーカー新設計ユニットによるパワーウオーズがさらに激化するのは必至だ。ワイドシャシー×エアロ・アップ×ワイドタイヤ×パワフルPU=このハイパフォーマンスをコース上で出し切るのはコクピットのドライバー。やってもらおうではないか。
『メルボルン・アルバートパーク開幕戦5つのキャッチポイント』~準公道サーキットでのオープニングは20回を超える。
●キャッチポイント1:天気予報では週末ドライが保たれそうだが、過去10年で13回も雨がらみセッションに。意外に低温、冷たい雨になりがちなコンディション変化に注意。セーフティカー(SC)導入リスクも高い。
●キャッチポイント2:予選でここでは初めてのウルトラソフトが投入される。テストではスーパーソフトとのタイム差は0.2秒程度だったがどうか。PPタイム15年1分26秒327、16年1分23秒837、今年は大胆予想すると1分19秒台が見えている。ちなみにレコードPPは11年ベッテル1分23秒529、ほぼ間違いなく更新か。
●キャッチポイント3:大幅なスピードアップに備えて主催者はコース安全対策に投資を。とくに1、6、12,14コーナー、5万本ものタイヤバリアなどを設置、昨年フェルナンド・アロンソ大事故があっただけに万全を期す。
●キャッチポイント4:スタート手順の詳細が変わり、よりマニュアル指向になった。昨年PPルイス・ハミルトン失速、そこからフェラーリ1-2ダッシュのドラマが。2mワイドマシンがせめぎあう1コーナーでのサイド・バイ・サイド、そればかりか周回遅れ処理にもスリルが。(08年には1周目に5台がリタイア、完走8台だった)。
●キャッチポイント5:内外で最大関心事はマクラーレン・ホンダ、3年目だがここまではベスト予選11位、決勝11位、予選トップテンも入賞できていない。合同テストで明らかになった大不振、この週末が雨がらみになればと祈ったが25度晴天の予報。3年目が今まで以上の挑戦になるマクラーレン・ホンダ、色も名称も代表も組織もすべてスタッフも変わった名門はプライドを捨て、新チームとして崖底から上る覚悟が必要ではないか。