技術ウォッチャーの世良耕太氏が、2017年のF1新車、ルノーR.S.17の気になるポイントを解説。最新のスタイルを取り入れたルノーの本気度は?
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2016年のルノーは、土壇場になってワークスチームとしての態勢を再構築したため、15年型マシンを手直しして16年シーズンに臨んだのが実情だった。ワークスチームとして初めて本腰を入れて開発したのが、17年のR.S.17である。
16年型R.S.16のフロントサスペンションは下反角が大きくついた、やや時代後れのスタイルだった。R.S.17はサスペンションの機能を考えた場合は健全な、ほぼ水平なレイアウトになっている(写真:1)。単独で露出していたステアリングタイロッドは、アッパーアームと前後平行の配置になった。
R.S.16はインダクションポッドの両サイドに縦長長円形の独立したダクトを抱え、ヘルメットの背後に円形の小さな開口部を備えるユニークな設計だった。
R.S.17はすべての開口部を大型のインダクションポッドに集約。開口部を4つのエリアにわけている(写真:2)。フロントサスペンションといいインダクションポッドといい、最新のスタイルに整理された格好だ。
見どころはサイドポンツーン前端下側の処理だ。例に漏れずアンダーカットは大きいが、その下に特徴がある。三次元形状のパーツを取り付けることで、フロアがめくれ上がったような状態をつくり出しているように見える(写真:3)。フロア下にふんだんに空気を取り込む意図だろう。
その前方には、湾曲したバージボードが並んでおり(4)、下部には水平の板が設けられている(5)。バージボードはフロントタイヤが引き起こす乱流を制御するデバイスではなく、フロントウイングやその後方にあるターニングベーンで生成した縦渦を受けて制御し、フロアの下にもぐり込ませるためのデバイスだ。
いかにフロアの下にエネルギーの強い流れを導くかを検討した際、フロア前端をめくり上がらせる方が効果的との判断に至ったのだろう。
サイドポンツーンの脇に立てた折れ曲がったパネル(6)も特徴的なら、それをサイドポンツーンの角で支えるステーの形状も特徴的(7)で、空力的に何やら意味ありげだ。
R.S.16は参戦マシンの中で唯一、1本出しのウェイストゲート専用テールパイプを採用していたが、R.S.17はオーソドックスな2本出しとした(8)。これは、上流にあるウェイストゲートが1基から2基になったのに伴う措置だろう。
1基の方が軽量化のポテンシャルはあるが、排気の集合のさせ方や逃がし方が難しくなる。重量やパワーユニットの性能を総合的に検討した結果、2本に落ち着いたということだろうか。