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【F1新車分析】ハースVF-17:攻めたマシン作りで、参戦2年目のシーズンは“ぬかりなし”

2017年03月20日 14:41  AUTOSPORT web

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ハースVF-17は参戦2年目とは思えない攻めたマシン作りをしている。
技術ウォッチャーの世良耕太氏が、2017年のF1新車、ハースVF-17の気になるポイントを解説。参戦2年目とは思えない、オリジナルティを発揮した空力処理が印象的だ。

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 ハースVF-17は、とても参戦2年目の若いチームが送り出すマシンに見えない。トレンドを追いかけている部分もあるが、オリジナリティが発揮されている部分もある。総合的には、とても攻めたマシンとの印象を受ける。

 サイドポンツーンのアンダーカットが大きいのは、斜め後方から見下ろした写真でよくわかる(写真1)。もっとも横方向に出っ張った部位も、規定最大値(1600mm)まで張り出さず、スリムに仕立てている(写真2)。車両ミッド~リヤにかけての絞り込みはレッドブルには敵わないものの、努力した様子が感じとれる(写真3)。

 オリジナリティが発揮されているのは、フロア両サイド部の処理だ。アンダーカットが終わってボディが横方向に張り出したあたりのフロアが一部分割され、フラップ状に処理されている(写真4)。少し前の話になるが、エキゾーストブローイングが現れて2年目の2011年、ロータス・ルノーはテールパイプの出口をフロア前端側に取り回し、横方向に高速の排気を吹き出していた。

 なぜこんな手の込んだことをしたかというと、フロア前端コーナー部は、ダウンフォースを稼ぐホットスポットのひとつだからだ。ハースもそのことを重要視し、フロア・サイド部の処理にひと手間かけたのだろう。

 バージボード~ポッドウイングまわりの処理をあっさり済ませている上位チームがあるなかで、ハースは開幕前の段階から手の込んだ処理を施してきた。コクピット脇のフィン(写真5)はフェラーリと同様で、フロントウイングが跳ね上げた空気を、後方(サイドポンツーン開口部に向かう?)でもう一度使えるよう下向きの流れに切り換える役割を果たしているのだろう。

 サイドポンツーン前縁にある空力デバイス(写真6)はトロロッソの水平フィンと同様で、前縁スラットと同様の役割を担っているものと推察できる。すなわち、隙間から圧力の高い空気を抜き、サイドポンツーン上面あるいは側面に導く役割だ。この空力デバイスはコの字形になっており、フロアまで伸びずに途中で終わっているのが特徴だ(写真7)。

 フロア下に流す縦渦の制御に用いるバージボードは、ローンチ仕様の複葉タイプ(写真8)の他に、下辺に凝った処理を施した別バージョン(写真9)もテストしていた。バルセロナでは流行のTウイング(写真10)もテストしており、2年目のシーズンに向けて「ぬかりなし」といった印象である。