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音楽シーンで“振付師”の存在感が高まっている理由 アーティストとの深い関係性から探る

2017年03月17日 13:02  リアルサウンド

リアルサウンド

音楽シーンで“振付師”の存在感が高まっている理由は?

 最近の『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)を観ていて気になった小さな“変化”がある。それは例えば歌って踊るアーティストが楽曲について語る際に、必ずと言っていいほど振付のポイントや振付師の名前に触れるようになったことだ。


(関連:振付稼業air:man、夏まゆみ、竹中夏海……人気振付師の特徴を書籍から分析


 2月10日の『ミュージックステーション 2時間スペシャル』(テレビ朝日系)を例に取ると、Perfumeの「TOKYO GIRL」振付に関するメンバーの解説はもちろん、振付師のMIKIKOの近年の仕事や一言コメントを紹介。NEWSであれば最新シングル「EMMA」での、振付稼業air:manによるジャケットを女性に見立てたNEWS流“ジャケットプレイ”について説明。AKB48はTAKAHIRO(上野隆博、欅坂46の楽曲の振付のほとんどを手がけるダンサー&振付師)が手掛けた小嶋陽菜センターの「シュートサイン」の振付について言及。そしてトリの星野源は、Perfumeのダンスが大好きだったことからMIKIKOに振付を依頼するようになったと語っていた。


 もちろんそれぞれ有名な振付師の仕事だからということもあるが、これまでは振付師といえば一般的には裏方であり、その名前も多くの場合、ファン向けに語られてきたのが事実。この変化についてはMIKIKOが手掛けたリオ五輪閉会式の演出や“恋ダンス”といった功績の影響が大きいだろうが、『関ジャム 完全燃SHOW』(テレビ朝日系)の振付師企画(これまでに振付稼業 air:man、TAKAHIRO、FISHBOY(RADIO FISH)、三浦大知、WARNER(AKB48や乃木坂46を担当)、MAIKO(きゃりーぱみゅぱみゅを担当)が登場)で人気ダンサー&振付師たちが振付の裏側を語った一連の企画も功を奏しているようだ。


 いわば人気振付師ブームともいえる現象が起きているわけなのだが、このブームを起こすには条件がある。それは現在ヒット作品を生み出している振付師&アーティストの関係の深さだ。


 MIKIKOはPerfumeやBABYMETALらの印象的な振付を手がけ世間にインパクトを与えたが、例えばMIKIKOとPerfumeとの出会いは、MIKIKOがアクターズスクール広島で講師を務めていた1999年頃にさかのぼり、実に15年以上の付き合いになる。BABYMETALに関しても、やはり母体であるさくら学院や、さらに中元すず香がSUZUKA名義で在籍していた可憐Girl’s時代から振付を手掛けてきているのだ。


 星野源の場合は彼自身がMIKIKO作品のファンであり、2015年リリースの「SUN」から振付を依頼。“日本人の体格に合わせたダンス”をテーマにしているMIKIKOも星野が提唱する「イエロー・ミュージック」(日本のエッセンスを取り入れたダンス・ミュージック)の考え方に共感しており、“恋ダンス”の振付を考える際には星野からドラマや歌詞の世界観、リズムの構成までを徹底的に聞いて参考にしたという。(参考:http://www.j-wave.co.jp/original/tokyounited/archives/the-hidden-story/2016/12/16-105052.html)


 そして振付稼業air:manとNEWSでいえば、air:manは「Happy Birthday」(2008年)や「チャンカパーナ」(2012年)といったグループを代表するヒット曲の数々やコンサートツアーの振付までを担当。手越祐也が1月25日放送の『news every.』(日本テレビ系)で「NEWSっていう体があるとしたら、(air:manは)その中の一部」とまで言い切ったほどの存在だ。


 先ほど挙げた中では欅坂46の振付を手掛けてきたTAKAHIROとAKB48は初コラボとなるが、AKB48グループと乃木坂46、欅坂46がタッグを組んだ新ユニット“坂道AKB”の「誰のことを一番 愛してる?」(AKB48『シュートサイン』のType-E盤に収録)でもTAKAHIROが振付を担当しており、今後の動向が気になるところだ。


 振付師が、メンバーの誰がどんなシーンで輝くのかを把握しつつ、ダンスを通して何を表現したいのかをメンバーやスタッフ、時には楽曲担当者とも一丸となって考えるからこそ、化学反応を起こせる振付が生まれる。MIKIKOは「ダンスの大事なところは、身体の動きを揃えるだけでなく、心を揃えること」(参考:https://mdpr.jp/news/detail/1649616)とその哲学を語っている。印象深い振付の裏には、一朝一夕では築けないチームとしての深い関係性が隠されているのだ。(古知屋ジュン)