日本の台所、築地市場が揺れている。豊洲移転の話ではない。労働問題の話である。
昨年12月に東京労働局・中央労働基準監督署が実施した調査で、深夜手当の未払いや健康診断の未実施などが明らかになったのだ。
「深夜労働」という認識が乏しいことが原因か
調査が行われたのは昨年7月から8月。労働条件に関するトラブルや労働災害の予防を目的に、築地市場の495事業場で行い、164事業場から回答があったという。
労働安全衛生法では、常態として深夜労働(原則として22 時から翌 5 時まで)に従事する労働者に対し、6 か月以内ごとに 1 回の健康診断を実施するよう定めている。本調査では37か所、実に30%以上で健康診断が実施されていなかった。
さらに8か所の事業場では、深夜労働の際に支払われるべき深夜手当が支払われていないことも明るみになった。労働基準法では深夜に労働させる場合、1時間当たりの賃金25%以上の割り増し賃金の支払いが義務付けられている。
調査を行った東京労働局は
「所定労働時間が3時~12時といったような早朝から勤務する労働者について『深夜労働を行わせている』という意識が低いことが原因の1つにあると思われます」
と分析する。市場は朝が早いことが当たり前になっているため、経営者も労働者も、特別な労働時間であると意識していない可能性がある。
36協定未届けや労働条件通知書の未交付の事業場も
さらに、雇用時の労働条件を書面で交付していない事業場が約10%、時間外・休日労働をしている事業場のうち、36協定を届け出ていないケースも約20%あると判明。豊洲移転ばかりが注目される今日この頃だが、こうしたブラックな労働環境も問題視されるべきだろう。
今回の調査の回答率は33.13%と半分にも満たない。築地にあるすべての事業場を洗いざらい調査すれば、こうした違反件数は更に増加すると見込まれる。
中央労働基準監督署は
「今後、労務管理の基本事項について、より一層の周知と必要に応じた監督指導を行います」
と、監督業務を徹底する意気込みを見せている。