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木村拓哉 × 浅野忠信が激しくぶつかった『A LIFE』第9話 最終回直前で波乱の展開に

2017年03月13日 06:03  リアルサウンド

リアルサウンド

(c)TBS

 木村拓哉主演ドラマ『A LIFE~愛しき人~』第9話、壇上深雪(竹内結子)の手術が刻一刻と近づくなか、互いの譲れない思いが激しくぶつかり合う様子が描かれた。


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 沖田一光(木村拓哉)と壇上壮大(浅野忠信)のどちらが深冬の手術を担当するのか、とうとう沖田と壮大の直接対決の火ぶたが切られた第8話のラストシーン。第9話では、現職大臣の手術の相談が舞い込んできた壮大が、壇上記念病院の名声をより高めるために、難しいオペを日本初となるアプローチで行い成功させる。


 これまで経営者としての側面が多く描かれてきため忘れがちだが、実は壮大も日本屈指の脳神経外科医なのだ。施術を見ていた沖田からも「見事だったよ。あのプレッシャーの中で脳外のオペをするなんて本当に信じられないよ」と賞賛の声を受け、満悦な笑みを見せる。自分勝手な行動を繰り返し、その度に無様で情けない姿も見せてきた壮大だが、ここでようやく汚名返上することができた。こうした壮大の姿が描かれたのは、これまでの『A LIFE』の中でも珍しいことではないか。そして、この成功をきっかけに自信をつけた壮大は、改めて深冬の手術を担当することを沖田に宣言する。


 しかし、多くの視聴者が予想していた通り、壮大の絶頂期はそう長くは続かない。深冬に「私のオペは沖田先生にお願いしたいです」と、沖田の目の前で言われてしまうのだ。医師としてだけでなく、パートナーとしてのプライドも深く傷つけられた壮大は、深冬に「なんでカズなんだ!」と憤慨、「失敗してもカズなら殺されてもいいからか?」と、感情をむき出しにする。その発言には沖田も「お前いい加減にしろよ!」と激昂。さらに悪いことは続き、羽村圭吾(及川光博)と榊原実梨(菜々緒)は、壇上記念病院を乗っ取るために極秘裏に進めていた計画のことを壇上虎之助(柄本明)に暴露する。虎之助の怒りを買った壮大は、副院長職からの解任、病院から立ち去れと命じられる。身から出た錆とはいえ、どこまでも落ち続ける壮大の姿には、怒りを通り超し、不憫に思った視聴者も少なくないはず。どんなに間違った行為を重ねても、どこか憎めない、悪人に見えない。壮大は本当にダメなやつだなっと思いながらも、妙に共感できてしまうような、絶妙なバランス感覚で演じられるのが浅野忠信のすごさだ。


 一方の沖田も第9話の中盤までは苛立つ様子が映し出されていた。壮大が大臣の手術の準備をするなか、他の病院では処置できないと言われた“狭心症”と“頚動脈狭窄症”を持つ患者のオペを、沖田が担当することに。第8話で壮大の宣言を受けた後、深冬の手術を担当できなくなるかもしれない焦りからか、周りのスタッフにまで感じの悪い態度をとってしまい、その姿を見かねた井川颯太(松山ケンイチ)や羽村に苦言を呈されてしまう。一度は医者としての信念を見失いかけた沖田だったが、井川の激励や父親である一心(田中泯)の教え、患者の息子の行動によって目を覚まし、無事に手術を成功させる。道を外れそうになった時に踏み止まらせてくれる仲間がいる。そして、彼らの言葉に耳を傾けられるのが、沖田と壮大の大きな違いだろう。


 第9話は最終回の直前ということもあり、ふたりの持つ人間性が改めて明示されていたのではないか。深冬への愛に目覚めたとはいえ、終始自分本位で周りのことを一切考えることができない壮大、愛想が良いとは言えないがスタッフや患者と真摯に向き合うことができる沖田。どちらのキャラクターも善人や悪人とはっきり分けることはできない。それぞれのキャラクターが人間臭く、行動が読めないからこそ、次の展開が気になってしまう。ここが『A LIFE』の巧みさだ。


 次回はいよいよ最終回。予告映像では、焦燥しきって絶望感に溢れる壮大と、いよいよ深冬の手術に沖田が臨むようなシーンが映し出されていた。果たして、沖田と壮大の因縁や深冬の手術の行方はどんな結末を迎えるのか……最終回を見逃すわけにはいかない。(泉夏音)