人材採用支援を行うヒューマン・コメディ社は3月14日、「非行歴・犯罪歴のある人」を従業員として雇用するという思いのある企業を正式に募集すると発表した。
同社は2015年に設立。非行や犯罪歴のある人を対象にした人材育成事業などを行っている。企業サイトによると、近年、犯罪の認知件数は減少し続けているものの、全体の検挙人員に対して「再犯者」の割合が上昇しており、問題視されているという。
「好奇心が高く、思ったことを即、行動に移せる実行力と根性があります」
その上で、無職者の再犯率は有職者の約5倍にものぼるという結果を挙げ、
「お金も身寄りもない彼らが、自立の必要性があるにもかかわらず、社会的差別によって定職に就けず、(再び)犯罪に手を染めてしまう人も少なくない」
と記している。
同社は、昨年10月から非行や犯罪歴のある人の雇用を希望する会社の採用活動支援を行ってきた。まず企業と面談を行ってニーズを把握し、その上で求職者を選定。過去の事件を含む求職者の背景を理解するため時間をかけて面談を行い、資質を見極めた上で企業との面接を調整する、というサービスだ。
犯罪歴のある求職者と企業を繋ぐことで再犯の防止にもつながるだけでなく、企業の採用広告費や工数の削減にもなる、としている。また、同社は非行・犯罪歴のある人たちの強みを以下のように説明している。
・エネルギー…好奇心が高く、思ったことを即、行動に移せる実行力と根性があります。
・覚悟…「絶対にやり直す」という覚悟。人一倍、感謝と恩義を感じる心があります。
・経験値…経験値が圧倒的に高く、共感力と観察力があり、面倒見のいい方が多いです。
代表取締役の三宅晶子さん自身、中学時代から非行を繰り返し、高校を中退している。しかし父親からデカルトの『方法序説』をもらったのがきっかけで、23歳のときに早稲田大学に入学。大手企業で10年勤めて退社したあと、ある施設で自身と似た境遇の女の子と出会う。この出会いからこの会社を設立することになったという。現在、11の企業と協力し、現在3人が就労・内定している。
協力企業「むしろ、そういう人のほうが根性ある」
専務取締役の金井駿さんによると、協力企業は、建設・不動産・飲食などが多いという。
「かつてヤンチャをしていた経営者もいて『むしろ、そういう人のほうが根性ある』と手を挙げてくれました」
窃盗で起訴猶予処分を受けた男性(41)は、身元引受人もお金もなく、すぐにでも働く場所が必要だった。更生保護施設から連絡を受け、ある建設業に紹介。2日後には働き始めたという。経験者ということもあり、企業からは「即戦力だった」と評価を受け、試用期間2か月のところ1か月で本採用となったという。
また、少年院を仮退院中の男性(21)は不動産投資会社に就職が決まった。本人の地頭もよく、これから変わろうという覚悟が見えたと評価されての採用だった。4月から営業として新たなスタートを切る。
昨年9月に刑務所を出所した男性(42)は、現在同社で働いている。金井さんは「入社から3か月、貴重な戦力であり、仲間です」と話す。
同社は今後、事業を拡大するに当たって、IT業界などの成長市場の企業や大手企業にもアプローチをかけていく予定だという。
非行・犯罪歴のある人を採用するのは企業としては不安に思うかもしれない。「お前はダメな人間だ」と言われ続けてきた経験から、自己受容感が低い、嘘をつく、人間関係が苦手、頭に血が上りやすいなどの傾向もみられる。仕事をする中での学びと成長が必要不可欠だ。しかし三宅代表は、同社のサイトに掲載されているプレゼン動画の中で、
「絶対に、御社の役に立つことをします。彼らには『絶対にやり直す』という覚悟がありますから」
と語っていた。