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ポーター・ロビンソン&マデオンが語る「シェルター」、そしてクリエイターとしての原点

2017年03月10日 18:13  リアルサウンド

リアルサウンド

ポーター・ロビンソン&マデオン

 ポーター・ロビンソン&マデオンが、2月21日、東京・Zepp DiverCityで一夜限りのライブ『シェルター・ライヴ・ツアー』を開催した。同公演は、互いがそれぞれの楽曲をマッシュアップして歌い、生楽器の演奏や最新の映像、照明技術を駆使した演出でパフォーマンス。約2000人のファンを沸かせた。今回、リアルサウンドでは、その来日を機にインタビュー。2月15日にリリースした日本限定アルバム『シェルター:コンプリート・エディション』から、「シェルター」でコラボすることになった経緯や互いの音楽観、影響を受けた日本の音楽、カルチャーについて語ってもらった。(編集部)


・「音源を交換したりアイディアをシェアした成果が反映された」(ポーター・ロビンソン)


ーーまず、2人がコラボをすることになったきっかけは?


マデオン:元々僕らが出会ったのは10年前で、プライベートでは仲良くしながらも、アーティストとしてはお互いに別々のキャリアを歩んでいました。で、そろそろコラボしてもいいタイミングかなと思ったんです。


ポーター・ロビンソン(以下、ポーター):ヒューゴ(マデオン)と僕はそもそもDaft Punkのファンが集まるインターネットの掲示板で出会ったんだけど、そこから始まった2人の10年に渡る友情をお祝いしたいなと思ったんですよね。あと、それぞれの前アルバム(『ワールズ』『アドヴェンチャー』)に関しても、製作時から音源を交換したりアイディアをシェアしたので、『シェルター:コンプリート・エディション』はその成果が反映された作品にもなったと思うんですよ。


ーーA-1 Picturesとタッグを組んだ「シェルター」のMVは、日本をはじめ、世界でバズを起こした素晴らしい作品でした。


ポーター:楽曲自体はヒューゴの自宅スタジオで一緒に書いたものなんです。で、ビデオは僕が日本を7、8回訪れて、A-1さんとともに作りあげることができました。アーティストとして曲を作ったらMVを作りたくなるし、曲に合ったMVを作りたいですし。今回は僕がディレクターに入ることでいいかたちで実現しました。


ーー共作した楽曲については、メロディやカットアップのポイントがポーターっぽい作り、ベースなどの低音周りの処理がマデオンっぽいなと感じました。


ポーター:その通りです。ヴァースとコーラスや主旋律をマデオンが、印象的なイントロのメロディ部分やカットアップを僕が主に担っていました。


マデオン:とはいえ、お互いにずっと話し合って作っていたし、ミキシングとプロダクションは2人でやったようなものなので、2人の作品という感覚ですね。


ーーアニメという表現方法は、日本だと当たり前になっていますが、2人の住んでいる国からすれば「異端なもの」でもありますよね。特にポーターはアニメが好きだということですが、アニメが持つどんな要素に心惹かれたのでしょう?


ポーター:今回のアニメーションMVは、アメリカで日本のコンテンツを配信する「Crunchyroll」が提案してくれたプロジェクトなんだ。アニメのストーリーは家族愛や親から子へ受けわたすものがテーマになっていて、曲の一部分をピックアップしたものなんだけど、それがしっかりと互いの世界観を引き立てていると思います。


・「日本の音楽は知れば知るほど面白い」(マデオン)


ーーこうやって2人の作品を1枚にまとめたことで、より互いの音に向き合ったと思います。照れ臭いかもしれませんが、改めてそれぞれの音楽性について、その特徴を分析してもらえますか?


マデオン:ポーターはインテンショナルなーーつまり、曲がどのようにすれば良くなるかを考えて、意図的な配置をするのが上手いんです。このメロディとコーラスをどう組み合わせたらいいかというのをじっくり分析して形にするのも彼の特徴で。


ポーター:元々互いのファンではあったけど、改めて共作してわかることは多かったですね。ヒューゴはリリックや歌を聴かせることの重要性を知っているクリエイターだし、それは僕にはない部分で。「シェルター」を作ったことで、これまで自分があまり意識していなかったリリックと歌の重要性を自覚するのと同時に、かなり勉強になりました。


マデオン:この『シェルター:コンプリート・エディション』に関しても、自分たちがそれぞれ自信のある楽曲を収録していますし、実際に昨日改めて2人で聴いてみて、それぞれのソロ作とは別物だなという結論になりました。アートワークも厳選して考えられたものなんですよ。


ーーマデオンさんは中田ヤスタカさんに影響を受けていて、ポーターは日本のゲームミュージックやアニソンに明るいわけですが、2人にとって日本の音楽がどう聴こえているのか知りたいです。


マデオン:お互い『Dance Dance Revolution』や任天堂のゲームミュージック、ジブリ映画のサウンドトラックに興味を持っていて、そこがクリエイターとしての原点にあることは間違いないです。日本の音楽は西洋のそれと全く異なる構成になっていて、そこが魅力的に感じるんです。コード進行も、最初は自分たちの聴いてきた音楽とかけ離れすぎて理解しがたいものだったんですけど、知れば知るほど面白いと思うようになっていきました。


ポーター:日本の音楽はすごくテクニカルで、「ジャズっぽい」というか……エクスペリメンタルな要素が多く混ざっているんです。でも、メロディはノスタルジックだったりセンチメンタルなものが多くて、魅力的に感じますね。あと、キュートだと思えるサウンドや構成もたくさんあって。各ジャンルの音楽はそれぞれスタイルがあるものですが、お互い日本の音楽が持つコード進行を学んできた身でもあるので、楽曲制作の時も日本っぽいメロディを弾いたりして、そこに西洋っぽい方法を用いて編曲することも少なくありませんし、自分たちの得意な作り方だと思っています。


ーー最後に、日本公演を含む『シェルター・ライヴ・ツアー』についても聞かせてください。


ポーター:今回のライブを通して、音楽のエモーショナルさを感じ取ってほしいし、楽しんでもらいたいです。でも、僕らのスタイルはレイヴみたいなものではないし、ただ騒いで楽しんでというものではなく、音楽が語りかける気持ちを受け止めてもらえるようなパフォーマンスがしたいし、そういう風に感じ取ってもらえれば嬉しいですね。
(取材・文=中村拓海)