フロリダ州セント・ピーターズバーグで開催されたインディカー・シリーズ開幕戦。予選でクラッシュを喫し最下位スタートのセバスチャン・ブルデー(デイル・コイン)が速さを見せ、地元セント・ピートでの初勝利を飾った。予選5番手から挑んだ佐藤琢磨(アンドレッティ・オートスポート)も序盤から上位を争うも、最後のピットインでタイムをロスし、5位で初戦を終えた。
昨年のセント・ピーターズバーグの全長1.8マイルのストリート・コースではチーム・ペンスキーが予選で1-2-3-4を達成。レースも1-2フィニッシュで制した。そのままシボレー勢はストリートコースとロードコースのすべてでポールポジションを獲得し、レースでも勝利を飾った。エアロキット時代の2シーズン目はシボレーが14勝2敗という圧倒的な成績を収めたのだった。
しかし、空力ルール凍結で迎えた2017年シーズン開幕戦では、ホンダ勢がプラクティスから優勢を保っていた。予選ではシボレー軍団のひとりであるウィル・パワー(チーム・ペンスキー)が3年連続、8年間で7回目のポールポジションという驚異的なパフォーマンスを見せたが、予選2番手はシボレーからホンダに戻って来たスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ)が獲得し、予選3番手もホンダユーザーのジェームズ・ヒンチクリフ(シュミット・ピーターソン)だった。
ディンフェンディング・チャンピオンのシモン・パジェノー(チーム・ペンスキー)は予選Q1で敗退し、14番グリッドからのスタートとなった。
決勝日には雨の予報も出されていたが、幸いにも雨雲はセント・ピーターズバーグを訪れることなく、ドライコンディションでの110周が戦われた。
スタート直後にグラハム・レイホール(RLLR)とチャーリー・キンボール(チップ・ガナッシ)が接触し、これにカルロス・ムニョス(AJフォイト)が巻き込まれる多重アクシデントがあった。
25周目には、トニー・カナーン(チップ・ガナッシ)とミカエル・アレシン(シュミット・ピーターソン)が絡むアクシデントも発生。110周のレースでフルコースコーションが出されたのは、この2回だけだった。
そして、この2回目のイエローより前にピットストップを行っていたか、そうでなかったかが今日は大きな鍵を握っていた。最後尾の21番グリッドからのスタートだったブルデーは、ピットイン前に11番手までポジションを大きく上げる奮闘を見せていたが、イエローの間に上位陣がピットに向うと一気に2番手まで順位を上げた。彼の前には、もうパジェノーしかいなかった。
14番手スタートながら展開を味方につけてトップに躍り出たパジェノーは、シボレーエンジンの燃費がホンダに対して劣っているためか、ペースを上げることができなかった。
それを見てブルデーは37周目のターン1で後輩フレンチドライバーを難なくパス。そこから一気にリードを広げてみせた。
レースはそのまま終盤へ。ブルデーはピットの計算ミスで激しい燃費セーブを求められながらもそれをクリア。一時パジェノーの接近を許したが、燃費の心配がなくなると差を広げて逃げ切った。ゴールでのパジェノーとの差は10秒以上もあった。セント・ピーターズバーグはブルデーのアメリカでのホームタウン。彼にとってのキャリア36勝目は、地元コースで初優勝となった。
「自分のミスで予選を走れずに最後尾スタート。作戦をうまく使っても勝つチャンスはほとんどないと考えていた。オーバーテイクも難しいコースだからね。しかし、今日僕らは勝つことができた。感激で言葉もないぐらいだ。これがインディカー・シリーズの素晴らしいところ。出場チームすべてに勝つチャンスがある」とブルデーは喜んでいた。
ブルデーとデイル・コイン・レーシングの勝利は、ホンダの勝利でもある。ストリート/ロードコースでの勝利は2015年のソノマ(ライアン・ハンター-レイ)以来。今日のホンダは3、4、5位も獲得しトップ5に4台を食い込ませた。
パジェノーは2位でも満足顔で、「今日のブルデーは速過ぎた。こちらも最後は思い切りプッシュしたけれど、トラフィックを処理するのにタイヤを酷使してしまった。タイトルを獲得した去年もここは2位だったしね」と話していた。
3位はディクソン。4位と5位にはアンドレッティ・オートスポートのライアン・ハンター-レイと佐藤琢磨が入った。
琢磨は3位でゴールできるレースを戦っていたが、最後のピットストップで右フロントタイヤの交換に時間がかかり12秒ものロス。ディクソンの先行を許し、最終ラップにはチームメイトに逆転を許した。それでも、予選結果と同じ5位でゴール。チーム移籍をした最初のレースとしては悪くない結果を手にした。
「チームの見事な仕事によって5位という好結果を手にすることができました。金曜のプラクティス2回目にアクシデントがあって厳しい状況に置かれましたが、チームメイトたちが助けてくれ、エンジニアたちも力になってくれたことで、予選でも決勝でも持てる力をフルに発揮して戦うことができました」
「そうして得られた予選5位、決勝5位という結果を喜んでいます。苦しいレースを戦い抜き、アンドレッティ・オートスポートは4、5位でフィニッシュ。これはファンタスティックな結果だと思います。今回はアンドレッティ・オートスポートでの初めてのレースでしたから、5位でゴールできたことをうれしいと感じています」と琢磨は語った。
次戦は北米大陸を西に横断して行うカリフォルニア州でのロングビーチ・グランプリ。今回と同じくストリートコースでのレースで、決勝は4月9日だ。