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インディカー開幕戦:劣勢だったストリートコースでみせたホンダ躍進の理由

2017年03月16日 07:10  AUTOSPORT web

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開幕戦セント・ピーターズバーグを最後尾から制したセバスチャン・ブルデー(デイル・コイン)
インディカー・シリーズの2017年シーズンが開幕した。今年も最初のレースはフロリダ州セント・ピーターズバーグのストリートコースで開催された。1.8マイルのコースを110周して争われたレースは、セバスチャン・ブルデーが優勝。デイル・コイン・レーシング(DCR)への復帰初戦で勝利を掴んだ。しかも、それは最後尾グリッドからのスタートで達成された。インディカー史上3番目に後方のグリッドからの優勝である。

 開幕戦へのエントリーは21台で、その内訳はホンダ13台、シボレー8台だ。4台体制のチップ・ガナッシ・レーシング・チームズがホンダに移籍した。対するシボレーはKVSHレーシングがシリーズから撤退して1台減少。AJ・フォイト・レーシングを受け入れたが彼らは2カーで、ガナッシの離脱でできた穴は大きく、ユーザーチーム数も3つに減ってしまった。


■ストリートコースで先勝
 DCRはホンダユーザー。2017年に幸先の良いキックオフができたのはホンダの方だった。2016年、彼らが挙げた勝利は高速オーバルでの2回だけ。ストリートレースは苦戦続きで、トップ3独占を一度達成したものの、ほかは2位1回、3位3回という成績だった。ストリートでの最後に勝ったのは2015年6月のデトロイト戦レース1。実に約1年9カ月ぶりの勝利となった。

 最後尾スタートでもブルデーが勝てたのは、最初のスタート直後の多重クラッシュをうまく避けたことと、25周目に発生したトニー・カナーン(チップ・ガナッシ)とミカエル・アレシン(シュミット・ピーターソン)のアクシデントで出された2回目のフルコースコーション直前に行ったピットストップが絶妙のタイミングだったからだ。

 まだ給油とタイヤ交換を行っていなかったトップグループがピットロードに向うと、一気に2番手に浮上。そして、36周目のリスタート後には、トップを走るディフェンディングチャンピオンのシモン・パジェノー(チーム・ペンスキー)をターン1でパス。そこからはレースを完全に掌握した。2番手以下との差をどんどん広げて行ったブルデーは、燃費をセーブしながらも十分な間隔を持ってゴールを目指し、チェッカーフラッグを受けたのだ。

 2位は14番手スタートだったパジェノー。彼もまた2回目のイエローの前にピットしていたことが好成績に繋がった。

 3位はスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ)。彼は予選2位で、最初のピットストップは2回目のイエローより後だった。しかし、レース終盤にウィル・パワー(チーム・ペンスキー)はシボレーエンジンに小さなトラブルが出てピットインを繰り返し、佐藤琢磨(アンドレッティ・オートスポート)は最後のピットストップで右フロントタイヤの交換に手間取って後退。ディクソンは2ポジション上げて表彰台に上った。

 ライアン・ハンター-レイ(アンドレッティ・オートスポート)が4位で、琢磨が5位。ホンダは1、3、4、5位とトップ5に4人を並べ、トップ10には7人もが食い込んでいた。今年のシボレーは8台しかおらず、層が薄いのは確かだが、ホンダユーザーたちの力強い戦いぶりが印象的なレースとなった。

■エアロキットの熟成が勝利を導く
 ウイナーとなったブルデーは、「ホンダのサポートの良さにはとても満足している。エンジン、エアロの開発でとても良い仕事をしてくれていると思う。昨年の僕はシボレーユーザーだったので、ホンダエンジンがどういう状況にあったのかは知らない」

「しかし、今年のホンダは、今回のようなハイダウンフォース仕様のエアロキットで走るコースで強さを見せ続けることとなりそうだ。そしてもちろん、スーパースピードウェイにおいては去年と同様に速いだろう」

「ただ、フェニックスのようなショートオーバルだけは、エアロキットの空気抵抗が少々大きいために違ったシナリオになりそうだ。すべてのコースで優位に立つことなどできないものさ。それでも、今年は悪い日より良い日の方が多いことになりそうな印象を受けている」と語った。


 昨年のホンダはエアロキットのパフォーマンス不足に悩まされていたが、それは改良直後でキットの持つ実力をフルに活かし切ることができていなかったからだ。

 2017年シーズンはエアロキットの開発が凍結されたが、シーズンオフの間にホンダはエアロキットの実力をアップさせるべく研究、実験を重ね、細かなパーツ類の組み合わせによってより高い性能を引き出すことができるようになったと考えられる。

 また、エンジンでもホンダは対シボレーでアドバンテージを持っている様子だ。

「パワーレンジが広くてドライバビリティに優れている」とブルデーは高評価を下し、3位でゴールしたディクソンも、「ホンダのエンジンは非常に洗練されている」と賞賛。


 シボレーユーザーで今回唯一表彰台に上ったパジェノーは、ブルデーにパスされた後に追い回すことができなかった理由として燃費セーブをピットから指示されたからと説明し、「燃費はホンダエンジンの方が優れているのかもしれない」との印象を語っていた。

 まだ開幕戦を終えたばかりで戦力判定は時期尚早だが、次戦ロングビーチでもホンダとシボレーのエンジン及びエアロ対決に注目したい。