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「性の喜びおじさん」死亡情報、警視庁「まだ名前公表できない」…法的問題を検証

2017年03月14日 14:13  弁護士ドットコム

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東急田園都市線で3月11日、乗客同士のトラブルが発生し、50代の男性1人をほかの乗客3人が取り押さえたところ、男性が意識を失い、その後死亡する出来事があった。警視庁は3月14日、弁護士ドットコムニュースの取材に対し、「まだ名前は公表できない。公表するかどうかも決まっていない」としているが、ニュース番組の映像や直前の目撃情報から、亡くなったのはネット上の有名人「性の喜び(悦び)おじさん」ではないかと噂されている。


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警視庁などによると、死亡した男性は車内で大声を出し、それを注意した乗客に殴る蹴るの暴行を加えたという。別の乗客男性3人が、男性を桜新町駅のホームにおろしたが、さらに暴れたため、うつ伏せの状態で取り押さえた。その後、男性は急に意識不明に陥り、搬送先の病院で死亡が確認された。


一般論として、相手が死んでしまった場合、取り押さえた側に責任が発生することはあるのだろうか。冨本和男弁護士に聞いた。


●取り押さえ方や死因によるが…

「結論から言うと、傷害致死で刑事罰がくだる可能性はゼロではありません。傷害致死は、ナイフで刺すといった傷害行為だけでなく、殴ったり押さえつけたりして死亡させてしまった場合にも成立します。


今回、男性をうつ伏せの状態で取り押さえたということですが、そうした行為によって人を死亡させてしまう危険はありますし、現に死亡させてしまったわけですから、傷害致死が成立する可能性があります。


また、今回、乗客の男性3人が暴れていた男性を取り押さえていたということです。それぞれの力加減や押さえ方は異なっていたとしても、共同して男性を取り押さえることについて3人とも了解していたのであれば、お互いの行為が危険であることはわかるわけですから、3人とも傷害致死について責任を負う可能性があります。


もっとも、3人が男性を取り押さえたのは、男性が大声をあげたことを注意され、乗客を殴ったからだとされています。もし、男性がさらに周りの乗客に危害を加えるような状況であったのなら、正当防衛が成立する余地があります。


また、男性がさらに周りの乗客に危害を加えるような状況でなかったとしても、その場から立ち去ろうとしていたのであれば、逃げないように取り押さえる行為は私人による現行犯逮捕として正当化される可能性もあります。


したがって、警察発表が事実であれば、状況からして逮捕されたり刑事罰がくだされたりすることはあまりないのではと思います。ただし、取り押さえ方や死因によっては、判断が変わる可能性もあります」


警視庁は、現在男性の死因などを捜査しているという。


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
冨本 和男(とみもと・かずお)弁護士
債務整理・離婚等の一般民事事件の他刑事事件(示談交渉、保釈請求、公判弁護)も多く扱っている。
事務所名:法律事務所あすか
事務所URL:http://www.aska-law.jp