時間外労働の上限について、安倍晋三首相は3月13日、繁忙期でも「月100時間未満」とするよう労使双方に要請した。毎日新聞などが報じた。過労死ラインの80時間を超える「100時間未満」という規制には、野党や運動団体から反発が相次いでいる。
「『100時間未満』ではこれまでと変わらないと思う」
これまで時間外労働の上限規制をめぐっては、労使での対立が続いていた。経団連の榊原定征会長が「100時間以下」と主張する一方、連合の神津里季生会長は「100時間未満」を譲らなかった。
両者は結局「100時間を基準」という表現で合意したが、安倍晋三首相は「100時間未満」とするよう要請。連合の意向が反映された形だ。経団連の榊原会長も「首相の意向を重く受け止める」と発言し、「100時間未満」を容認する意向だ。これによって、繁忙期で最大月100時間、2か月~6か月の平均が80時間以内に規制されることになる。
これに対し、各方面から反発の声が上がっている。今回の「100時間」問題で経団連前での抗議活動を主催した若者グループ、エキタスのメンバーの栗原耕平さんは「『100時間未満』ではこれまでと変わらないと思う」と語る。
「過去には、100時間以下の残業時間でも過労死として認定されたことがあります。それなのに100時間もの残業を認めるということは過労死を認めるということです。とんでもないことだと思います」
その上で、「厚生労働省が月45時間という上限を定めています。この水準の規制は必要でしょう。インターバル規制も導入するべきだと思います」と語っていた。エキタスでは、3月16日にも経団連会館前で抗議行動を行う予定だ。
共産党「建設や運輸など適用除外の業種もなくしていくべき」
日本共産党委員長の志位和夫氏も「過労死ラインの『月80時間』をこえる残業容認のどこが働き方改革』か」とツイッターで批判。「『週15時間、月45時間』の大臣告示の法定化を強く求める!」と投稿した。
共産党・労働局の担当者も、キャリコネニュースの取材に対し「100時間未満」という規制水準は「過労死を容認するもので論外です」と批判した。
「厚生労働省が定めている、週15時間、月45時間、年間360時間という基準があります。この基準を労働基準法に明記する必要があると考えています。現在は、特別条項付きの36協定を結べば、残業時間が青天井に増えてしまいますが、こうした例外も認めてはいけません。また現在は建設業などが適用除外となっていますが、適用除外の業種はなくしていくべきだと思います」
共産党は、民進・自由・社民と共同で「長時間労働規制法案」を提出しており、引き続き法制化を目指していくという。
大手広告代理店に勤める娘を過労自殺で亡くした高橋幸美さんは共同通信の記事で「特例が認められていいはずがなく、強く反対する」とコメントしていたが、社会民主党参議院議員の福島みずほ氏もこのコメント対し、ツイッターで「その通り」と賛同し、「月100時間未満」を批判した。