F1のエンジンマニュファクチャラーに対し、エンジンオイルを燃料として「燃やす」ことは認められないと、FIAがあらためて念を押した。これについてはレッドブルから、メルセデスが予選時にそうした手法を用いていたのではないかとの疑義が出されていた。
レースでのパワーアドバンテージはそれほどでもないにもかかわらず、メルセデスはなぜ予選で少なからぬエクストラパワーを引き出せるのかという疑問は、昨年から関心の的のひとつになっていた。
ライバルたちが示唆したひとつの「アイデア」は、メルセデスがエンジンオイルにパワーアップあるいはアンチノックのための添加剤を混ぜ、それを巧妙なやり方で燃焼させることで、Q2やQ3で必要とされた時にパフォーマンスの上乗せを得ていたのではないかというものだった。
現在のF1エンジンでは、クランクケースのブリーザーをクローズド式にしなければならず、ブローバイガスはエンジンの吸気システムに戻される。つまり、ブローバイガスの大半は吸気チャンバーに吸い込まれることになり、オイルを燃料として使うことは構造的には十分に可能だ。
しかし、そのような手法は、レギュレーション違反となる。マニュファクチャラーがエンジンに使用できる燃料は、その化学的成分が厳密に決められているからだ。
メルセデスは、そうした手法を用いてはいないし、つねにレギュレーションは守ってきたと主張しているが、それでも疑いを完全に払拭するには至っていない。
この件については、シーズンオフの間に開かれた技術責任者の会合で議題となり、特にレッドブルが状況を明確にすべきだと強く訴えたという。これに対して、メルセデスは使えるオイルの量を5kgまでに制限することを自ら提案したが、他のチームには「オイルを燃焼させても、それだけあれば足りるのだろう」と邪推されただけだった。
その後、この問題について解決が見られなかったことから、レッドブルがFIAに対し、何が許されて何が許されないのかを明確化するよう書簡を送っていた。そして、FIAの技術部門からの返信には、どのようなかたちであれ、エンジンオイルを燃料として燃焼させることはレギュレーション違反と見なされると明言されていた。
ただしFIAは、エンジンが使われる時に、ある程度のオイルが「消費」されるのは避けられないことも認めている。
2014年にターボ・ハイブリッドの規定が導入されて以来、燃料流量と総量の両方の制限のなかで、いかにしてより大きなパワーを引き出すが、大きな関心事になってきた。
2015年には、一部のチームが燃料流量計の下流に、あとで必要な時に使えるように燃料をためておいたのではないかという疑惑が浮上している。また、燃焼させることで出力が向上するような添加剤を、マニュファクチャラーがオイルに加えていないかについて、FIAが調査を行ったこともある。
同年のカナダGPでは、FIAが一部のクルマを対象に、燃料に関する不正が行われていないか、細部にまで踏み込んだ検査を実施した。