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【F1新車分析】レッドブルRB13:メルセデスとは対極。今年のマシンはシンプルに徹した作り

2017年03月18日 14:41  AUTOSPORT web

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レッドブルRB13
技術ウォッチャーの世良耕太氏が、2017年のF1新車、レッドブルRB13の気になるポイントを解説。マシンにはシンプルながらも様々な工夫が施されている。開幕戦にアップデートが投入される可能性も。 

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 メルセデスAMG F1 W08 EQパワー+のように凝った空力処理を見せつけられると、「きっと速いに違いない」と思ってしまう。ディテールが凝っていれば凝っているほど、空力開発に時間を費やしている証拠だし、それなりの効果の積み重ねで現状に落ち着いているのだと短絡的に想像しがちだ。

 凝ったディテールに惑わされがちだが、シンプルで速ければ、それに越したことはない。レッドブルRB13はメルセデスとは対極にあるような気がする。実は隠し球を持っていて開幕戦にいきなり投入してくるのかもしれないが、バルセロナで行われた合同テストでの姿を見る限り、シンプルであることに徹している。バージボードは17年の新規定に合わせて大型になっているが、ポッドウイングとの連携は16年までの延長線上だ(写真:1)。

 空力デバイスを増やせば増やしただけ、角の数を増やせば増やしただけドラッグ(空気抵抗)は増える。パワーが有り余っているなら、多少ドラッグが増えても渦を積極的に使ってダウンフォースを増やすやり方も成立するだろう。だが、レッドブルは信条として、シンプルであることにこだわっているように見える。


 圧巻は車両ミッドからリヤにかけての造形だ。サイドポンツーンの下側をえぐったり、上面をなだらかに傾斜させたりする手法が一般的だが、レッドブルはほぼ同一断面のまま(アンダーカットはあるが)、フロントからリヤにかけて収束させている(写真:2)。ボディを規定いっぱいまで張り出させず、スリムに成立させているのは、外側に大きく露出したフロアを見るとわかる(写真:3)。

 16年までのレッドブルはカウルの合わせ目で生じるわずかな段差を嫌い、インダクションポッド背後のトップ部とサイドポンツーン側を一体化した大型のカウルを採用していた。整備性なども考慮したのだろうか、RB13は分割式としている(写真:4)。


 ヘッドレストの後部、ちょうどヘルメットの両脇に位置するあたりは溝を掘ったような造形になっている(えぐっていない車両が多数ある)。この部分はRB12の処理を受け継いでおり、レッドブルの空気に対する気の使い方が表れている(写真:5)。

 大きな穴が開いたノーズ先端の突起については、裏側の処理を確認してから考察することにしたい(写真:6)。いずれにしても、ドライバー冷却だけが目的ではないだろう。背後で排出される構造になっているとすると、先端突起部が流れの邪魔にならず、ウイングステー間をスムーズに空気が流れるようになる。という憶測をしておくに留めておく。