2017年03月17日 09:13 弁護士ドットコム
単なる「援助交際」なのか、それとも「恋人っぽさ」を演じる仕事なのか。「パパ活」(パパ活動)について、みなさんはどのようなイメージをしていますか。3月18日午前0時から放送の「Wの悲喜劇」(Abema TV)では、実際に「パパ活」をしている女性たち4人が赤裸々に語ります。
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ちなみに、「パパ」とは「お父さん」のことではありません。出演したライターの吉田潮さんは、収録まで「妊活とか、イクメンとか、その類の育児用語かと思っていた」と話すように、話題となっても定義はあいまいなのが現状です。
パパ活をする人によっても、定義(活動方針)は異なります。番組に出演した「パパ活」女子たちも2つに割れました。一方が「身体の関係は絶対に持たない。ご飯を食べたりするだけです」と言えば、別の2人は率直に「金額次第かな」とも。ちなみに、ご飯を食べるだけで、最高で25万円もらったことのある女子大生も。
モラルの面はさておき、法的な問題ってないのでしょうか? 収録後、弁護士ドットコム社内で、田上嘉一弁護士に疑問をぶつけてみることにしました。
答える人:田上嘉一弁護士(「弁護士ドットコム」ゼネラルマネージャー)
聞く人:山口 紗貴子(「弁護士ドットコムニュース」副編集長、今回の番組に出演)
ーー田上さん、「パパ活」って聞いたことはありますか?
いや、ないですね。
ーー若い女性が、男性とご飯を食べたりして、お金をもらうことらしいです
それって、援助交際とどう違うんだって気もします。
ーー「ご飯だけ」という関係もあるそうです
そうなんですかね。それは建前でしょう。
ーーかもしれないですが、少なくとも、ご本人たちは「身体の関係はない」と
それで、「パパ」は何をするんですか?
ーー女性と会う際の飲食費や交通費を負担するほか、1万円以上のお小遣いを渡すようです。あとは、女性に高額なプレゼントをすることもあるようです。
まあ、身体の関係がある「援助交際」であろうと、なかろうと、「パパ活」には法的な問題がありそうですよ。というか、そういう話が聞きたそうですね。
ーーその通りです。
では、まず論点を整理しましょう。
(1)売春は違法なのか
(2)「パパ活」は売春なのか
(3)肉体関係がなくても法的な問題があるのか
この3点について、検討していきたいと思います。
ーーでは、順に聞かせてください。
結論からいえば、売春は違法です。買ってもダメ、売ってもダメ、です。
「売春防止法」は、売春の定義を「対償を受け、又は受ける約束で、不特定の相手方と性交することをいう」(第2条)と定めています。また、そのような売春行為をすることを「何人も、売春をし、又はその相手方となつてはならない」(第3条)と明確に禁じています。
ただ、刑事罰の対象になるのは、「勧誘する人」「周旋(あっせん)する人」です(第6条)。わかりやすく言えば、経営者や客引きは刑事罰の対象となりますが、客や売春する人は刑事罰の対象外です。
ーーなのに、どうして街中では、風俗店が堂々と営業しているのでしょうか
よく条文を見て欲しいんですが、売春の定義(第2条)は「性交」することです。詳細は述べませんが、「性交」と「性交類似行為」とは違うことは想像できると思います。「性交類似行為」だけを行う「風俗店」は、行政への届け出こそ必要ですが、違法ではないんです。
ーーでは、「パパ活」でも「肉体関係がある=売春=違法」ということになりますよね
いえ、言い切ることはできませんよ。パパ活で肉体関係を持っていた女性たちは、自分たちのやっていることをどう言っていました?
ーー単なる援助交際とは違うのだと言っていましたね。「知り合って、食事をして、それから場合によっては・・・」というものだと。
その場合でも、山口さんは、売春だと考えますか?
ーーそうだと思います。肉体関係の対価として、金銭をもらっているわけなので
でも、「女性と肉体関係を持ちたい」と考えた男性が食事をご馳走したり、プレゼントを贈る。そうして関係を深めながら、肉体関係に至ることって、普通のカップルでもしていることではないですか。その場合、売春とは言いませんよね。
ーーまあ、確かにそうです。
パパ活だって、同じことになりませんか。
ーー「日本では売春行為は違法だが、パパ活は売春行為でない以上、違法行為とは言えない」ということでしょうか
実際には、線引きが難しいケースもあるのかもしれませんが、全てのケースが「売春であり、違法である」とは言い切れないということですね。
ただ、パパ活をしている女性が、18歳未満であれば、話は別です。「児童ポルノ法」(児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律)によって、厳しく罰せられることになります。
また、児童買春は「性交」だけでなく、性交類似行為を含む「性交等」が対象となり(第2条)、「5年以下の懲役又は300万円以下の罰金」となります(第4条)
ーーパパに妻子がいる場合には、「浮気」という点からも問題がありそうです
そうですね。法律用語で言えば「不貞行為」と「不法行為」の問題に発展する可能性があります。
まず1つ目の「不貞行為」。これは離婚理由となる、肉体関係のある浮気のことです。相手が誰であろうと、異性と肉体関係を持ったら「不貞行為」があったとして、離婚理由として認められます。
また、妻は夫だけでなく、不貞行為の相手の女性にも「不法行為」にもとづく損害賠償を請求することもできますので(いわゆる「慰謝料請求」のことです)、パパ活をしている女性も賠償責任を負います。
ーー「肉体関係がない」場合には、問題はないのでしょうか
いえ、そうではありません。肉体関係がなくても「不法行為」になり得ます。肉体関係のない関係であっても、妻の権利が侵害されといえる場合があるからです。
ーー不法行為と認められれば、肉体関係がなくても、損害賠償を請求される可能性があると
そうです。裁判例もあります。肉体関係は認められなかったものの、夫と食事やお茶、映画を見る関係だった女性に慰謝料を請求した裁判で、裁判所は、女性が「夫婦生活の平穏を害し原告に精神的苦痛を与えたことは明白」と認定しました(平成15年、東京簡易裁判所)。
といっても、認められた慰謝料の金額は10万円です。
ーー少ないですね。
この夫婦の場合、離婚もしていませんから。
ーー「パパ」が独身で、女性も成人であれば、法的な問題はないのでしょうか
法律上は「ない」となります。全てを法律でしばることはできないですからね。
ーーありがとうございました。
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(「Wの悲喜劇」は、弁護士ドットコムニュース編集部も企画などに参加しています)
【番組情報】
番組名:「Wの悲喜劇 ~日本一過激なオンナのニュース~」
放送日時:3月18日(土)午前0時~ 1時
AbemaNewsチャンネル(インターネット放送「Abema TV」)
放送URL:
https://abema.tv/channels/abema-news/slots/95t5RUnxfvNmvw
(弁護士ドットコムニュース)